「どんな機材を使ってるの?」の話
下書き途中のを予約投稿してしまいました。そんな感じの内容です。
SNSの全く関係ないエントリに突然「どんな機材を使ってるか教えて!」って来る話。アレはなかなかちょっと難儀である。なにがって「企業秘密なのに」とか「そんなのタダで訊きやがって」とかそういうところじゃない。
回答がイエスノーならまだいい。「楽譜作成ソフトは使ってますか?」「はい」で済む。しかし「どんなシンセ使ってるんですか」みたいなことを訊かれると結構面倒なことになってくる。これはいつも使ってるかな、こういうときにはこっちか、あーこれほとんど使ってないけどあの曲では目立ってたな、待てよこれ何て名前のソフトだっけ?えーと…と「考えなきゃいけない」のである。いや、イエスノーでも困ることはある。「あの曲の何分何秒のところで鳴ってる音は何のシンセですか?」と言われても、膨大なプリセットがあるのに名前までいちいち覚えてないし、エディットしてしまってるかもしれない。
また「よく使ってるやつだけでいいです」というのも難しい。例えばしょっちゅうベニテングタケを料理していたとして、「ベニテングタケです」とだけ教えるわけにはいかない。毒の抜き方は教えておかないとヤバい。毒抜きで使っている特殊な道具のことも言っておかないと…などと発展する。喩えるには大袈裟だが、そんな感じのことはある。
もっと説明しよう。
【何使ってたっけ…うーん思い出せん…デジパ立ち上げて見るのが早いか。…。そういや俺、サイン波よく使うかもな。サイン波だったら音源なんか何使ったっていいっちゃいいし。ああ…こんなのもあるか。こないだ娘にこっち使ってるけどと言われたやつ、俺全然使ってなかったなぁ。こんど試してみるか。いや、そんなことより。とりあえずざっくりでいいか。あれ、なんか味気ないラインナップになるな。「浜渦さんこんなに偏ってんの?」って思われるやん。それ以前にこれ、ホントに「よく使ってる」んかな。つか何悩んでんの俺?そこまで教える必要ないやん。あれ、待てよ。こっちのこれ、いつも使ってるやん!肝心なのわっせとった。これはいいと思いますよ。古いけど。最近の知らんけど。この音源、こう使ったら…いや…質問者はこんな感じで使えるかしら…?だいだい音源揃えたからいい曲書けるってわけではないからな。いや、それはかまへん。そんなことより。…えーと……………この音源、何やったっけ?名前が出てこない。しょっちゅう使ってるのに?ヤバイなぁ…歳とった…いや、歳関係なくこういうのあるか。そういやこないだAfter Effectsの作業やってたとき、VFXのプロの人とプラグインについてやりとりしてて、結構有名なはずのプラグインなのに俺が幾ら説明しても「知らないですね」と言うんよ。こっち素人だから、ああ俺がクズソフトを有名と思い込んでしまったんかな、どこかのサイトのレビューを鵜呑みにしてしまったか。恥ずかしい!…と思ってたら、実はその人いつもそれフツーに使いまくってて正式な名前が盲点みたいになってた…なんてことがあったなぁ。それにしても楽しいよな、音楽以外のクリエイトでやりとりするのって。新鮮というか。…そう。だから「よく使ってるソフト」やがな!もう随分時間経ってるぞ。まぁでもこういうコロコロ話題が飛んで行くからこそ創れるものってあるわけで。そういうのも大事だし、せっかくこんなに考えたから添えて伝えたいな。いやだからなんでそこまで気ぃ遣わなアカンねん!…元イ、えっと、そうそう、こいつは外せないサンプラーだった。これを忘れるなんて。でも待てよ、サンプラーの名前だけ言ったって意味ないな。中に何を詰めてるか言わないとただの空き箱紹介することになるし、「それは私も使ってる。知りたいのはその中で使ってる音源」と言われた日にはキーッなるし。はぁ、1回の返信で済まさんとキャッチボールが始まって収集付かなくなる。…って、だからなんでそこまで考えなアカンねん。このままやったら回答始めたら最後、根掘り葉掘りやられてしまう。反応せんのが一番か。】
アホなのでこういうループに陥ってしまうのだ。
また、つい回答してしまったために、「ありがとうございます。ではこれは?」に繋がり、「僕のを聴いて下さい」「ダウンロードして下さい」に繋がり、「感想を聞かせて下さい」に繋がったことがあった。しかも英語。半日仕事じゃん、と。
あとこれもある。「畏れおおくてとてもそんなこと訊けない!」と愚生ごときに遠慮しすぎてとにかく遠巻きに見ようとしていただいて、そこが一つの「島」だったとしたら愚生のいるところから一番遠い岬にまで移動するくらい距離を取り、ちょっとの弾みで絶壁から落ちるんじゃないかくらいの場所で、一所懸命ggrまくってる奥ゆかしい人が損をしておられるって考えたら、「押しの強い人が訊ける」じゃアンバランスじゃないか、というやつ。
そして、そもそも「機材教えて」ってこっちが教えて欲しいくらいやねんけど?というのも。「仕事ないですか?作曲家志望です。手伝わせて下さい!」というのと似ている。場末の買い取り作曲家にそれ言うかね?半年先も生きてられるか分からん人間が人にエラソーに伝授している場合じゃない。ヒマならヒマで少しでも自主制作に時間を割かにゃあならん。
ということでスルーさせていただくようになったわけであります。
しかし!
最近ちょっと考えが変わってきた。自分の河岸がどんどん変わってきたこと、愚生ごときを目標にしてプロになりはじめている人が出てきたことに気づかされ責任を感じてきたことたこと、そして「飽き」がかなり来ていること。状況が変わってきたのだ。これだけエラそうなこと書いてきておいて、むしろ伝えられるものは伝えていきたいと思うようになってきたのである。大したものは持ち合わせていないが、嘘偽りの多い世界で生きてきた分、せめて、例えば「そう、あれは皆さんの疑念通り、そうなんですよ。音楽をやっている人なら『あれは本当にその人がそこまでやったのか?』というのは滅茶苦茶気になるでしょう。そうなんです。一人であそこまで楽曲のキャラクターが突如変わるのは不自然ですよね。色んな人の力を借りている事実は色んなところにあるし、投げていることもある。だから皆さんには変な劣等感など持たず、自信を持って創作に取り組んで貰いたい」とお伝えしたりしたいし、しなきゃならんと思うようになったのである。センセーショナリズムや反知性主義が国家を蝕んでいる時代に、「まぁまぁそれはそれで放っておいて、浜渦さんは浜渦さんで頑張ればいいじゃないですか」と自分に言い聞かせてるようでは、まさに反知性主義の完全なるお仲間になってしまう。
ということで、モノムジーク大学にてお目にかかりましょう。いつになるんだろうなぁ。
【おまけ】スタジオ大公開!
タイトル画面の写真は来年春先に引き払う予定の自宅スタジオ。右側のモニタが映像、画像制作用、左側が音楽用。窓の外はフクロウやオオタカが生息する他人の森。窓の外が真っピンクになるほどハデに咲く桜「カンザン」が数本並んでおり、センダン、ハリエンジュも見える。小さく赤く咲いて見えるのは椿。煌々と輝いているクマのランプは大好きなLINEキャラのブラウンランプでMinaにもらったもの。ブラウンランプの奥に並んでいる本は山本直樹著「レッド」。ブラウンランプの前にある黒い物体はTECSUNのBCLラジオ「PL-660」。ブラウンランプの右側に立てかけている冊子は自作の「IMERUATパンフレット 2012」。その上に貼ってあるA4の紙はMacのアプリがグルグルになったときのTerminalの対処法を書いたもの。その上の壁に掛かっている太鼓はどこかの少数民族か何かのものだが詳細不明。左の壁に貼ってあるポスターは自作の「フライングイメるん」。写真右端の窓の前に置いてあるのは網走の民芸店で買った人形。左側のモニタはスイスのバーゼルで購入したフィリップス社製(当時はまだフィリップスは日本でモニタの展開はしていなかった)で、右側のも今年購入したフィリップス製。右側モニタのマウスの奥にあるのは窓の外の野鳥を見るために購入したオリンパスの双眼鏡。右側のモニタの前のペンタブはwacomの「Intuos Pro」。鍵盤は10年使っている……なんだっけ、ほらぁ!調べなきゃなんないじゃん!