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コロコロ便の便秘に使う漢方薬

 高齢者の方には、便通の不調を訴える方が多く見られます。そのような方の中には数種類の便秘治療薬を内服している方もおられ、その日の具合によって下痢にまでなってしまうようなこともあるようです。便秘治療によってかえって調子が狂ってしまい、便秘だったり下痢だったりと、大きく体調が変化してコントロールが難しくなっているわけです。また薬の治療によってお腹が痛くなったり、外出時には効きすぎたら困ると内服をためらったりといろいろです。

 便の出具合のコントロールがうまくいかないときには、漢方薬も利用するのが良いと思います。漢方薬は一人ひとりの体質や体調に合わせて処方を選択することができます。もちろん通常の薬との併用だって可能です。

 便秘に対する漢方薬として一番基本的な処方は大黄甘草湯です。大黄と甘草という二つの生薬で構成されています。大黄が腸管の動きを刺激して便を出す方向へ働きます。甘草はその大黄の働きが強く出すぎないように少しブレーキをかけてあげるようなイメージです。ですから通常の緩下剤でお腹が痛くなるような人もこれだとお腹が痛くなりにくい可能性があります。

 一般的に構成生薬の数が少ない漢方薬は効き方がシャープだと言われますが、一方で使っているうちに効果が減弱してきやすいとも言われています。一時的に便秘薬が必要という方には大黄甘草湯を処方しますが、私は基本的にもう少し構成生薬の多い漢方製剤を処方することが多いです。

 私が便秘を訴える高齢者に対してよく使う処方は、潤腸湯と麻子仁丸です。この2つの漢方薬はどちらかというと高齢で、少し肌がカサカサしていて、お薬を使わないと便が出にくくて、便が出るときにはコロコロした便が出ると言うような方に使います。両者の大きな違いは含まれる大黄の量です。潤腸湯には1日量として2グラム、麻子仁丸には4グラムの大黄が含まれているので、便を出す力とすれば麻子仁丸の方が強いと言うことになります。

 コロコロ便になる人は、結腸が痙攣性にぎゅっと収縮するために便が小さく分けられ、腸のスムーズな蠕動が起こらないために便が硬くなってしまっているわけです。このような状態は高齢者に限らず若い女性にも見られるわけですので、潤腸湯や麻子仁丸の出番は割と多く見られます。どちらも乾燥して硬くなった便を柔らかくし、腸の蠕動を回復させ、油分で便をコーティングして自然便が楽に出るような働きをしてくれます。

 先日も下剤による便通のコントロールが難しいと言われる高齢者の方に潤腸湯を処方したところ、これまでになく便を出しやすくなり緩下剤の量を少し減らすことができたとの事でした。ただしまだすっきりとは出ないと言うことでしたので今は麻子仁丸に変えて様子を見ているところです。

 昔から人の体調不良に向き合ってきた漢方薬と言うのは、様々な場面で私たちの役に立ってくれます。体調不良に困っているのでしたらいちど漢方薬を試してみてください。

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