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元気をつける補気剤と呼ばれる処方たち
漢方では、気・血・水のバランスを重視します。この中で気と言うのは生命エネルギーとイメージすれば良さそうだ、ということをこれまでもお話してきました。この、気が不足している状態を、漢方では気虚(ききょ)とよびます。そしてこの気を補ってくれると考えられる漢方薬は補気剤と呼ばれます。この気のエネルギーは、消化管から取り入れられる物質が大きな役割を果たしていることから、消化管(脾)の機能を高める必要がありますから、補脾の意味合いも含んでいます。
気虚の状態では、体全体の機能低下、元気がない、疲労を感じやすい、気力がわかない、顔が青白い、話し言葉に力がない、食欲が落ちている、下痢をしやすいなどの症状がみられます。このような状態を改善してくれるのが、補気剤で、処方とすれば、四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、啓脾湯(けいひとう)が挙げられる場合が多いと思います。
四君子湯は、体力がない人で消化機能が低下した人に使います。保健適応は、「やせて顔色が悪くて、食欲がなく、疲れやすいものの次の諸症:胃腸虚弱、慢性胃炎、胃のもたれ、嘔吐、下痢。」となっています。六つの生薬から構成されており、人参・白朮・茯苓・甘草の四つは、いずれも副作用がほとんどなく、長く常用することができて、健康にしてくれます。残る大棗と生姜は胃の調子をととのえてくれます。処方の働きは、気を補い消化機能を良くしてくれる、補気健脾(ほきけんぴ)と、水バランスを整えてむくみを取り除く、利水消腫(りすいしょうしゅ)です。
六君子湯は、比較的体力がない人で、主として慢性化した消化機能の低下状態を目標に用います。保険適応は「胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐。」となっています。四君子湯に陳皮と半夏が加えられた八つの生薬から構成されています。処方の働きは、四君子湯の働きに加えて、気のめぐりを良くし胃の余分な水分を取り除く、理気化痰(りきけたん)があります。漢方の胃薬と言えます。
補中益気湯は、疲労倦怠感のある人に広く使える処方です。保険適応は、「消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症。」となっています。構成生薬は十種類あり、胃腸を整え、元気をつけて、皮膚を強くし、血を補い、筋肉の緊張や活力を回復させます。
啓脾湯は、元気がなくて、食欲もない、下痢傾向の方に使います。保険適応は、「やせて、顔色が悪く、食欲がなく、下痢の傾向があるものの次の諸症:胃腸虚弱、慢性胃腸炎、消化不良、下痢。」となっています。九種類の生薬から構成され、消化吸収能を高め、元気をつけ、下痢を止めます。
以上の四処方は、元気のない方にお勧めの処方です。特に、漢方の胃薬の六君子湯と、元気づけの補中益気湯はよく使われる漢方薬です。私はいつも言っています、「栄養ドリンク呑むのなら、漢方をのんだらどう?」とね。
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