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第9回 LDHによる「MOONCHILD」商標登録出願の経緯

「MOONCHILD名称丸かぶり問題」の経緯

 それでは、今回の「MOONCHILD名称丸かぶり問題」の経緯は如何なるものでしょうか。
 ここから先の記述はすべて特許庁のサイト「特許情報プラットフォーム」において公開されている情報から読み取れる事実を紹介するものです。

 始まりは2022年8月29日。三杉良輔なる人物が「MOON CHILD」の商標登録を出願します。どうやらこの三杉という人物はLDHに依頼されて大量の商標を出願し登録しているようです。しかしこの名前は弁理士名簿には見当たらず、弁理士資格者ではないようですね・・・。

 余談ですがLDHは「MOOOS」も三杉名義で出願しています。「MOOOS」とはガールズグループ「MOONCHILD」のファンの愛称。でも「MOOOS」って、2021年にSun Asteriskという会社が開発したアーティスト向けのファンコミュニティシステムのサービス名称なんですよね。なんかここでも不穏な感じがしてきますね。

LDHは「MOOOS」の商標登録を出願。


 いずれにしても、この三杉という人物が「MOON CHILD」の商標登録を出願し、登録後の権利をLDHに売却する形で当初進めていたものと思われます。このような方法をとったのは、グループの名称が機密情報であったことと関係するのではないかと推測します。誰でも商標出願状況を特許庁のウェブサイトで見ることができますので、LDHがこの名称を出願している事実が開示されてしまうと、グループ名が発表前に世間に明らかになっちゃうもんね。

 しかし、2023年1月30日、この出願は特許庁によって拒絶されます。
 理由は2つあります。 

拒絶理由① 指定商品・役務が多すぎぃー!

理由の1つ目は、LDHが出願している第41類(教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動)という指定商品・役務の分野において、「指定する役務の範囲が広すぎる。お前ホントにこんなに役務やんのか?どうせやんねーんだろう?やんねーのに出願すんな!」(by 審査官)というものです。
 うーん、そもそもこの出願、商品(指定商品)もサービス(指定役務)もありとあらゆるものを指定して出願しており、膨大過ぎるんだよ。なんだよ指定商品が「水泳用耳栓」「保安用ヘルメット」って。作るんだったら作ってみろよ。MOONCHILDってロゴ入ってる保安用ヘルメットをよぉぉぉ!! 

今日も一日ご安全に!
どんな耳にもぴったりフィット!!


拒絶理由② 先に同じ商標を登録していた人がいる!

 理由の2つ目は、大分のかばん屋さんがすでに類似の分野で「moonchild」の商標を登録しているからです。
 余談ですが、このかばん屋さん、お名前が「月子さんという方なのですよ。
 ホンモノのムーンチャイルド!
 キタ━(゚∀゚)━!

 なんかもう、これはLDHの出願とは違って必然性の塊だよね。是非ともこの人にはmoonchildで登録させてあげたいよね。私がもしバンドメンバーだったとしても、この人に「出願しても良いですか?」と聞かれたら、「どうぞどうぞ!」ってすぐに承諾書にサインしますよ。実際、このかばん屋さんは指定商品・役務をかなり絞って商標登録していますので、バンドの活動に及ぼし得る影響は限定的だと思います。

さあ、LDHはどうする!?

そこでLDH側は2023年2月24日、補正書と意見書を提出します。なんとこの時点で、デビュー発表日の3日前。
 グループ名流出回避のため、ギリギリの日まで待っての補正ということなのでしょうか?

「MOON CHILD」商標出願の審査記録


 まず、広すぎると指摘された役務の範囲について。
 この対策として、2023年2月24日に出願人の地位が個人(三杉名義)からLDHへと委譲されます。
 「うっす!出願人は三好という個人ではなく、俺たちLDHでした~っ!エグザイルとかの芸能事務所だよ!だから俺たちこの第41類の役務全部やる!全部やっから登録認めてちょうだい!」ということのようです。

 次はかばん屋さんと指定商品・役務が重なるまたは類似する点について。これについては指定商品・役務の一部を削除し、「かばん屋さんと重ならないようにしたから、認めてね!」とのことです。

 意見書の最後に、LDH代理人の矢上礼宣弁理士名で「可能な場合には補正案などを示唆して頂ければ、有り難く検討の上、対応する用意がございます」とコメントが書かれています。とにかく何が何でも商標登録したい!そんな必死な様子がよく伝わってきますね・・・。

LDH代理人弁理士が提出した「意見書」の一部


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