枯れる野菜、腐る野菜
隔週土曜日に通っている有機野菜の教室で宿題が出た。
答えを聞くのは明日だけれど、宿題となればと一応調べてみたので、その結果を残しておこうと久しぶりにnoteを開いてみた。
そういえば色々と試行錯誤の結果、農家としての一歩は1反の借りれた畑で色々作ることからスタート。
過去のnoteで様々考えたが、今となってはゆっくりと進めて体に染み込むように農家になっていくのが良さそうと腹落ちして、楽しんでいろいろなものを植えております。
じゃがいもから始まり、今はさつまいものツルをとって定植しつつ、夏野菜を植えて、とうもろこし&豆&かぼちゃの混色を見守るといった具合。
書いていたらその状態を残していくだけでも楽しそうなので、また書き始めてみようかなー。
とりあえず現象を分解して考えてみる
だいぶ脱線したので、話を戻しますと、菌ちゃんの農法や自然農で育って収穫した野菜は腐らずに枯れるという。
そうなんだ!それはいいね、と思いながら受け取っていたが宿題という形で出されると理屈がわからない。
そこでそれぞれの要素を分解して考えてみた。
枯れると腐るを考える
枯れる→外形を保ったまま水分が抜けていく、無臭
腐る→外形は崩れ、内部の組織も腐敗菌により分解され、嫌な臭い
ここでの違いは外形維持・腐敗菌による分解・発生する臭い
大体こんなものだろう。
ここから掘り下げてみる。
外形を維持する要素
外形を維持するのは細胞壁=セルロース
セルロースがしっかりと形成された野菜は外形が崩れにくい→腐りにくい
セルロースの役割
構造の維持
細胞壁の成分: セルロースは植物の細胞壁の主要成分であり、野菜の硬さや形状を保つ役割を果たします。細胞壁がしっかりしていることで、野菜がしおれたり崩れたりしにくくなります。
強度と弾力性: セルロースの繊維は、細胞間をつなぎ合わせ、全体の強度と弾力性を提供します。これにより、野菜が物理的なダメージに強くなり、長期間形状を維持できます。
水分保持
細胞膨圧の維持: セルロースは細胞の膨圧(ターゴル圧)を維持するのに役立ちます。膨圧が保たれることで、細胞がしっかりと膨らみ、野菜全体の形が保持されます。
保水能力: セルロースは水分を吸収し、保持する能力が高いため、野菜がみずみずしさを保ちます。これにより、乾燥してしおれるのを防ぎます。
腐敗菌による分解を防ぐ要素
同じ環境であれば腐敗菌の量は一緒。違いが出るのは、
腐敗菌に対する抵抗力が強い→枯れる
腐敗菌に対する抵抗力が弱い→腐る
1. 物理的なバリア
セルロース: 前述の通り、セルロースは細胞壁の主要成分であり、物理的なバリアとして機能します。細胞壁がしっかりしていることで、腐敗菌の侵入を防ぎます。
カットの防止: 野菜を傷つけずに保存することで、細胞壁が破壊されず、腐敗菌が侵入しにくくなります。
2. 化学的な防御
フェノール化合物: 野菜にはフェノール類などの抗菌作用を持つ化合物が含まれています。これらの化合物は腐敗菌の増殖を抑える効果があります。
ビタミンC: 抗酸化作用のあるビタミンCも腐敗を遅らせる効果があります。野菜の新鮮さを保つためには、ビタミンCの含有量が重要です。
3. 微生物の共存
有益な微生物: 野菜の表面には有益な微生物が存在し、これが腐敗菌の繁殖を抑えることがあります。例えば、乳酸菌などが腐敗菌の増殖を競合的に抑制します。
腐敗臭の要素
基本的な臭いの要素はタンパク質が腐敗菌によって分解されることで、
アンモニアと硫化水素が発生することが悪臭のもとになっていると考えられる
1. アミン類
トリメチルアミン: 特に魚介類の腐敗で知られる物質ですが、野菜の腐敗でも発生することがあります。強いアンモニア臭を持ちます。
プトレシン: タンパク質の分解によって生成される腐敗アミンで、悪臭の原因となります。
カダベリン: プトレシンと同様に、タンパク質の分解産物で強い悪臭を放ちます。
2. 硫化水素化合物
硫化水素: 腐った卵のような臭いを持つ物質で、野菜の中でも特にキャベツやブロッコリーなどのアブラナ科の野菜が腐るときに発生します。
メチルメルカプタン: 硫黄化合物で、強い腐敗臭を発します。キャベツや玉ねぎが腐る際に特によく発生します。
枯れる野菜を作るには
枯れる野菜を作るには
・強い細胞壁=セルロースが形成されている
・有用菌(抗腐敗菌)を多く保持している
・過剰なタンパク質を含まない
この条件を満たすには
1. 適切な栄養素
窒素(N): 植物の全体的な成長を促進し、タンパク質の合成に必要です。窒素は葉や茎の成長を助け、セルロースの生成にも関与します。
リン(P): エネルギーの移動を助け、根の発育と細胞分裂を促進します。リンは細胞のエネルギー供給を確保し、セルロースの合成に必要なATPの生成をサポートします。
カリウム(K): 水分と栄養素の移動を助け、細胞壁の厚さを増強します。カリウムは酵素活性を高め、セルロースの合成を促進します。
カルシウム(Ca): 細胞壁の構造を強化し、細胞間の接着を助けます。カルシウムはペクチンと結びついて細胞壁の安定性を高めます。
マグネシウム(Mg): 葉緑素の中心成分であり、光合成を助けます。光合成で生成されたエネルギーはセルロースの合成に使われます。
が必要だが、現代の農業では窒素・リン・カリウムが過剰に供給されており、逆に野菜の弱体化が起こっている
2. 適切な水分管理
3. 光合成
4. 健康な土壌
有機物の補給: 有機物は、土壌の構造を改善し、栄養素の供給を安定させます。
土壌のpH: 適切なpH(通常6.0〜7.0)は栄養素の利用効率を高め、細胞壁の成長を助けます。
5. 微生物の活動
根圏微生物: 根圏に存在する有益な微生物は栄養素の分解と供給を助け、植物の成長を促進します。これにより、セルロースの生成に必要な栄養素が供給されます。
⇒セルロースの生成だけでなく、抗腐敗菌としても有用な微生物が多くいることが必要
6. ストレス管理
病害虫の防除: 病害虫から植物を守ることで、植物が健康に成長し、強い細胞壁を形成することができます。
⇒強いセルロースが形成されると害虫は消化できるものではないと諦めて食べなくなる=虫に強くなる
適切な温度管理: 極端な温度(高温や低温)は植物の成長を妨げます。適切な温度範囲を維持することで、セルロースの合成が最適化されます。
⇒いろいろな栽培管理方法・経営方針があるし、その恩恵を受けて現代の生活は成り立っているが、基本は季節にあった旬の食べ物、地産地消を意識すると無駄なエネルギーが必要なくなる
全てはバランス、バランスは微生物に
育てる野菜によって、必要な成分は異なる。
それぞれの野菜に最適な状態を作って枯れる野菜を作れないではないかと思ってしまうが、それはそれぞれの野菜自身が最低限必要な分を吸収できる環境であればいいと思う。
おそらく野菜は生存に必要最低限は頑張って吸収しようとするのだと思う。
ただ、過剰に供給された場合には際限なく吸ってしまうのではないか。
そう仮定すると与えすぎず、バランスよく吸収できる環境、土壌を整えてあげることが必要なのだと思う。
それは人間のできる技なのだろうか!?
研究室レベルであればできると思うが、広大な面積の圃場ではどうだろうか。
そこで鍵となるのが微生物の存在だと思う。
微生物は土壌の有機物を分解して、窒素・リン・カリウムなどを作り出します。
人為的に作られた肥料・堆肥はその仮定を飛ばして、土壌中の栄養素を増やすことができるため、適切な量だけを入れれば、適切な環境を作ることができる。
しかし、人間にその適切な量を判断するのが難しいのではないか。
そこで有機物を直接土壌に入れることによって、微生物に分解して栄養素を生成してもらいつつバランスを取ってもらうしかないのかもしれない。
それで栄養素が足りなければ小さい野菜が育つ。
でもきっとその小さい野菜でも人為的に肥大された野菜より体にいいのでは?と思う。
最近の研究では人間の身体や脳でさえも腸内の細菌のしもべらしい。
野菜も人間も菌とうまく付き合っていくのがベストなんだと思う。
そういえば、日本人は古来からそうやって生きてきたはず。
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