褒め言葉はちゃんと受け取ってください
最近仲良くしてもらっている会社の先輩がいる。その先輩が隣の部署に来たのは2年半ほど前だが、仲良くなったのはここ半年ぐらいだ。
その先輩はいわゆるデキる人である。雑談をしていたかと思えば仕事の依頼を取り付けているし、他の人のせいで仕事の見通しが立たなくなればプランを複数用意するし、私が泣きつけば必ず助けてくれる。デキる分他人に厳しいのかと思いきや、いつだって穏やかで、口にする言葉は褒め言葉が多い。
だから私はその先輩がすごく好きだし、尊敬している。なんなら「こんなとき先輩ならどう対応するかな」と考えながら仕事をしているくらいだ(今はフロアが離れてしまったので、想像上の先輩に助けてもらっている)。
キャリアパスもキャラクターもちょっと独自路線を歩んでいる私にとって、その人と出会って初めてロールモデルと言える人が見つかった。
その人があまりにもまっとうな社会人過ぎるから、仲良くなってから「なんでそんな真人間なんですか?」と聞いたぐらいだ。こんなにできるんだから家が壊滅的に汚いぐらいの欠点があってもいいのに、話を聞いているとどうやら家もキレイでオシャレらしい。自分で棚作ったりすんだってよ。こうなったらジャイアンばりの音痴を期待したいけど、きっと確実に及第点は取ってくるのだろう。
そんな人だが、一つだけ気になっていることがある。
それは、褒め言葉をちゃんと受け取ってくれないことだ(正確には、受け取ってくれなかったこと)。
はもんの相方は自己開示について記事を書いているが、この私は自己開示はド下手だ。
感情が表に出ないし、口にも出さないしで、なかなか淡白な人間をやっている。そんな私なので、誰かを褒めることもあまりないし、プライベートで付き合うほど仲良くなることもそんなにない。だからここまで書いた先輩への褒め言葉も、正直ガラじゃないと思っている。でも先輩が褒め言葉を受け止めないからこの記事を書いている。
ちょっと前の話。
私の同僚(Aちゃん)は、以前から先輩に対して「ホントにすごいです!」と目をキラキラさせながら伝えていた。だから私が先輩と二人になったときに、「Aちゃんからめちゃくちゃ尊敬されてますよねー」と言ってみた。そしたら先輩はこう答えたのだ。
「Aちゃんは勘違いしてるんだよ」
え、なにその自己肯定感低い人みたいな返答。先輩そんなキャラじゃなかったでしょ。ていうか褒められてるんだから素直に喜んどきなさいよ。と、私の心の声。
その返答が意外だったので(スマートな謙遜をするイメージだった)、私が褒めたらどうなるんだろうと気になって、勇気を出して「先輩って仕事できますよね」と言ってみた。
「別に普通だよ」
私はこの返答が不満だった。普段から褒めちぎっているAちゃんに対してならともかく、珍しく気持ちを話した私にまでそんなリアクションをすんのか。そりゃあ日本全体で比べたときに仕事ができる人の枠に入るかどうかはわからないけど、私は先輩ができる人だと思っているのだからそれでいいじゃないか。私はこんなに先輩のことをすごいと思っているのに、どうして私の認知の方を疑うようなことを言うのか。ちゃんと受け止めてよ。
こうなったら私が本気だとわからせるしかない、と思った。シミュレーションゲームは得意なんだ。攻略したる。
それ以降、私はあえて自分の気持ちを口に出すようになった。
「尊敬してます」「本気です」「先輩に褒めてもらえるのはうれしいです」
通常営業で1年分ぐらい(当社比)の素直な気持ちを、ここ1ヶ月程でぶつけてきた。
その甲斐あってか、最近はちゃんと受け止めてくれるようになってきた。少なくとも、「私がすごいように見えるのは、あなたの捉え方が間違ってるんだよ」みたいな変な謙遜はしなくなった。
ひとまずの結果に満足したので、この記事を書くことにした。でも、まだわかってもらえていない気がするので、これからも心の底から褒めることにする。
褒め言葉はちゃんと受け取って欲しい。
受け取らないと、褒めた方の気持ちを否定することになるから。
謙遜しすぎる人が周りにいたら、もっと褒めよう。
そのうち、きっと、たぶん、わかってくれから。
(どみの)