防風通聖散=やせ薬 ではないよという話
世の中、やせたい人がたくさんいるようです。痩せぎすと呼びたくなる人まで痩せたがる状況というのは、何なんでしょうね。すらっとした女性が、防風通聖散の処方を希望されることがあります。そんなときには、あなたに使うような処方ではありませんよ、ということを説明します。するとわかったような風で帰っていかれますが、多分市販薬を購入したりするのでしょうね。
防風通聖散の一つの効果として肥満女性に使用した報告があります。対象となった方のBMI は 36.5±4.8kg/m2というかなりの肥満があるかた。そして耐糖能異常、つまり血糖が高くなってしまう方です。つまり肥満症といって、医学的に見て「治療が必要である」と判断される肥満がある方を対象としたものです。
対象者はまず8週間にわたり、一日の摂取カロリー1200Kcalの食事を食べ、5000歩以上歩くことを課されます。そのうえで防風通聖散を服用した人と偽薬(プラセーボ)を服用した人に分けると、防風通聖散のグループのほうが腹囲の減少が多かったという結果でした。ここから推測されることは、肥満症の人のダイエットに防風通聖散を加えれば効果が増すかもしれない、ということ。しかし、防風通聖散は内臓脂肪を減らしてくれる、というところが独り歩きをしてしまい、やせ薬と認識されることになったのだとおもいます。
通常、身長に比べて体重の割合が大きい状態(BMI≧25)を肥満とよび、医学的に痩せる必要がある場合を肥満症と呼びます。医療用防風通聖散の保険適応は、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘、となっており、やせた人に使うお薬ではないことが分かります。
防風通聖散が合わないような人に使った場合に起こりうる不都合をいくつかあげます。やせている人は発熱量がすくなく、冷え性の人が多い傾向がありますが、防風通聖散は体を冷やす処方ですから、冷えによる症状を悪化させる傾向があります。大黄と芒硝という下剤としての効果を持つ生薬が含まれていますから、体の弱い人に使うと腹痛や下痢を起こす可能性があります。麻黄という生薬は、交感神経興奮作用と中枢興奮作用がありますから、ひとによると不眠、動悸、血圧上昇、排尿障害などの症状が出てくるかもしれませんし、もともと動脈硬化があるような方なら、虚血性心疾患(狭心症など)を誘発する危険性まであります。
漢方薬は、一般的に副作用が少ないのですが、体に合わないものを服用すれば体調をかえって崩すこともあります。体に合わない食べ物を摂ることをイメージするのもよいかもしれません。漢方薬を始めるときには、詳しい薬剤師さんや医師に相談するのが良いと思います。漢方薬もお薬です。正しく服用したいものです。
ダイエットの基本は、食事療法と運動療法です。そこをないがしろにして薬に頼ろうとする時点で、やせることを放棄したことになるのかもしれませんね。