2023年、人生最大の作品を作った
我が家は北海道北十勝にある築67年の古民家で(解体される一ヶ月前に偶然前を通りかかって何やらあって持ち主から受け継いだもので)ある。
67年と言っても敷地内の別の場所にあったものを移設・改築してからの年数であり、最初の状態から数えると80〜90年以上と推測される。柱に戦前の新聞が残っていたことは前編で書いたが、その後さらに調べたところ、その一部が96年前(1928年)のものである可能性が高いことがわかった。もちろんイコール築年数にはならないが、またこれは別途調査したい(※1)。複数の建築関係者によると開拓時代の本州の家づくりの影響が色濃く残っているとのことである。
いずれにしても非常に古い家であるため其処彼処にガタが来ている。特に日の当たらない北側は柱の根元や壁の内部が腐り落ちていたり損傷が激しく、「放っておくと長く住めない」ということで、業者さんにこれら基礎的な部分の修繕はしてもらった。が、そこから先は無謀にもDIYでやることにした。一番奥のこの↓部屋をウォークインクローゼットに改造するという一大プロジェクトである。
いきなり結果からだが、ビフォアアフターはこんな感じ。
ただし自分がやったのは↓この状態から。
とは言え自分的には過去最大級の案件。これまで制作してきたものの多くはUSBメモリに入る程度、大きいものでもぬいぐるみくらいだったから比較にならない規模である(後述)。この部屋は北風や湿気の影響を受けやすい場所にあり、冬は屋根から落ちた雪や氷柱が堆く積み重なって壁に倒れかかってくるなど、家中で一番崩壊が進みやすい状況下にあった。ネズミらがかじった跡も何ヶ所かある。
これらを修繕していくわけだが、一番厄介なのは家自体が歪んでいることである。部屋のどこを計測しても何cmもズレがあるため、床板や壁材も長方形に張ればいいわけでない。また氷点下25℃の低温に耐えられるよう断熱材も施工しなければならないし、件の「戦前の新聞記事の保存」のミッションもある。駆け出しでいきなりオーケストラを書かされた時くらいの挑戦だったと言えなくもない。
しかしDIYには「費用が安くて済む」「自分好みにできる」などの利点がある。床板や角材、合板、断熱材など購入したが、別の部屋の余剰資材を転用したり、廃材を再利用したことで総制作費は5万円ほどで収まった(※2)。業者に頼むと理想と違う結果になっても費用は発生するし、音楽制作時のような費用対効果とか色々気を遣わなくていいのもいい。
またこの家は広大な農地の真ん中にぽつんと立っているので、爆音で作業しても材木等を散乱させても隣近所に迷惑がかかることはない。むしろ周囲の大型トラクター等の走行音・作業音を考えれば全然静かな方であり、この気楽さも非常に大きい。通りがかる農家の人も宅配の人もお巡りさんもいつも笑顔でホッとする。
それではまず押し入れの中段を取り外すところから。
次は部屋本体に床板を張る作業。面積は6畳(旧押し入れ部を含めると7畳半)。安くて丈夫で人気のカフェ板を使用。
さらに衣類を均等に照らす間接照明のテープライトを付けたり、下段用のハンガーやキャビネットなどを持ってきたりなんや色々やった。めっちゃしまえる、めっちゃ入る。この一週間後、生まれて初めてギックリ腰をやった。「やった」言うてるのに知り合いが「大丈夫ですか〜」とやってきたので這って出迎えたりもした。
「人生最『大』の作品」と題して最初はボケたつもりだったが、振り返ると決してボケとは言い切れないのではと感じている。目の前に自分の倍くらいの年齢の素材が多数現役で佇んでいるわけで、それらにどういった価値があるか考え調べはじめると「とりあえずぶっ壊して新しくする」という行為が畏れ多くて簡単には出来なくなっていく。そうなるともう郷土史や地質的なものまで広がり繋がっていき、調べきれない場合は当然「保存」に務める。リアルで壮大な歴史探訪の主役を買って出たような振る舞いに感じ、「大きなものに手を着けている」感がアレするのである。
材料費ざっくり
・OSB合板(7枚)…約8千円+0円(余っていたもの)
・1×4材、2×4材(数本)…約2千円
・床材(カフェ板6畳分)…約2万円+0円(余っていたもの)
・スタイロフォーム…約1万円+廃材
・床下用断熱シート…0円(廃棄されたものを再利用)
・断熱シート固定テープ…0円(その辺に転がっていたもの)
・つっぱり棒と受け金具…約3千円
・旧押し入れ部分のフローリング(1.5畳分)…0円(もらいもの)
・旧押し入れ部分の天板(1.5畳分)…0円(ふすまの合板を再利用)
・巾木…0円(ふすまの框の再利用)
・突っ張り棒の梁、固定器具…0円(ふすまの框を再利用)
・木ネジ…0円(大量に買ってあったもの)
・塗料…約2千円+0円(余っていたもの)
工具一覧
・電動丸ノコ…主戦力としてOSB合板やワンバイらを次々と切断
・インパクトドライバー…なくてはならない存在
・オービットサンダー…今回は出番少な
・直尺…ザッと測って線も引けて頼もしい存在
・スコヤ…機動性が高い
・巻尺…やはり不可欠
・バール…どんな古釘も抜いてしまう(古すぎると釘頭がもげる)
・金槌…どうしても抜けない古釘を逆に深く打ち込んで無かったことするのに活躍
・カッターナイフ…スタイロフォームをカット
・油性ペン…線を引く
・鉛筆…線を引く
・刷毛…塗料を塗る
・防塵マスク…粉塵が凄いので専用のを使用
・防塵グラス…粉塵が凄いのでしっかりしたヤツを購入
・作業着…汗だく
・軍手…ほんの少しの作業でもつける癖をつけた方がいい
これで全6部屋中5部屋の床ができた。しかし床ばかりでまだまだこれからだし、農業倉庫や庭もある。その上、仕事やIMERUATもあるし、CLIP STUDIOなど新しい趣味も増やしてしまっている。柱や壁、腰など新たにガタがくるところもあるだろうし、今生ではちょっと間に合わないんじゃないかという気もしている。
お終いに
こんなことをやっているうちに、いつしか材木や廃材を見ると興奮するようになってしまい、コメリパワーPRO(資材・工具専門のホームセンター)に放置されても2時間くらいは潰せるくらいになった。
全く知らない世界というのはゼロからのスタート同然なので、入ってくるものが自分比で大きいし新鮮なので本当に楽しい。DIYやデッサンを始めて改めて「物作りの工程」というものを学んだわけだが、それがこの歳になって仕事(作曲)にも大きな効率化&自由化を与えたりもするので「脇道に逸れないわけにはいかない」とまた思ってしまうのであった。
※1 紙面に「よこねは切らずにこうしてなをす」という一文があり、1928年3月23日、30日、4月8日、15日、25日、5月9日、16日、23日、6月8日、の満州日報に全く同じ字体の広告をという文章で始まる梅毒治療薬の広告をスタンフォード大学のオンライン資料に見つけた。
※2 余っていた材木や廃材を使わずに全部新規で買うと総計7万くらいはします。
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。