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胃腸虚弱の方が頭痛やめまいを訴えたら

 胃腸が弱く、冷えの傾向がある方が、めまいを訴えるときによく処方されるのが半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)です。元気をつける処方群である補剤と言われるものに含まれます。

 気力をつける、黄耆、人参、白朮、胃腸の機能をととのえる陳皮、半夏、茯苓、生姜、水バランスを整える茯苓、沢瀉、白朮、めまいをおさめる天麻などが含まれています。

 この処方の出典とされる『脾胃論』の中では、めまいがして目の前が真っ暗になり、体がゆらゆらして安定せず、頭が痛く、体が重くて動けず、手足が冷えてゆっくり休むこともできないような人に使うということになっています。

 お腹の力が弱く、胃のあたりではぽちゃぽちゃの水の音がすることがあります。いわゆる水滞があるような人です。

 保険適応病名は、「胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがある者。」となっています。

 中医学の言葉をかりて半夏白朮天麻湯の効能を見てみましょう。「補気健脾」というのは、生命エネルギーの気を補って、消化機能を健やかにすることを示します。また、「利水消食」は、体の水バランスを整え、消化を助け、食べ物の停滞を解消する働きがあることを示します。「化痰熄風(けたんそくふう)」というのは、余分な水を除き、身体のふらつき、めまい、手足の震え、筋肉の引きつりなどを治すということです。

 胃腸の調子をととのえるために漢方薬を使っている方が、車酔いもひどいということで、半夏白朮天麻湯も加えました。普段は一袋、車に乗らなければならない日は朝晩2回服用するようにしたら、車酔いで困ることがほとんどなくなりました。めまいに一般的に使われる西洋薬では、なかなかこのように効くことはありませんね。

 気・血・水のうち、気と水に働きかけて調子をととのえる処方ですから、血にも問題がある場合には、血に働きかける処方も使うことがあります。たとえば、冷えとむくみがあるような方がめまいなどを訴えるときには、半夏白朮天麻湯と当帰芍薬散を使うなどです。また、水分バランスを整える力を強めたいなら、この処方に五苓散を追加したりもします。

 ストレス社会といわれる現代。いろいろため込んでいる人も多いと思います。ストレスは漢方でいう肝の機能を障害するとされます。そして肝の不調は脾、つまり消化機能に悪影響を及ぼすと考えます。診察をしていると、ストレスから胃腸機能が悪くなり、元気がなくなり、めまいや頭痛を訴えるという方が少なからずおられます。気がつかないうちに頑張りすぎている人達ですね。そういう時は、体全体の調子をととのえつつ、気になる症状の手当てをしてくれる漢方薬は大切な治療手段となります。




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