変形性膝関節症によく利用される漢方薬 防己黄耆湯
二本足歩行をしている私たちは、四足歩行に比べて膝への負担が大きいことでしょう。運動や事故で膝を痛める若い方もおられますが、高齢者の場合は長年の無理が高じて膝の痛みが出てくるのだと思います。変形性膝関節症の場合も長年の使い過ぎの結果起こることが多いようです。症状が進行して日常生活に影響が出るようであれば、シップ、減量、鍼、赤外線、潤滑薬の注射、関節鏡手術、人工関節置換など様々な方法でその痛みを取り除こうとすることになります。そんな時の治療選択肢の一つとして、漢方薬も加えていただきたいと思います。代表的なものが防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)です
防己黄耆湯は、3世紀にはすでに存在していた処方です。防已を主薬として、黄耆、蒼朮、大棗、甘草、生姜の6種類の生薬から構成されています。防已は水のめぐりを良くして関節の腫脹を軽減し痛みを取ってくれます。黄耆も無駄な水分を除き、皮膚を強くして汗を止めてくれます。蒼朮は水分バランスを整え痛みを軽減します。大棗、甘草、生姜は胃腸の調子をととのえてくれ元気にしてくれます。
適応となる方のイメージは、体力が低下し、色白で筋肉が軟らかく水太り傾向のある方です。むくみ、関節のはれ、関節の痛み、汗が多い、疲れやすい、尿量が少ないなどといった症候がみられることが多いです。
保険適応病名は、「色白で筋肉が柔らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で、下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症:腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、癤、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順。」となっています。
この処方の効果を、中医学の言葉をかりて表現すると、◎補気健脾:元気をつけて胃腸の調子をよくする、◎利水消腫:水分バランスを整えて腫れを軽減する、祛風止痛:風邪を除き痛みを取る、という風になるようです。
以前お花の先生で正座ができなくて困っている方がおられました。防己黄耆湯をお出ししたところ、膝の腫れは変わらないけれど不思議と正座ができるようになったといわれました。効果は体質によると思いますが、試してみる価値はありそうですね。
なお、肥満症という効能があることからダイエット効果を期待して服用する方もおられますが、期待薄です。内臓脂肪比率の減少効果などが報告はされていますが、基本的には余分な水分を体外へ出してあげることで体重が減ることもある、という風に理解するのが良いと思います。漢方薬の宣伝としてダイエット効果を喧伝する向きはありますが、それはあまいと思います。運動と食事で頑張ってください。