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旅するエプロンの始まり タイ バンコク編vol.1
「もし、自分が映画監督なら どんな映画を作りたい?」
今、もし少し時間があるのなら、このセリフを一度自分自身に言ってみて欲しい。
もちろん主役はあなた。どんな性格で、どんな生活をして、何を夢見ているのか。
できるだけ
具体的に、ストーリーを描いてみて欲しい。
私自身が旅に出ることを決めたきっかけは些細なことだった。
ある寒い冬の夜。
28歳の誕生日を迎えた日、ケーキに刺さったろうそくの火を
消そうとした時、親友がこう言った。
「make a wish! (さぁ、願い事をして!)」
誕生日といえば、な言葉に私は目を瞑りながらふと思った。
「今の私の願い事って、なんなんだろう」
学生のうちは毎年、学年が変わるごとにある程度
自分の生活や目標が自動的に変わる。
季節ごとに行事があり、テストがあり。出会いも、別れも全て
自分が動かなくとも、用意されているかの如く体験できる。
しかしこれが社会人になるとそうはいかない。
季節が変わることを自ら楽しまないと、誰も行事を用意はしてくれない。
出会いも別れも、自ら求めて動かない限り
ほぼ変わることのない特定のサークルの中で自分の生活を送れてしまう。
そして、そのサークルが心地よければ良いほど その外へ出ることを
めんどくさく感じたり、時には怖く感じてしまうこともあるはず。
私自身がそうだった。
20歳の頃の私と28歳の私。
2人は同じ人間のはずなのに、何かが違う。
この違いは一体、何なのだろう。
湯船に沈みながら、少し考えてみた。
この8年の間で恋愛も仕事も、色々なことを経験した。
そりゃ大人になったんだもん。自分も変わるよね。
でも、何なのだろう。
自分の何か"大切な感覚"がなくなっている、そんな違和感。
自分が何に悩んでいるのかもわからない。
自分の中にある満たされない"ある"感覚。
ひとつ分かることは、それは"誰か"や"何か"に満たせるような、
そんな簡単なものではなさそうということ。
「make a wish」と言われた時に初めて気づいた。
ああ、自分は「夢」を見ることを忘れていたんだ。
20歳の私は夢を見ていた。
自分の知らない場所に行ってみたい。
素敵な人と恋愛をしてみたい。
ちょっぴり大人なジャズバーにだって行ってみたい。
ちょっと背伸びして、自分の知らないを覗いてみては
ワクワクしたり、ドキドキしていた。
"その感覚"を私は忘れてしまっていたのかもしれない。
いつからか、私は自分のことを"大人だ"と思い込んでいた。
「もう28歳になったんだから。」
「周りの友達だってもう、ママになってるんだよ。」と。
誰に言われたわけでもないのに、自分自身が自分にそう言っていた。
妻としてではなく、母としてでもなく。
私は私として、どんな人生を描いてゆきたいのだろうか。
もちろん、自分の人生の物語に大切な人はたくさん出てくる。
でも、自分自身が主人公だとしたら 私は私の映画をどんな話にしたいのだろうか。
そこから私はもう一度、夢を見てみた。
大きな白い紙にとにかく思いつく限りの物語を書いてみた。
そうして自分の中にあった物語が、"旅するエプロン"だったのだ。
第一カ国目であるタイ バンコクに向かう飛行機の中で書いている
この物語はまだ、始まったばかり。
どんな旅になっていくのか、どんな味と出会うのか。
次回の旅するエプロンの更新をお楽しみに!