たった7000円で買える感動体験「カンテサンスのお取り寄せ」
人は期待を超える体験をした時、「感動」という感情が生まれるのだと思う。
・震えるほど良かった映画
・大切な日に受けたレストランでのサービス
・期待していたがそれ以上に美味しかった料理
などなど。
あなたにも、そんな経験一度はあるのではないだろうか?
僕ら料理人やサービスマンにとって、感動を提供するのは非常に難しい。
けれども、お客様に感動を提供できた時の喜びは筆舌に尽くし難いものがある。
感動を与えられる人間になるにはどうしたら良いだろう?
「出来るだけ多くの感動体験をする」
これに限ると思う。
だから、宿屋の僕は様々なお宿に宿泊しに行くし、美味しいお店をリサーチしまくって一人でも予約して味わってみたりする。
そういう「感動」の積み重ねが、僕らサービス業を生業にする人間には大切だと信じて。
カンテサンス
いきなりだが、「カンテサンス」という名称を聞いた事があるだろうか?
少しグルメな方なら絶対知っているお店だ。
・13年連続ミシュラン三ツ星獲得
・予約困難
・フレンチの最高峰
・有名シェフ
などなど、【カンテサンス】とGoogleの検索窓に入れれば上記のような内容がヒットするだろう。
言わずと知れたフレンチの名店で、ミシュランでは常に三ツ星を獲得。
シェフの岸田さんは、情熱大陸やアナザースカイに出るほど有名で、テレビドラマの料理を監修するほどである。
予約は非常に困難で、僕も何度かトライをしたが全て空振りに終わった。メニューは3万円ほどのコース1種類にも関わらず。
「一度は行ってみたい憧れのお店」
といった所だろうか。
正直、1人3万円の料理を食べて感動するのは当たり前だと思う。
・食材
・人材
・雰囲気作り
・小物
・器
・あしらい
など、全てにきめ細かく感動を散りばめることが可能な金額だ。
富嶽はなぶさの宿泊単価平均が16000円ほど。1泊2食を提供しての価格ということをお忘れなく。
それでも、「カンテサンスは感動を与えてくれるだろう」と思えてしまうのだから不思議なもので。
チーズケーキ戦争
そんなカンテサンスから、まさかのお取り寄せ商品が販売された。
ミスターチーズケーキの田村さんが、Twitterにて「色々なチーズケーキを食べてきたが、カンテサンスのチーズケーキは別格だった」というニュアンスのツイートを拝見して知った。
「ガトー・オー・コンテ」という名のチーズケーキ。
販売サイトには挑戦的な言葉が並んでいた。
「”これが答えだ”というチーズケーキを作った」と。
送料を入れれば1本7000円を超える高級品。
どこぞのセレブが食べるんや?という気もするが、「7000円で感動体験ができる」と考えれば安いものだとも思える。
当然「買う」の一択だったが、そもそも購入争いで全く勝てない。
毎週月曜日と木曜日の9時半から、週に2回のサイトでの戦争が始まった。
9時半と言えば、富嶽はなぶさ朝のミーティング時間。
ミーティング前にサイトを表示し、ミーティングが終わり次第スマホをタップしまくるが連戦連敗。
どうなってんだよカンテサンス。
1本7000円超えのチーズケーキやで。
普通ならボッタクリって怒られる価格やで。
ハンパないよカンテサンス。
月曜・木曜に毎日携帯をタップしまくる三十路半ばのおじさん。
側から見なくても犯罪者予備軍。怖すぎる…。
毎日タップ生活を続け、遂に購入できたのが2月上旬。そしてお届けの最短が3月上旬。
なかなか辿り着けないチーズケーキ…。
たかがチーズケーキ、されどチーズケーキ。
ロード・オブ・チーズケーキの物語はまだまだ続く。
ガトー・オー・コンテ
3月上旬にようやく届いたカンテサンスのチーズケーキ「ガトー・オー・コンテ」。
2006年にオープンし、沢山の要望があったが一度もお菓子販売をしてこなかったカンテサンス。
「日々の忙しさ」と「納得できるクオリティに達しなかった」のが理由で。
「しかし、ようやくカンテサンスの作品として自信を持って提供できるお菓子が出来た」と、同封されたご案内の紙には記載されていた。
”「これが答えだ」と言えるチーズケーキ”
同封された紙には、興味深すぎる文章が書かれていた。
【原文まま】
このチーズケーキの開発を始める際にまず最初に考えたのは「既存のチーズケーキの問題点と改善の余地はなにがあるのか?」という事です。
僕の考える答えは6つ
「単調さ」
「チーズケーキと言いながらチーズの存在感の薄さ」
「卵の匂い」
「濃厚さからくる重たい食後感」
「食感の悪さ」
「タルト生地がある場合はそれが湿気ってしまっていること」
だと思いました。
研究を繰り返す中でこの全ての問題を解決できたと思います。
これらの問題点を解決しながらあくまでも正統派で、香辛料やフルーツなどは一切入れずにチーズケーキと言うからには「香ばしいチーズの風味」で勝負しました。
僕が求める理想のチーズはこうなんだというイメージをしっかり形にできたと考えております。
皆さんにとってもそうであったら嬉しいですね。
〜中略〜
タルト状の層は食感と香ばしさを、レアチーズケーキ状の層は酸味と軽さ、そして卵の匂いを抑えています。そしてベイクドチーズケーキ状の層はチーズの香りと濃厚さをそれぞれ感じていただけるかと思いますが、肝心なのはこれらを同時に食べて頂くと、今まで感じたことがないくらい香ばしいチーズの濃厚さから爽やかで軽い後味に段階的な変化を体験して頂けると思います。。
この「味の比重による段階的な変化」はカンテサンスでも昔から使われている技術ですが、物販のお菓子でも再現することが出来ました。
また冷凍菓子にありがちな「折角香ばしく焼き上げたタルト生地の部分がふやけてしまっている」ということも防ぐ技術を考えました。
これからも結論が出るまで改善を繰り返していくと思いますが、現時点での最適解だと思っています。
とある。
確かに、チーズケーキを食べた時は途中で飽きてしまったり、食後の胃のもたれがあったりする。そして、チーズの存在感の薄さや卵の匂いも言われれば気になるポイントだ。
それを完璧に言語化し、問題提起をし、問題解決に挑み、商品化して届ける。
やっぱりハンパない人です。
考え尽くされた味
さて、御託をごちゃごちゃ並べておりますが、購入した側からすれば「本当に美味しいんけ?」「1本7000円とかふざけた金額だけど満足するんけ?」というのが率直な気持ち。
こちとら、あまりチーズケーキを食べたこと無いもんだから、成城石井のチーズケーキを食べたり、富士の有名なケーキ屋で普段は頼まないチーズケーキを頼んだりして勉強しているのだ。
ちなみに、成城石井の1300円くらいのチーズケーキにはビックリして「この価格でこの味が…?」となったのも付け加えておく。
つまりですね、個人的にハードルがめちゃめちゃ上がっておりました。ええ。
冷蔵庫で6時間解凍。
小さく切り出しても6切れくらいにしかならない大きさ。
書かれていたように、3層が全て口に入るように一口食べてみる。
最初はレアチーズケーキの爽やかな酸味がきて、その後にコンテチーズの濃厚さが鼻から抜ける。
一番下のタルト状の生地はサクサクで食感が良く、冷凍で届けられたという事を忘れてしまうくらい。
確かに、今まで食べたチーズケーキの中でぶっちぎりの美味しさで、チーズケーキ特有の重さや卵の嫌な匂いが一切ない。
本当に驚いた。
食べる前に読んでいたチーズケーキの問題提起が、全て完璧に解決されているのだ。
そして味のグラデーション・コントラスト・解像度・食感の変化・バランス、どれをとっても素晴らしいの一言。
正に「圧倒的」だった。
ケーキ一つにここまで感動するとは、正直想像もしていなかった。
期待を超える体験
短い人生の中で、”期待を超える体験”を得られる機会がどれだけあるだろう?
今回のカンテサンスのチーズケーキは、正に「期待を遥かに超える体験」だった。
たった一つのお菓子で、ここまで感動を与えられる事に少しばかり嫉妬した。
「僕は期待を超える体験をお客様に提供できているのだろうか?」
もっと努力をしないといけないな。
こういう体験にはいくらお金を払っても良いと思う。
というか、お金で買える体験であるならどんどん買ってしまった方が良い。
自分の人生を豊かにしてくれるし、自分の仕事にも確実に繋がるし。
カンテサンスのチーズケーキ、たった7000円ちょっとで人生を豊かにしてくれる。
とても貴重な体験だった。
次は、北品川のカンテサンスに行こう!
恐らく、たった3万円で感動を与えてくれるはずだ。
次は、ロード・オブ・カンテサンスか。
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