RESPECT リスペクト ブレイディみかこ著
メルボルンに来て、私は初めて ”本を好きに読めない" というピンチに瀕していた。
もちろん対策としてKindleを持ってきているのだが、こちらで新しくKindle本を買うことはできない。
あらかじめ購入しておいた本を、ゆっくりゆっくり、大切に読んでいたのだが、もちろんストレスフル。
もう、いっそ洋書でも買ってみようか。
それを辞書を使って読み進めるとか。
そう思ってメルボルン市内にある洒落た本屋に入ってみるものの、まず何を買えばいいかがわからない。
そもそも洋書って、帯が無い。あらすじが無い。
ぱっと見でわかる前情報が、無い。
ならばと、ハリーポッターを原著で読んだときのように一度読んだことのある本を読んでみようかとも思った。
で、探しきれず。
こりゃしばらく本屋巡りかな、と思っていたところに、良い情報が!
”メルボルン市内に、日本の本を扱ってる図書館がある”
え~~~!!天才か。
ビルの中に入った小さな図書館。でも平日の昼間から人がいっぱい!
そしてなんと!!
最高すぎ。
確かにセクションは小さいのだけど、も~~十分です。こんだけ読める本があると思うと、心うきうきワクワク~♪
お向かいにはお気に入りのカフェがあって、芸術的なケーキからメルボルンに来てドはまりしたドデカサンドイッチも食べられる。
これは・・・住める!!
嬉しくなった私はさっそく放課後居座り、一日で一冊読み終わりました。
初の一冊目は、
”RESPECT リスペクト ブレイディみかこ著”
ブレイディみかこさんといえば、「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」で有名になった方。私もこれ、母にお勧めしまくった一冊!
で、馴染みのある名前だったので手に取ったのですが。
これがまた、面白かった!!
題材は2013年に実際にロンドンで起こった占拠運動「FOCUS E15運動」。
そしてその本で中心の言葉が、
Gentrification ジェントリフィケーション
聞いたこと、あるでしょうか?
私個人としてはこれ、「あー!これかー!」という感じ。
実はちょっと前に "HARLEM ハーレム" というアメリカのドラマを見ていて、その中で黒人コミュニティがたまに口にする言葉。
調べると「都市の高級化」と出てきて、ふーんと流してしまってました。
ジェントリフィケーションとは、地域に住む人々の階層が上がる(裕福になる)ことで、地域の質が向上する(治安など)ということ。
で、それの何が問題かっていうことを分かってなかった私ですが、この本を読むことで少し理解が深まったなと感じます。
理屈的には確かに、裕福な人が集まる地域は治安が良くて住みやすい。
でもそれを、元々住んでいた低所得者の家を壊して作るとどうなるか。
この本ではロンドンだけでなく、ロンドン郊外の安価な土地に、ロンドンに勤めるリモート職の富裕層が家を購入し、その地域一帯の家賃が跳ね上がり、元々住んでいた住民が家賃を払えずに土地を追われる例も出てきていました。
また驚いたのが、投資目的の固定資産の購入による、「空き家はたくさんあるのに住めない→家が少なくなる→家賃が上がる」という構造。
それに加え、当時のイギリス政府の緊縮傾向により低所得者のための集合住宅の維持費がどんどん削減され、更に住居が少なくなるという最悪のサイクルに。
問題は、これに直面する多くの人が低所得者であり声を上げ難かったということ。
それが積もり積もって、大きな運動にまで発展したという話でした。
イギリスが発端ですが、私がこの言葉を知ったのがアメリカのドラマだったことを考えれば、世界的な問題になっているのかも。
は~、そんなことになっているのか。
全然知らなかった。
久しぶりに、へぇ~と感嘆した本との出会いでした。
こういうことも、ちょっとずつ勉強したいなあ。
この記事のことを考えながら、ふと、「オーストラリアの高齢化や福祉の制度、現場はどうなっているのだろう」ということも頭を過りました。
こちらに来る前、日本で歯科衛生士として医療と高齢者福祉に足を突っ込み、その流れで帰国後はそちらに挑戦してみようと思っている身としては、ちょっと気になるところ。
また、時間があれば調べてみても面白そう。
今日はこんな感じで、素敵な図書館と読んだ本の感想でした。