夏の日の、溶けかけのアイスとまぐろラーメン

バイト先の先輩に、「まぐろラーメン食べにいかない?」って誘われた。

バイト先の先輩たちが大好きだった。

大学2年の夏から始めた新しいバイトは、学生が多かった。
とくに夜番はほぼ20代、バイト終わりにマックに寄ったり、お気に入りのカレー屋に閉店時間ギリギリに駆け込んだり、夜の公園でババ抜きをしたりしていた。

「明日のバイト上がり、18時でしょ?自転車に乗って、まぐろラーメン食べにいこうよ」

まぐろラーメンが何かはよく分からなかったが、先輩たちとご飯に行くのは楽しかったので一も二もなくOKした。

誘ってきたのはひとつ上の女の先輩、同じ時間に上がりだった9つくらい上の男の先輩も一緒に行くことになった。


当日の出勤直前、汗をかきかき自転車を漕いでいると、男の先輩が駅から歩いてきた。

「自転車、パンクしててさ」

ええーーっ!ドンマイすぎる…。


結局、5駅も先のラーメン屋には歩いていくことになった。
Googleマップでは徒歩1時間半と書かれていた気がしたが、見ないふりをした。

途中のコンビニで、パンク先輩(自転車がパンクしてたから)がアイスを奢ってくれた。

夏だからアイスはすぐ溶けてしまって、道路にアイスをボタボタこぼしながら3人で歩いた。


だいたいしっかり1時間半歩いたあたりで、やっとまぐろラーメンのお店に着いた。

はたして、刺身は上にのっているのか…?




載ってませんでした。

まぐろを煮込んでスープにしたから、まぐろラーメンとよぶらしい。
ラーメン〇郎に行ったことがある人ならわかると思うが、そんな感じの雰囲気のお店だった。

バイトした後に1時間半歩いた体には、染み渡るような美味しさだった。
野菜大嫌いのめちゃくちゃ偏食なパンク先輩までも、もやしまで完食するくらい。


「美味しかったね!」
「まぐろ載ってなかったですね笑」
「いや載ってると思ってたのww」
「いやだって、まぐろラーメンだし…」

大好きな先輩たちと食べた、まぐろラーメン。
世界で1番美味しいラーメンだった。

先輩たちもとっくにバイトを辞め、私も今は新潟にいる。みんなバラバラになった。

でも、あの溶けかけのアイスとまぐろラーメンは、走馬灯に出てきそうなくらいエモい思い出。

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