悩みはありますか?と聞かれたはなし
「はんぺんさんって悩みありますか?」
職場で女の子に聞かれた。
年がひとまわり下のとてもよく笑う、朗らかで人当たりのいい女の子だ。
よく聞かれる質問だ。
どこに行っても誰からでも、私は悩みが無さそうに見えるらしい。
「悩み無さそうに見えるでしょ?でもうじうじ悩む時もありましたよ。」
と答えると
「悩み無さそう!どうやって切り替えてるの?」
と聞かれた。
彼女は思い悩むと、夜、お風呂に入りながら泣いてしまうらしい。
こんなに明るくてかわいらしい子が人知れず泣いているとは、胸がきゅっとしてしまう。
承認欲求の塊だった私は、彼女の年の頃には周りの目を気にしてよく悩んでいた。
その悩みのほとんどは、今思い返すと心からどうでもいいことだ。
・職場の先輩からよくできる子と思われたい。
・友達からは特別だと思われたい。
・彼氏からはイイ女だと思われたい。
そのすべてが「まわりがどう思っているか、どうしてこう思ってくれないのか。」という類の悩みだ。
そんなの悩んでも仕方ない。
周りの反応を気にしながら、奥歯をかみしめながら私なりに年を重ねた。
自分に与えられた役割について、たしかな知識と経験を積むことで、周りからどう思われようといいと思えるようになった仕事面。
自分を押し殺して空気を読むことで、良い友達を演じている私を見抜いて
「こんなにはんぺんのこと大事に思っている私(友達)がいるんだから、もっと自分に自信もってよ。いい友達演じなくていいんだよ。」と言ってくれる友達がいた。
そんな人が1人いれば、もう誰にでも特別と思われなくていいと思えるようになった人間関係。
完璧な関係だから一緒にいるのではなく、私たちオンリーのかたちで一緒に理想の関係になれそうだと思える人と一緒になれた生活面。
いつのまにか得た「確固たる何か」が今の私を「悩みが無さそう」に見せているのかもしれない。
「きっと急には切り替えられませんよ。でも本当にどうでもいいと思える時が来ますよ。だから今は好きなだけ悩んだらいいと思います。そしたら段々、自分なりの楽になる方法を会得できるようになりますから。ただ、風呂場で泣いてると思うと切ないです(笑)」
私はそう彼女に言った。
彼女はいつものように楽しそうに笑っていた。
私の言葉で彼女の気持ちがどうなったかは、気にしないことにしている。
人の悩みを打ち明けられても、「私が絶対解決してあげなくちゃ!」といつのまにか思わなくなった。
それは彼女が登っている山であり、私が登る山ではない。
人の悩みを解決しようなんておこがましい限りだ。
きっと彼女が彼女なりに解決できるようになる。
私は彼女が一日でも早く、お風呂で泣かない日が来るようにと、ひっそり願うばかりである。
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