感想:密やかな結晶

密やかな結晶 小川洋子
https://www.amazon.co.jp/dp/4065214645/ref=cm_sw_r_apan_glt_i_QFNQ71WCW7QBT1YEVFG0

●あらすじ
ブッカー国際賞ノミネート作品。

あらゆるモノ(物質だけでなく、概念も)消滅する世界――消滅する島、でナチスのような秘密警察の記憶狩りに怯えながら、消滅を淡々と受け入れる島の人々。中には、消滅を受け入れられない人、消滅しない人も少数ながら居て、秘密警察が目を光らせている。
消滅するものは徐々に増えていき、人々の生業も徐々に減っていく。
小説家である主人公「わたし」の身近にも、秘密警察から逃れるため、隠れ家に消えていく人も……。

●感想

のっけからこんな感想どうかと思うが、(大した冊数読んでいないのですが、)小川洋子さんを読むと、頻繁に、妻子ある男性との関わりがあって、「どうしてかな」と思ってしまう。
「一人で生きていく」ことを描いているからだろうか。
恋愛をしても、体がつながっても、妻子ある相手はいつか帰っていく。
すべてをゆだねられない。運命共同体にはなれない。
蜘蛛の糸みたいに、細いつながりでしかない。ちょっとした出来事ですぐに失われてしまう不安定な繋がりが大事なのだろうか。
と、もんもんと、それを考えてしまった。


大切なものが失われていく世界。

終末の世界。静かにひっそりと、世界が消えていく。

「だってこれは、本当はもう存在していないはずのものなんでしょう?(後略)」
「(前略)オルゴールは僕たちの前に確かに存在しているんだ。(中略)変かしたのはみんなの心の心の方なんだ」(密やかな結晶 抜粋)

見なければ見えない。聞かなかければ聞えない。存在しない。
現実でも、「差別は存在しない」「貧困は存在しない」それは本当?
見ていないだけ聞いていないだけで、本当に存在しないの?
見ようとしていないだけじゃないの?

精霊や妖怪、幽霊、神様だって、感じるとることができない=存在を否定する証明にはならない。
(見ようとしても、私には見えませんが)

ずいぶんと、ずっしり重たいものが、残ってしまった。


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