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リフト券の値上げと二重価格・ダイレクトプライシング〜持続的な観光ビジネスのための価格戦略〜


会社を辞めて時間に余裕ができてから、空いている地方のスキー場で思う存分スノーボードを楽しんでいます。いつまでも残るパウダースノー、圧雪されたゲレンデ。自由に滑りるのは最高の気分です。
でも、ふと気づくとゲレンデがやけに空いている。そこで耳にしたのは、地方のスキー場が経営難で閉鎖の危機に瀕しているという話。
お気に入りのゲレンデが無くなってしまうのは困るし、何より地域にとっての大きな損失です。そんな問題意識から、インバウンド需要が盛り上がる一方で国内客離れが進む現状を踏まえ、「二重価格」や「ダイレクトプライシング」を活用したビジネス戦略を考えてみました。


1. なぜいま二重価格やダイレクトプライシングが注目されるのか


1-1. インバウンド需要による価格上昇


近年、ニセコや白馬など人気のウィンターリゾートエリアでは、外国人観光客(インバウンド)の増加に伴い、宿泊費やリフト券が大幅に値上げされる動きが顕著です。海外から見ると円安メリットが大きいため、高価格帯でも「日本の雪は魅力的」と多くのゲストが訪れています。一方で、国内利用者からは「割高すぎる」「気軽に行けなくなった」という声が増えているのが実情です。


1-2. 為替リスクとオーバーツーリズム


インバウンド需要が盛況の今でも、為替が円高に変動したり、海外経済が不調になったりすると、観光客数が激減して経営が一気に厳しくなるリスクがあります。また、オーバーツーリズムによる地域住民への負担を緩和しようと価格を引き上げた結果、国内客が離れてしまう懸念も否めません。こうした課題を解決する糸口として、二重価格(デュアルプライシング)やダイレクトプライシングが注目されています。


2. 二重価格(デュアルプライシング)とは


2-1. 定義とメリット


二重価格(デュアルプライシング)とは、同一のサービスや商品の価格を、顧客層や販売チャネルによって変える手法です。たとえば、インバウンド向けには付加価値をセットにして高価格帯で提供し、国内利用者や地元住民には割安プランを用意する形が考えられます。こうすることで、富裕層や海外からのゲストから十分な利益を得ながら、地元客やリピーターが離れないように配慮できるメリットがあります。


2-2. 二重価格が成功しやすいケース3つ


1. 高付加価値サービス+収容人数が限定的な場合

• VIP向けのプライベートレッスンやガイドツアーなど、高価格帯であっても需要が見込めるケース

• 国内客には平日割や会員プランなど、明確な根拠をもって値段を調整すると不公平感を抑えやすい

2. 地域振興や文化継承が目的の場合

• 地元住民や国内客には割安チケットを提供し、外国人観光客には“日本独自の文化体験”を盛り込む高価格プランを用意

• 自治体と連携して補助金・助成金を活用すれば、経費負担を軽減して導入しやすい

3. 繁忙期と閑散期が明確に分かれる場合

• ハイシーズンはインバウンド需要を狙い高価格帯で利益を確保

• 閑散期は国内客や地元客に割引価格を提示して稼働率を高める


3. ダイレクトプライシングとは


3-1. 定義とメリット


ダイレクトプライシングは、自社のウェブサイトやSNSなどで直接顧客に販売し、価格を自由に設定する手法です。たとえば、OTA(オンライン旅行代理店)を介さずに予約を受け付ければ、仲介手数料を削減でき、その分を価格や特典に還元できます。さらに、直接販売によって顧客データを取得しやすくなり、よりパーソナライズされたサービスを提供できるようになるのも大きなメリットです。


3-2. 導入の注意点


• オンライン集客(SEOやSNS運用)の強化が欠かせない

• OTAの集客力を完全に切り捨てると売上ダウンの恐れがあるため、バランス運用が必要

• 多言語対応や決済システムの整備を怠ると、海外からの直接予約が伸びにくい


4. ではどうすればいい? 具体的事例・戦略


ここからは、「じゃあ具体的にどうすればいいのか?」という視点で、白馬・ニセコなどの人気エリアや東北のファストパス導入例、さらに地方の村営ゲレンデの経営難対策について解説します。


4-1. 白馬・ニセコ・東北エリアの現状


白馬・ニセコ:海外での知名度が高く、高価格設定でもインバウンド客が増加。リフト券や宿泊費の値上げが顕著

東北エリア:パウダースノーに注目が集まり、ファストパス(待ち時間短縮の有料化)を導入して富裕層やインバウンドを取り込む動きが進む

国内若年層・学生:高騰するリフト券や宿泊費を避け、安価なローカルゲレンデに流れる傾向が強まる


ファストパス導入で生まれる価格差

追加料金を払えばリフト待ちを回避できるという仕組みに、富裕層や海外のお客様は高い満足度を示しています。一方、国内客からは「高すぎる」「余計に格差が生まれる」という反発も。そこで二重価格を活かし、地元客や平日利用者向けに割安プランを設けるなどの工夫が欠かせません。


4-2. 地方の村営ゲレンデを再生する戦略

規模が小さく料金が安い“ローカルゲレンデ”は、平日休みを取れる人や予算を抑えたい人にとって魅力的ですが、経営が厳しいのも事実です。ここで役立つのが以下の施策です。


  1. 二重価格で地元客&国内客を優遇しつつ、海外客には高付加価値を

    • 地元在住者やファミリー層向けに低価格プラン

    •  外国人向けにガイドや送迎、地域の文化体験をセットにして高価格帯を提示

  2. ダイレクトプライシングで仲介手数料を抑える

  • •公式サイトやSNS経由の予約限定で割引や特典をつける

  • OTAに依存しすぎない販売チャネルを構築して、リピーター化を促進

3. 地域観光資源とセット化

  • 地元の温泉や郷土料理、文化体験を組み合わせて“特別感”を演出

  • 通年営業(グリーンシーズンの山アクティビティなど)でキャッシュフローを平準化

4. クラウドファンディングや自治体支援も視野に

  • “お気に入りのゲレンデを守ろう”というコンセプトで支援を募り、設備投資や人材確保の財源とする

  • 自治体や地域企業と連携し、観光振興や雇用創出の観点からサポートを得る


5. 成功へ導くための4つのポイント


1. ブランド戦略との整合性

高価格帯には付加価値があるという説明を明確にし、不公平感を減らす。質の高いサービスがブランド価値を支える

2. 国内外の需要バランスを意識

海外依存だけでは為替変動や世界情勢の影響を受けやすい。国内リピーターや地元客を大切に育てることが安定経営の鍵

3. 情報発信とステークホルダーとの合意形成

「二重価格の背景」「地域割の意義」「ファストパスの狙い」をオープンに示し、住民や顧客の理解を得る

4. 収支シミュレーションとリスクマネジメント

為替リスクや来場者数の変動を踏まえた複数の収支計画を用意し、定期的に見直す体制を整える。

6. まとめ


会社員を辞め、時間ができたからこそ気軽に通える地方ゲレンデの魅力を再発見しました。空いているゲレンデはまるでプライベートコースのようで、極上の時間を過ごせます。ただ、経営難でゲレンデが潰れてしまっては元も子もありません。そこで二重価格やダイレクトプライシングといった価格戦略を取り入れつつ、地域の文化や観光資源を巧みにセット化して、新たな収益モデルを生み出す必要があります。

海外からのインバウンド客と国内リピーターの両方を上手に取り込み、地元の雇用や経済を回していく仕組みがあれば、ウィンタースポーツは今後も多くの人を魅了し続けられるはずです。
日本には魅力あるところがまだまだ多くあります。二重価格やダイレクトプライシングをヒントに、持続可能なビジネスについて考えてみてほしいです。
自身が楽しみながら、その魅力を次の世代に繋いでいけるように──それこそが、私たちの日本を経済的にも文化的にも守る最善策だと考えています。

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