最近の記事

論告・弁論別期日作戦について

とある地裁のとある支部で否認の刑事弁護を抱えており、論告弁論期日を定める際に、当職から論告と弁論を別期日にしてほしいと申し出たが、検察官が明示的に反対の意見を表明し、裁判官もかなり乗り気でなかったのだが、当職が頑なに論告・弁論別期日を主張して別期日を設定することに成功した。 今回は論告・弁論別期日作戦の実行に対して割と反対があったことから、現時点での考えを整理するものである。 まず論告・弁論とは何か。刑事裁判は、検察官が被告人が犯罪をしたという証拠を出す、弁護士が何かしら証

    • 納得のいかない反対質問

       この度、あまり納得のいかないことがあったので、後学のため色々整理したい。  前提となる事実は以下のとおりである。  当職が弁護人を務める否認の公判事件における被告人質問で、検察官が「***」について誘導尋問形式の反対質問を行った。  その「***」に関する証拠は、弁護人に対して一切開示されていなかった。  弁護人は、「***」に関する質問は未開示証拠に基づく質問であることを理由として異議を申し立てた。  裁判所は、検察官に対して、開示の有無を尋ねた。  検察官は、開示し

      • ニューヨーク振り返り

        1 本記事の目的  旅行をすると、また行きたいと思う場所ともう行かなくていいかなと思う場所があるものである。今回、ゴールデンウィークに合わせたたった5日の休みを利用してニューヨークを訪問したが、ニューヨークはまた行きたいと思える場所であった。また行きたいと思う以上、今回の旅行で色々と反省した点を整理し、次回ニューヨークに行く時に同じ轍を踏まないように旅行記を記す次第である。  本記事は、自分が反省した内容をまとめて次回に活かすことを目的としたものである。したがって面白いこ

        • 「舟を編む」を読んで

          タイトルの通りである。「舟を編む」を読んだ。 元々、それなりに読書をする方だと思うが、私が読む本は大体は生物の本か歴史の本である。最近読んで面白かったのはかなり古い本だが「ゾウの時間ネズミの時間」である。この本はとても面白い。弁護士だが法律の本はそこまでたくさん読まない。仕事で法律を扱うのだから趣味の読書くらい純粋に知識や教養、いやもっと平凡に仕事と全然関係ない分野について「へーそーなんだ」という呆気ないながらも楽しい感想を得たい。 ただ小説は滅多に読まない。上記の生物や歴

          令和6年度、最高裁人事予想

          第1 令和6年に定年を迎える主要ポストの整理(日付順) 1月31日  宮崎 大阪地裁所長 8月11日  戸倉 最高裁長官 9月2日   深山 最高裁判事 9月10日  中里 福岡高裁長官 第2 人事予想 1 戸倉最高裁長官の後任となる最高裁長官 (1)候補の分析 事務総長経験者の今崎氏が最高裁長官の最有力候補ですが、 仮に今崎氏が最高裁長官になると、 大谷氏、戸倉氏、今崎氏と3人連続で刑事系の最高裁長官が誕生することになります。従来、刑事系の長官がそこまで連続したことはあり

          令和6年度、最高裁人事予想

          岐阜地裁に新しい風

          今年に入ってから岐阜地裁での準抗告認容事例が続いている(とはいえ3件)なので、少し振り返ろうと思う。 裁判所によって、準抗告(というかその手前の勾留段階)で弁護人の主張の通りやすさの高低は間違いなくある。 去年までの実績を踏まえた当職の感触として 名古屋地裁本庁、名古屋地裁半田支部は勾留請求却下を得やすい 名古屋地裁一宮支部はたまに勾留請求却下できる 名古屋地裁岡崎支部、岐阜地裁本庁は検察庁の支部ではないか という感じであった。 もちろん自分の実力の足りなさを棚に上げて、裁

          岐阜地裁に新しい風

          弁護士に向いている人とは

          ひょんなことから、どのような勉強をして司法試験に合格したのか話すことになった。しかし、当職のことを前々から知っている人なら解ると思うが、この手の話は当職に向いていない。 なぜなら当職は、法学部にも通わず、ローにも通わず、予備校にも通わず、本当、独学で予備試験と司法試験に合格したというあまりにも稀有な経歴だからである。このようなことを誇っても仕方ないので誇るつもりもないが、当職は司法試験が向いていたのであろう。向いていたから独学で合格できた、他の試験では無理である。そして実務に

          弁護士に向いている人とは

          客観的事実を全く考慮しない溝田泰之裁判官

          先日、名古屋高裁が言い渡した一部無罪判決のうち一部無罪部分が確定した。一部無罪判決は、相応の価値があるため、抽象的ながら報告をする。 複数の犯罪事実で起訴されており、犯罪ごとに争点が異なっているが、一部無罪となった部分については、被告人の犯人性(財産犯)が争点であった。 一審における弁護人当職の主張は、アリバイと客観証拠から伺える現金の流れからして、被告人が犯人とは認め難く、被害者が昔のことだから記憶違いをしているというものである。 客観証拠から伺える現金の流れについては

          客観的事実を全く考慮しない溝田泰之裁判官

          一部とはいえ主文「無罪」をとる

          日本の刑事裁判における有罪率は99.9%という。 自分で統計をとったことはないので、正確なことは知らないが、これだけ99.9という数字が出回るということは実際そうなのだろう。 他方、裁判になっている刑事裁判は概ね認め事件、要はよほど特段の事情がない限り有罪になる事件であるから、99.9%有罪になるのは、然もありなんというところである。仮に否認事件だけピックアップして無罪率を計算すればもっと無罪率は高いだろう。 さて、今回、名古屋高裁において、一部無罪判決を獲得した。 統計で

          一部とはいえ主文「無罪」をとる

          証拠収集の必要性

          色々と学んだことがある。 私は当時弁護士でなかったので聞いた話にすぎないが、 一部界隈では、一時期の名古屋高裁刑事部は「地獄の名古屋高裁」「下には下がいる」などと言っていたようである。 最近でこそメンバーが入れ替わって無罪もでるようになったが、そのような「地獄の名古屋高裁」が上にいる状態で管内地裁は無罪を書く勇気を欠いてしまうのではないかと心配になる。 そしてその心配が現実になったようだ。 当職の前に「下には下がいる。いや斜め下にはより鋭角がいる。」という裁判官が現れてしま

          証拠収集の必要性

          勾留請求却下を得る(準抗告判断待ち)

          勾留請求却下を得たというものである。 当職にとって、勾留請求却下を得ることは珍しくない。ちゃんと数えてはいないが、去年でも両手では数えられないくらい、今年も片手では数えられないくらいには勾留請求却下(さらにその後の検察官の準抗告棄却)を得ているはずである。 今年末にでも一度、勾留請求却下件数と却下率を計算してみようと思う。 さて、逮捕には時間制限がある。 名古屋では実務上48時間、東京や大阪では実務上72時間しか逮捕できないと言って、「実際上の」差し支えはないと思われる。

          勾留請求却下を得る(準抗告判断待ち)

          カレーの偉大さ(彼女いない人の料理)

          まず最初に述べておくが、法律の話は一切しない。カレーの話である。 最近の当職は、毎週土曜日か日曜日にカレーを作っている。ただのカレーではない。 肉や魚を使わない(使うとしても牛乳など乳製品)ベジタリアンなカレーである。 元々このようなカレーを作ろうと思ったきっかけは次のとおりである。 1 ベジタリアンに興味を持った 当職は、命をいただいて肉や魚を食べることに何の抵抗感もないが、野菜や乳製品だけで満足できる食事をするという考え方に興味を持った。決して非殺生という考え方に興味

          カレーの偉大さ(彼女いない人の料理)

          丼勘定で勾留延長する裁判官ら

          さて、本日、当職が担当している被疑者が再逮捕なく処分保留釈放された。それは喜ばしいものの、なんとも苦言を呈したいことがある。勾留延長の裁判である。 処分保留釈放であり、詳細を述べることはできないが、守秘義務はじめ色々問題にならない範囲で本件の経過は次のようなものである。 1 被疑者は、事件Aで逮捕・勾留された。否認事件である。 2 被疑者は、事件Aを基本事件として勾留延長された。 3 当職は、2の勾留期間延長の裁判に対して、原決定は被疑者が犯行を否認していることをもって丼勘

          丼勘定で勾留延長する裁判官ら