ベトナム国際私法規定について(2017年12月25日追記)
追記:以下の投稿の後、ベトナムでは新法が2017年1月1日から施行されています。
これらについては
①戸籍時報762号43頁以下(「新しいベトナム国際私法・邦訳と解説(上)ー「婚姻及び家族に関する法律」及び「民法典」中の国際私法規定ー(笠原俊弘))
② http://www.noandt.com/data/book/index/id/16232/
「ベトナム:改正民法下の契約準拠法の合意」カオ・ミン・ティ
③ http://www.ccsenet.org/journal/index.php/jpl/article/viewFile/58708/32310
が参考になります。
(ロー生、修習生向け)
ベトナムは文字がアルファベットではなく、なかなか書籍も探すことが出来なかったのですが、日本の法整備支援の成果により、かなりの主要な法につき和訳があります。
また、メイドインジャパンの立法もみられるところです(しかし相続規定では相続分や分割につき、規定がどうなっているのか謎の部分があります。現地と日本との間での苦労が窺えます。)。
これは浜松支部の若手弁護士向けの勉強会でも紹介していますが、法務省のサイトは外国法調査にはマストです。これはベトナムに限ったことではありません(なお、外務省ではハーグ条約加盟国の監護(民法等)法制の和訳が充実しています。)http://www.moj.go.jp/housouken/houso_houkoku_vietnam.html
さらに、昨今ベトナムの国際私法につき、ヨーロッパ(ドイツ等)の視点から書かれた概説書も発売されました(Thi Hong Trinh Nguen(2016) Private international law in vietnam, Mohr Siebeck)。そこで、簡単に同国の国際私法規定について概観したいと思います。
1 総論
ベトナムの国際私法規定は、各国内法や条約によります。日本における法の適用に関する通則法のような統一的な立法はなされていない状況です(これは、南米諸国(アルゼンチン、ペルー)等と沿革は異なれど似たような状況です。なお、上記書籍には、統一法規制定という明確な方針はないと記されています①。
大まかに言うと、規定だけについていえば
(1)条約
(2)2004年民事訴訟法(2012年改正、ただし国際私法規定は主たる改正なし)
(3)2005年民法(なお、改正法が来年施行)
(4)2000年婚姻家族法(2015年改正)
(5)その他個別法(2005年商法、2010年国籍法、1994年労働法、2005年判決執行法等…①)
に国際私法規定が存在するということになります。なお、国際慣習も法源であり、また、2012年以降は、判例も事実上の法源として裁判所における解釈利用されています(判例の規則化、補完化)
2 条約
民法2条3項及び759条2条において批准した国際条約が国内法に対して優先して適用されます。民事訴訟手続きについても同様です(民訴法2条3項)
3 民法
1995年の民法典には13条しかなかった国際私法規定が、20に増えています(③)。
民法第7編(760-777条)に規定があり、無国籍者及び重国籍者の属人法決定、行為能力、失踪関係、法人能力、財産所有権、相続、契約(方式も)等の規定があります。契約に関しては一部ベトナム法の累積的適用の規定があるのが特徴的です(無論、公序の規定もあります。同法759条3項、商法及び商事仲裁法にも規定あり。)
4 婚姻家族法
2000年法においては第11章の100条から106条、2014年法においては、第8章121条から131条にあります。後者施行前に生じた家族関係については前者が適用されます。
この点については、前者の解説になりますが、www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/08-2/hann.pdf
が参考になります(離婚等については大きな改正はありません。)。
5 余談
浜松は祭りがいよいよということで、盛り上がっています。5月6日までは新規の相談を受けることが出来ません。
①Thi Hong Trinh Nguen(2016) Private international law in vietnam, Mohr Siebeck ,17(署名をイタリックにできないのですみません)
②Thi Hong Trinh Nguen,18
③Thi Hong Trinh Nguen, 16-17