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顔や足がむくむ事はありませんか 水滞

 人の体の6割は水でできていると言われています。ただし赤ちゃんの頃は7割近くが水分で、高齢になってくると6割よりも少なくなると言われています。高齢になるとまさに枯れていくと言うわけですね。

 体の半分以上が水というわけですから、人の体は水の影響を大いに受けます。さらに日本は海に囲まれた島国ですし、雨もよく降りますので、湿気が多い環境です。そのためか健康面でも水の影響を受けやすいと言われています。天気が下り坂になると調子が悪くなる、などという人はまさに水の影響を受けている可能性があります。

 漢方では気血水の三要素が重要とされています。そのうち、水のバランスが崩れている状態を水滞あるいは水毒と呼びます。これは体全体の水分量をさしている意味合いもありますが、水の存在する場所の偏りを問題とする意味合いも含んでいます。

 水滞による症状とすれば、以下のようなものがあります。めまい、立ちくらみ、体が重く感じる、頭が重い、吐き気や嘔吐、朝起きた時には体がかたく関節を動かしにくい、顔などがむくむなどです。その他、車酔いをしやすかったり、水のような下痢をしたり、胸やお腹に水が溜まったりというしょうじょうも水滞の可能性があります。

 水滞を改善させる生薬には、朮、茯苓、猪苓、沢瀉、防已、滑石、車前子、半夏、黄耆その他があります。これらの生薬が含まれている処方は、水代謝を改善させる意味合いが含まれているということになります。

 水滞に対する代表的処方は、五苓散です。五つの構成生薬のうち、沢瀉、猪苓、朮、茯苓の四つは水滞を改善するものですし、残る桂枝は気のめぐりをよくすることで、さらに水滞改善を加速します。

 漢方薬で水バランスを改善する処方群を、利水剤(りすいざい)と呼びます。西洋薬にも似たような呼び名で利尿薬(りにょうやく)というものがありますが、からだへの働きかけという意味では違いがあります。利尿剤は、体の(血液中の)水分を尿として体外へ出すという働きをします。これによって過剰な水分を除き、浮腫などもとれるというわけですが、体の水分が足りないときも無理やり尿として水分を絞り出すということが起こります。これに対して利水剤は、結果として尿が増えることはありますが、体の中の水の偏在を正すという働きになるとされます。皮下のむくみがあれば血管内に引き込み、水様性の下痢の時は消化管内の過剰内水分を再吸収するというイメージですね。当然脱水傾向の時におしっことして水分を絞り出すような働き方はしません。

 五苓散以外の水滞治療薬をいくつか挙げるとすれば、当帰芍薬散、真武湯、猪苓湯、防己黄耆湯、木防已湯、茯苓飲、半夏白朮天麻湯などもあります。他にも処方はいろいろありますから、水をさばくということをいかに大切に考えているかがわかりますね。

 また水というのは体を冷やす方向にはたらきますから、冷え傾向の人に水滞があるということもあります。気・血・水という観点から体の不調をとらえることでその不調の原因を探り、原因によって必要な処方を考えていくという方法論は西洋医学とは全く違いますね。違うからこそ、活路を見出せる場合もあるわけです。体の不調に対してはまず西洋医学でアプローチし、それでカバーできないところを漢方で見つめなおすことでより多くの方の体調を改善できると思います。あなたもぜひ漢方ファンになって、うまくりようしましょう。

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