ss ドットスカート
急行車両を降りると、目の前に緑に白いドットの丈が短めのキャミスカートを履いた女の子が歩いている。
今年ももうそんな季節になったのかと感じるには、もってこいの材料だ。
少しひんやりして、昼間の賑わいが嘘のように静かな夜の海で、僕達は何時間も話した。
2人して砂浜に座りながら、数年間の精算とも呼べるような話をゆっくりと話した。
別に何が悪かった訳じゃない。ただ空白が多くなると、どうしても溝ができて、埋めることが出来なかった僕たちの弱さが起因していたのだろう。
目を逸らして話していた僕と紗夜は、少しずつお互いの間にあった溝に砂を埋め、ようやく溝に立てる程度の話を積もらせ、クスッと笑いあってみたけど、どうしても以前のようには上手くいかない。
少しすると僕も紗夜も会話が止まり、静かな夜には波の音だけが聞こえた。
すると急に沙耶が立ち上がり、ドット柄のスカートに付いた砂を払い、僕に手を差し伸ばした。
手を握り、立ち上がると紗夜は少し悲しげな表情で、「今年は花火、やっぱり2人では見れそうにないかな。」と言った。
そうだね。と短く紗夜に告げると、紗夜は小さくニコッと微笑み、僕の方を向いた。
身体を近づけ、僕の顔に紗夜は背伸びしながらゆっくりと近づける。
そっか。最後に…。と思い、僕は目を瞑った。
少しして、紗夜に触れようとしたら、体温が感じられなかった。
恐る恐る目を開けると、そこにはもう紗夜はおらず、紗夜の甘い残り香と、長く続いた足跡だけが残されていた。
不意に思い出した記憶に、胸が苦しくなり、ため息を着く。
あれから連絡は一切取っていない。
紗夜は全てを一新し、僕の知らない紗夜になろうとしたのか、僕の知りうる紗夜の全ての情報は意味を持たないものとなるように、紗夜は全てを削除した。僕からの連絡も届かないように。
改札を出ると、少し前を歩いていたドット柄のスカートを履いた女性から、あの日の甘い香りがした。
僕の中の思い出が、鮮明に蘇る。