【結婚のご報告】
結婚式が終わった。
妹夫婦(という言葉並びはまだ耳馴染みなくこそばゆい響きである)は、どうやら入籍は今春に済ませ、もう新婚生活ははじめていたようだ。
そこから半年空けての挙式。
約一年前から決まっていたこの日程は、ことしに入ってから皆さんすでに身をもってご存知のように、この社会情勢では開催自体どうなるものかと、一応兄の立場から案じていた。しかしそれは無用の心配だったようで、第一波・第二波の流行期を経た経験値もある程度あったのだろう、式場サイドの感染対策はバッチリで手際がよかった。
新郎新婦はアクリル板越しの牧師に永遠の愛を誓い、賛美歌は聖歌隊だけしか歌うことを許されず、一様にマスクをつけた参列者たちは黙ってそれを聴いた。
感染対策のためとはいえ、"ハレ"の行事としては正直にいうとあまり見栄えはよろしくなかった部分もあったのだが、こればっかりは仕方がない。ただ、披露宴でのお酌が禁止されたその一点だけは、義理になる相手方親族のテーブルに挨拶がわりのビールを注ぎに向かわなくて済む口実になり、私としては大変よろしかった。
滞りもない進行で万事が終わり(生涯の伴侶となる新郎のもとへとつづく独身最後のレッドカーペットを、ドレス姿の妹はずっと甥っ子の泣き声を聞きながら父と歩むことになったりもしたが、それはご愛嬌だ)、式後の挨拶も手短にして、あとは親と長兄夫婦に任せて(甥っ子に肩車をせがまれ仕方なくそれを済ますと)次男坊はそそくさと退散する。
その勢いのまますぐに電車にとび乗って帰ってもよかったのだが、我が妹から分けてもらったしあわせの余韻をもうしばらくひとりで浸ろうと思い(とキザなことを言ってみる)、時間を何本か遅らせることにした。
でも実際は、ネクタイで締め付けられていた喉を何かでととのえたかった(とも言ってみる)。
駅前のコーヒーショップに入り、そして愛用のMac(もうそろそろ七年目くらいになるのでこっちに買い替えたい)からこの文章をいま打ち込んでいる。
日頃は身につけることのないスーツ姿なので少しビジネスマン風を吹かしたくなるものだ。しかしながら、調子よくキーボードをカタカタ鳴らしていも画面にはいつものくだらないツイートが並んだタイムラインが拡がっているもんだから、なんともうだつの上がらないサラリーマンだ。
とはいっても実際は、先ほどトイレに立ち寄った際の鏡に映った着慣れないフォーマルスーツにじぶんが着せられてる恰好を再確認した時の、私の被害妄想からくるものであったし、周りの人々はそんな私のことなんて気に留めるはずはなく、ただ己のフラペチーノを飲むのにひたすら必死になっているだけである。
先ほどのメインディッシュで供された「特選近江牛サーロインステーキ」に気取るようにして合せた赤ワインのせいで回った酔いも、ブラックコーヒーのおかげですこし覚めてきた。
なので(なのか?)、ここで無粋ながら新婚夫婦に心を込めて渡したご祝儀の中身を、恥ずかしげもなく皆様にご報告申し上げたいとおもう。
思い返すと十年近く前の長兄の成婚の際には、(これはまったく自慢できることでもないのだけれど)一銭たりともくれてやらなかった。しかし、今回は私は三十路もすぎている。独り立ちしている立派なお年頃だ。
「三十にして立つ」。孔子さんもそうおっしゃってた。
兄妹に対するプライドと世間体を気にする社会性と銀行口座の残高くらいは、兄貴のその時より少しくらいは高くなっている。
Twitterでわざわざアンケートを取らずとも、
兄ちゃんはじめから「壱拾萬円」を包むつもりだったからね!!
我ながら太っ腹ではないか。
「義を先にして利を後にす」。孟子さんもそうおっしゃってた。
もし私もその時がくるようなことがあれば、やられたらやり返しの倍返ししてほしいものだ、新郎小童ぁ! ...すまん、言い過ぎた。くれてやるよ。
そういえば偶然にこの「10万円」という金額は、夏になる前に給付されたコロナ経済対策の「特別定額給付金」と同額だったことに気がついた。
日本国民が収めた税金がその原資になっているのだとしたら、日本国民総出で妹の門出を祝って頂いたことになる。
この場をお借りし、妹夫婦に代わりまして国民の皆様に厚く御礼申し上げます。このたびは誠にありがとうございました。
しかしそういうことなら、妹をしあわせにすることができなければ、今度は皆様からたくさんの石が飛んでくるということである。そんなことになれば新郎くん、君はもうお・し・ま・い・DEATH!! ...すまん、縁起でもないことを言ってしまった。妹と共にふたりの人生を生きてくれよ。
---✂---
さて、ここまで読んでくれた方々は私の妹の結婚に関する話ばかりでそろそろ辟易してきたのではないだろうか。
ここらへんで当の私の恋愛経験や結婚観を、いい機会なので語りたいと思う。 ...なに? 興味が…ないっ?! そう言わず少々付き合ってほしい。
ついでなので私が最近ハマっている、そして先日「地雷女」で話題になった「バチェロレッテ」に絡めてお伝えしようではないか。
と思ったのだが、気づいたら終電も近づいてきてしまった。どうやらカクテルパーティ、ではなくコーヒータイムはもう終わりのようだ。
この続きはまたの機会に。
私がファイナルローズを女性にあげる日は果たしてくるだろうか…。
p.s. 最良のパートナーと幸せな家庭を築いていけることを願って、末長くお幸せに。
▼【あわせて読みたい】