新規事業がデフレ状態なら、対応策が思いつく
はじめに
昨今、日本の企業からイノベーションや新規事業が生まれないという課題がある。企業の研究職として勤務しているために、どうやって研究を事業に結びつけることができるのか?解決策はないのか?日々悶々としている。そんな中最近、日本のデフレ政策について説明した動画を見ていたら、ふと、『イノベーション・新規事業もデフレ状態』なのでは?という仮説に行きついた。その備忘録として残しておく。
前提_経済におけるデフレとインフレ
日本のデフレ対策について、表で分かりやすく説明しているのが、以下である。元出典は、以下の動画である
【第3回】「ネオリベ vs ケインジアン」の壁(中野剛志 × 森永康平) - YouTube
曰く、日本はご存じの通り、デフレである。デフレの時の対策は、需要を刺激して、供給を抑制し、インフレの方向へ誘導することである。
需要刺激:需要刺激には、金融を緩和して、積極財政、減税の施策が有効。
供給抑制:規制強化、グローバル化の抑制
以上マクロな視点での対策について述べた。しかしここにきて、ミクロな視点すなわち、労働者側からの視点で考えると違和感を覚える。近年の風潮は、日本は生産性が低いからダメだから、労働市場が流動化しないからダメだなどと言われており、それは表を見る限り、デフレ対策ではなく、インフレ対策そのものである。これはマクロとミクロの視点の差異が原因だと考えられる。つまり、マクロな視点からは、デフレとは栄養失調状態なので、社員は飯食って寝て元気になれと言っているのだ。しかし、ミクロな視点に立ってみると、生産性は高い方が、転職してキャリアを積まないとが、競争に負けると考えてしまい、とても飯食って寝ている状況ではないのである。ここに、頭では、デフレ対策が分かっちゃいるけど、体が勝手に動いてしまうと、動画でも解説されている。いずれにしろ、マクロ的視点では、社員は休む方がいいとは、興味深い視座である。
新規事業におけるデフレと対策
昨今の企業におけるイノベーション・新規事業が生まれない問題も、もしかしたらデフレ状態なのでは?もしそのアナロジーが成り立つなら有効な対策が考えられるのでは?と考えた。まず、事業におけるインフレとデフレについて考えてみたい。
事業における需要とは、すなわちニーズや課題である。また事業における供給とは、すなわち、技術やサービスである。つまり、ニーズ・課題が多い状態は、技術・サービスの供給が追い付かず、インフレ状態となる。日本で考えるとまさに、高度成長期にあたるのではないだろうか?欧米の生活にあこがれ、様々なニーズや課題があったことから、日本の技術・サービス向上させることでどんどん便利になっていた。その後、先進国の一員となった日本は一億総中流という状態を手に入れ、ニーズや課題が希少となっていた。磨き上げた技術とサービスは健在なので、ここで、供給過多の状態に陥りこれが、事業のデフレであると仮定する。ニュータイプの時代 の著者山口周さんも、現代が問題と解決策とが逆転していることを述べている。以下、新規事業のデフレについて定義した。
デフレでの需要対策は、積極財政と減税である。積極財政とは、政府自身が需要を生み出す消費者となること、減税とは、使う原資を消費者に返すことだと理解した。そこで、新規事業における需要とは、対応すべき課題である。積極財政とは、企業自身が需要を生み出すこと、つまり経営陣が先陣を切って、事業分野を決めることと考えた。また、課題の発見するための刺激として、テーマの承認ハードルを下げることも、同時に考察してみた。さらに、企業での従業員が有する原資とは、時間なので、減税とはすなわち、労働時間の低減、最近の施策では、15%ルールの適応や週休3日制などが該当するかもしれない。
続いて、供給対策としては、競争の抑制がメインなので、他社との競争、という観点を入れて、自社技術の見直しや他社との協業という点を考えてみた。ワードとしては、ケイパビリティ、オープンイノベーション戦略であろうか?
改めて、対策を見直すと、いずれも現在実施している/し始めたものが目立つ(もちろん、実施していることと、充足していることは別なので、さらなる工夫は必要)。唯一、足りない点を述べると、経営陣からの具体的な事業領域の選定はもっとあって然るべきではないだろうか?もちろん経営陣は、環境や脱炭素というあるべき姿の選定は重要である。一方、それで課題が明確にならないのであれば、一段対象製品にまでブレイクダウンすることで、従業員からの新たな技術課題が発見し、新しい技術が育っていくのではないか?
まとめ
以上、新規事業が中々生み出せない現状と日本の長きに渡るデフレ状態とを比較して、今後の企業における新規事業のための対策について考えてみた。もちろん、これが正しいといいたいわけではなく、今後の対策のヒントとして役立てられれば幸いである。