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自分の体を見つめてみよう

 健康診断を受けたことのある方が多いと思います。血液検査を行うと、検査値が正常範囲から外れている場合に注意すべき点を書いた所見用紙が送られてきます。「中性脂肪が高いようですので、食事に気をつけ、運動習慣を身に付けましょう」「血糖値がやや高めです。食べ過ぎに注意し、運動をして減量しましょう」「血圧がやや高めですので、一度専門医の診察を受けましょう」といったように、いろいろな注意事項が書かれています。正常範囲からほんの少し外れただけでも、いろいろと指摘されます。

正常値

 私たちは、検査値が正常値から外れるととてもまずいことのように感じて、一生懸命に正常範囲内に戻そうとします。しかし、それが本当に自分にとって健康で長生きにつながるのかどうか、はっきりとは言い切れません。

 正常値というのは、多くの検体を検査して、値の高いほうの2.5%と低いほうの2.5%を除いた約95%の人たちが収まる範囲の値です。つまり、もともと普通に生活している人の中でもその値から外れている人が必ずいるということです。健康診断の目的は、健康的に元気に生活し、できれば健康寿命を延ばし、さらにできれば長生きもできるようにするためです。すべての値を正常値に収めるために行うものではないことには注意が必要です。

人の体質は皆違う

 社会生活の中では、人に合わせなければならない場面も多いかもしれません。しかし、自分の体の検査結果まできっちり他人に合わせる必要はありません。自分の体調を自分で時々チェックし、普段と比べて調子が良いのか悪いのか、変わらないのかを気にかけるようにしてください。若いうちは体力があり、少々無理をしても平気だと感じているために、思った以上に体に負担をかけている場合があります。少し休息すれば回復することもありますが、あまり無理をしすぎると体は突然悲鳴を上げることになります。

 病気になるほど頑張っても、誰も褒めてはくれませんし、大切な自分の人生を台無しにしてしまう可能性もあります。頑張りすぎる人は、休むことを義務だと思って、休む日を無理にでも作るのが良いでしょう。

 人の性格が十人十色であるのと同様、人の体も一人ひとり異なります。どの程度のストレスに耐えられるか、どの程度の食事量がちょうどいいか、体に負担のない温度は何度くらいかなど、みんな違います。自分は自分であり、人の体とは違うのです。ちょうど良い具合もみんな異なります。

漢方診療

 漢方診療は、そのように異なる一人ひとりの体質や体調に合わせて処方を決定していくものです。同じような症状でも、同じ処方を使うわけではありません。体のどの部分がどのように調子を落としているのか、バランスがどのように崩れているのかを判断し、その人のちょうど良い状態からのズレを是正する処方を見つける治療です。

 元気がないと感じる場合は、補中益気湯のように胃腸機能を高めて元気をつける処方を使います。体の水分バランスが崩れている時には、五苓散のように水分の偏在をなくす処方を使います。内臓の冷えが原因で体調を崩している時には、人参湯のように内臓から温めて体調を整える処方を使います。なんだか鬱々としている時には、気の巡りを良くする半夏厚朴湯のような処方を使います。貧血気味で皮膚が乾燥している時には、四物湯のように血(けつ)を補う処方を使います。このように、バランスを整えるための処方がいろいろと準備されています。

自分の体を見つめよう

 体調を整えるのは、最終的には自分自身です。時には身近な人が体調の変化に気づいて言葉をかけてくれることもありますが、その言葉を受けて体調を整える行動に移すかどうかはあなた次第です。体調管理に気を配ることで、日々を快適に過ごせる可能性が高くなります。

 体調管理に必要なのは、日々の生活習慣ということになりますが、それだけでは不十分な時は、自分に合った漢方薬が手元にあると安心です。日々の体調管理にも漢方薬は有用です。生活習慣を整えるとともに、東洋医学的な発想を身につけることは、元気に日々を過ごすためにとても有用です。ぜひ、漢方に興味を持ってくださいね。

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