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日本人だから知ってるでしょ?あの温泉地の名前

日本の外にいると、日本人であるということで、多種多様な質問を向けられることがあります。

元々苦手な雑談の場で、まともに喋れもしない言語で質問に答えるとなると私は冷や汗をかきます。

日本に対する無知と語学力の無さという二重の無に、私の両頬はビンタされます。

先日、近所のカフェで顔見知りの人や知らない人と話をしていた時。

私は喋れないので必死に聞いているふりを演じていたのですが、気づけば日本の温泉についての話題になっていました。

知り合いのおじさんが、私にしっかりと目線を合わせて「あの温泉、猿が入ってる温泉はどこにあるの?」と質問してきました。

そばにいた知らないおじさんもうなずきながら「頭に雪がのってね、入ってるよね」みたいなことを言っています。

あの愛くるしい猿の温泉は、あの雪深く美しい露天風呂は、日本のいったいどこにあるの?日本人だったら知ってるでしょ?というわけです。

知らん。

もちろん、湯気の立ち上る露天風呂の中で猿が気持ちよさそうにしている写真は見たことがあります。だけどそれが、どこに、なんという地名の場所にあるのか、私は即答できない。

そういえば、随分前のことだけど、やはりそこに旅行に行きたいのだという人がいて、東京からの行き方か何かを調べたことがあった。

「スノーモンキー」と言われて有名らしいと聞いたことがある。

でも、その猿がいる温泉の地名は、もうすっかり、私の頭の中の消しゴムが消し去って、積もったばかりの雪原のように、きれいに一面真っ白な状態になっている。

あなたならどうしますか?スマホを取り出して、検索しますか?

しかし、この時に私はそれをしませんでした。

私は基本的に頭の回転が遅く、テンポ良く話すことが絶望的にできない。だけど会話はスピードが大事、すぐに何か返さなければ、と焦った私は、猿の温泉を調べもせず「」と答えた。

「北の方だよ」と、そんなの日本人じゃなくてもわかるわい、という粗末な答えを言いました。

私に質問していたおじさんは、そうかそうか、と言ったかどうかはわからないけど、話は流れていきました。

私は、なんとかやり過ごせた、と思っていたのだけれど、あとから、その場を見ていた相方(通称ブッダ)から、

「彼は、温泉の名前を知りたかったんだよ。エキゾチックな名前を知ってみたかったんだよ。その名前を覚えられなくてもいいから、響きを聞いて、口にしてみたかったんだよ」と言われました。

それなのに、この日本人は「北」と愛想もクソもない返事をしていたとは。頭を抱えたところで、時すでに遅し。

「なぜ、その場で地名を調べろって私に言ってくれなかったの」と私はブッダを責め、ますますロクでもない人間性を露呈しながら、「今度おじさんにあったら、謝って教えてあげるべき?」と、眉間にシワを寄せて考えていたら、「済んだことはもう放っておきなさい」とブッダに言われました。

サービス精神も、おもてなしも、観光宣伝も何もない日本人でごめんなさい。  

ちなみに、おじさんが知りたかった猿がいる温泉は長野県の地獄谷温泉にある公園だそうです。ジゴクダニオンセン、エキゾチックな響き、言ってみたかったんですね。ごめんなさい。

地獄谷野猿公苑のみなさん、正確な情報を流布せず、ごめんなさい。

雑談って難しい。コミュニケーションって難しい。

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