メンタルやられた というとき
メンタルやられた、なんて言いますね。漢方ではそういう状況を気の異常ととらえ、三つに分けて考えます。基本的には、①活気がなくなっている気虚(ききょ)、②いらいらする気逆(きぎゃく)、③なんだか不安な気滞(きたい)の三つに分け、さらに四つ目として④元気がなくて落ち込んでいるという気虚+気滞の状態を考えます。あなたのメンタルはどうですか?
気虚・活気なし
気力がなくて元気がないときの第一選択薬は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。消化吸収能を強め、代謝を促進し、元気をつけて疲労感を改善してくれます。元気をつけることによって病をいやし、また病にかかりにくくしてくれる処方となっています。疲れたなぁーと思ったら試してみてほしいお薬です。胃の調子が悪くて元気が出ない、といったときには六君子湯を利用するのも良いと思います。冷えがあって、胃がつかえ、元気が出ないし下痢気味、といったときは人参湯も選択肢になります。
気逆・いらいら
なんだかイライラする、というときにまず思い浮かぶのは抑肝散(よくかんさん)です。肝は精神活動を安定させ、新陳代謝を維持し、血を貯蔵して全身に栄養を補給するといったような働きをする、一つの機能単位と考えます。西洋医学で使われる肝臓の意味合いよりひろくとらえる必要があります。肝の過剰な動きを抑制して、心身を安定化させるというのが抑肝散です。保険適応は、「虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症。」となっています。高血圧傾向で頭痛を伴うような方なら、釣藤散を試してみるとよいと思います。合えば頭痛が軽快し、イライラもしなくなり、睡眠もしっかりとれるようになります。更年期障害の症状を伴うならば加味逍遙散が良いと思います。
気滞・ふあん
なんだか不安で、気分がすっきりしないし、のどのあたりに違和感を感じる、といったときに第一選択となるのは、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。気というのは体の中をスムースに流れていくのが理想ですが、その流れがどこかで滞って、その場所に応じた症状が出てくると考えます。半夏厚朴湯はのどから胸、上腹部あたりで気の流れが悪くなっているときに用いるとされる処方です。なんだか気が晴れないなぁというときに試してみると良いと思います。虚弱体質とおもわれる方なら、香蘇散(こうそさん)を選びます。保険適応は、「胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期。」となっており、適応範囲が狭いように見えますが、神経質ということで使えますから応用できます。頭痛、寒気などに効果がありますが、気のめぐりを良くする生薬がしっかり入っていますから、合えば不安を訴える方に効果があります。
気滞+気虚・元気が出なくて落ち込んでいる
帰脾湯(きひとう)を第一選択薬としてあげたいと思います。「脾」は消化吸収能にかかわるとともに、 血の流通を滑らかにし、 血管からの漏出を防ぐといった機能単位ととらえられます。脾の失調状態をもとに帰してあげるといった意味が名前に込められています。脾の異常により、焦燥感、抑うつ、易疲労、筋力低下、出血傾向、食欲低下、などが生じるとされています。保険適応病名は、「虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症。」となっています。この帰脾湯に、柴胡と山梔子が加わったものが加味帰脾湯です。帰脾湯よりも神経過敏傾向がみられるようなときに使われるもので、保険適応は「虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症。」となっています。
以上に挙げたもの以外にも、気持ちを整える方向に働く処方はあります。メンタル不調かな?と思ったら、漢方薬を利用するという選択肢もあることを思い出してください。