『僕のaiko道』「どうしたって伝えられないから」 全曲感想その①(1曲目~3曲目)

1:ばいばーーい
 アルバムのトップを飾る曲。桜の木の下以降のアルバム毎の1曲目は私(及びジャンキー)に対する挑戦状の様だ。「あんた達本当についてこれるの?あたしはこんだけの覚悟があるんだよ」とでも問詰めてくる様な。
 またこの曲は、aikoの根底に流れているであろう「形あるものは壊れ別離し喪失するけどそんな中にも必ず一筋の光は射している」と言う、aikoの詩の世界観まんまな曲だとも思える。「ばいばーーい」「戻れない」「壊れそう」「巻き戻せない」「失った」「道は別れて離れてく」「恨みは人を変えてしまう」「反対の道」「捨てます」「知らない同士にいつかなる」「好きな味も変わる」「他人になる感じ」「忘れた」「時間が過ぎる」と続き、最後「少し前を向いてる」で締められるのはaikoならではではないだろうか。
 そしてだ、この曲の何が凄いかって言うと、歌詞カードを見ながらこの曲を聴いた時のその破壊力だ。先日電車の中で歌詞を見ながらこの曲を聴いた時の私の脳は、ダブルクロスカウンターの上を行くトリプルクロスカウンター*1 を喰らいボクシング生命を絶たれたウルフ金串*2 の顎の如く砕け散った。うん、『ばいばーーい』はaikoの相打ち覚悟のクロスカウンターだ。いや、この破壊力は無冠の帝王と呼ばれたカーロス・リベラ*3 を廃人にまで追い込んだホセ・メンドーサ*4 のコークスクリューパンチ並み、と言った方が相応しい表現かもしれない。
 歌詞の“だったらお願い今すぐ全部返せよ”の“返せよ”は、ジャンキーであってもハッとする様な存在感のある言葉である。

<注釈>
*1 相手の力を利用したその破壊力は、通常のクロスで4倍、ダブルで8倍、トリプルで12倍とも言われるが実際は、通常=ダブル=トリプルらしい。ボクシング漫画の影響なのか、相打ちのイメージが強いが実際は相打ちにはならない事の方が多い様である。
*2 デビュー当時、力石徹と肩を並べる有望選手だったが、矢吹丈との試合にて顎を破壊され引退、ヤクザの用心棒となる。でも何だか憎めない存在。
*3 上位ランカーがその実力を恐れ、挑戦を避けたが故、“無冠の帝王”と呼ばれたベネズエラ出身のボクサー。矢吹丈との激戦後、世界王者ホセ・メンドーサとの試合でテンプルにコークスクリューパンチを受け廃人となってしまう。人前でギターを弾く陽気な人柄だった所が逆に何とも言えない哀愁を醸し出してしまう人。あしたのジョーの中で一番好き。
*4 キングオブキングスの異名を持つメキシコ人ボクサーで、明晰な頭脳と卓越した技術を持ち、矢吹丈とは相反する、家族想いの天才ボクサー。丈との死闘の末、試合に勝利するも白髪となってしまう。

2:メロンソーダ
 今現在、私の心のベスト10 aikoソング部門 堂々の2ケ月連続トップを堅持している曲。創作の発端がラジオの企画で、他アーティストとのコラボ作品のセルフカバーになるので、「年末の“わんお31心のベスト10 aikoソング部門”のランキングからは外すべき」との意見が選考委員からあがっているとかいないとか。
 モータウンミュージックの金字塔「恋はあせらず」*1 の様な圧倒的なエヴァーグリーン感を纏い、澄み渡る春の青空に対角線上に引かれた飛行機雲の様にまっすぐで迷いがない名曲「メロンソーダ」は、“わんお31年間心のベスト10”にはランクインしないかも知れない。しかしそれは前述の、“無冠の帝王”カーロス・リベラの如く、私の胸の中で燦然と輝き続けるだろう。
 メロディだけでなく歌詞も素晴らしく、“洋服についたシミで思い出した”はaikoの王道な言い回しであるし、“おやすみとおはようが重なる”は最早発明と言っても過言ではないであろう。

<注釈>
*1 1966年にスプリームスが歌い大ヒットしたモータウンを代表する名曲。1982年にフィルコリンズのカバーでも大ヒット。現代POPSの見本と言っても過言ではないと私は思っている。「恋のスーパーボール」「Smooch!」等からaikoのモータウン好きを感じるのだが、本当に好きなのは編曲者の島田晶典氏なのかも知れない。aikoと飲む機会があれば(ねえよ)この辺の事をaikoに聞いてみたい。

3:シャワーとコンセント
 ライブで盛り上がる事間違い無し“文句ある奴ぁ俺んトコ来い!”なモッシュピットソング*1 。
編曲のOsterさんはDTMで編曲するのだろうか?生楽器では出で来ない様なアレンジと思える。とにかく、ドライブ感のあるaikoの曲とOsterさんの編曲の相性の良さは抜群で、そこに佐野康夫氏のドラムと来れば余裕でご飯3杯である。
“息を止めて離れたって何度も溢れてシャツが汚れる”ってなんですか?なんなんですか?? なんかとてもエロティックで、分かる様な分からない様な言葉。このワンフレーズだけでこの曲の勝ちは確定。
また、少し長いが、
“満月に願い事するって本気であたしに向かって聞くの?美しく手の届かぬものにもう戻れない願い事をするな”ってフレーズ一体何ですか!?ホントにもうなんなんですか? “もうaikoけしからんぞ!”って位のメロディとのハマり具合。性感帯を一発で当てられた様な快感。一言一句無駄なく、あるべき位置にある言葉・リズム・メロディ。口にするだけで鳥肌が立ってしまうフレーズを生み出すaiko。天才。恐るべし。
<注釈>
*1 モッシュしながらされながら身体で感じて聴きたい曲、の意味。わんおの造語。

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