1ドル105円から155円にするには、円売り規模は何兆円必要なのか?
為替市場の異常さについて、いくつか書いたが、再度指摘しておきたい。
21年1月のドル円為替は、1ドル約104円程度であった。ここ最近は155円程度をつけているので、約3年で50円の円安(通貨下落w)達成ということである。
円安の理由については、いくらでも「屁理屈」を出せるわけだが、現実の市場ということを考えると、「量的な問題」がクリアされないと論証にはならないと思う。
なので、その面から異常性を指摘しておきたい。
参考としては心もとないが、野田政権時代の「円売り介入」の結果を再掲しておこう。アベノミクス以前の、民主党野田政権時代の話である。当時、ドル円は1ドル80円割れが続き、78円台とかで推移していた。経団連は連日の「為替介入してくれ」詣でを政府財務省に行っていた。
彼らは「このままでは、日本の企業が潰れるから円売り介入してくれ」と泣きついていた。
で、野田政権下の安住財務大臣(野田自身も財務相時代があり、財政再建派として財務省寄りの「消費増税派」の駒となった)が円売り介入を実施した。
10兆円規模で円売り介入を実施したが、2円程度(実際には、2円以下の変動幅)しか円安にはならなかった。
野田財務相時代と併せ、覆面介入含め16兆円超の円売り介入を実施したが、大して円安は達成できなかった。
アベが総裁になりそうだ、という期待から円安が顕著となったのは、13年の年頭頃からだったはず。
10兆円以上の円売りを1日で実行したが、ドル円為替は2円も動いてなかった。小規模な円売り介入も実施されたが、それも10円とか動かせるような効果はなかったのだ。
では、ここ数年の、バイデン政権誕生後の21年以降に起こった奇怪な円安は、どのような水準で生じたのだろうか?
実務に無知な経済学者だの、欧米インチキ経済屁理屈の受け売りしかできぬ経済ナンチャラだのといった連中は、金利差だの日本政府の破綻リスクだのとか言い募るが、現実に円安を達成するには「円を売る」作業が必要なのだということを無視しているのである。
資本市場規模が10年前と同等であるとは思えず、何倍かに膨張しているだろうとは思うので、単純比較は無理なのは承知の上で、仮に円売り介入当時と同じ程度であろうと仮定して話を進める。
安住財務大臣時代の「円売り介入10兆円で約2円の円安達成」が現在でも通用したとして、50円の円安を実現するには少なくとも約250兆円規模の「円売り超過」が必要となろう。
毎年のフローで観察されるだろう。それは資本移動として生じるだろうから、当然統計項目に反映される。
では、国際収支とか国債残高・株式の海外勢保有残高等でそれらの動きはあったのだろうか?
未だかつて、この事実について、統計数字から立証をしている経済学者も経済アナリストも、誰一人見たことがない(笑)。
バカな連中は「新NISAで日本人が円売りなんだ=円安になる」とか言うわけだが、だったらその開始以前と比較して円安進行の違いを見るはずが、新NISA開始前の方が「圧倒的に円安進行」だったのでは?
23年末は1ドル約141円で、105円からは約36円の円安達成、そこから155円だと14円の円安なので、まあ進行速度に違いはある(今年に入って以降の方が加速的だ)が、フローの量的関係を言うなら過去2年の方が大きいだろう。
たとえ貿易赤字を食らったとて、高々数兆~数十兆円程度では達成が不可能なレベルの円安なのだよ。
もし円売り規模が100兆円超で発生する場合、「海外保有分の国債か日本株式」が大量に売却され、ドル買い資金に回されるという現象が観察される。預金(現金)だけの移動では達成不可能だろ?
いわゆるキャピタルフライトは、例えば「中国市場からの海外資金逃避」のような形で、株式保有残高の減少と人民元売りドル買い(通貨減価)が同時に生じて観察されるだろう。
日本では、これが生じている形跡がない。
むしろ逆であり、日本国債の「海外保有残高」と「対内証券投資」(日本の株式市場)の残高は増加してる。
それが日本株高として観察され、国債残高も統計で判明しているのだろ?
少なくとも数百兆円規模で円売りを実行しないと、「50円もの円安」など達成不能だろう、という話なんだよ。
その統計が存在しない。対内投資の統計数字からは、海外勢が大量に日本円資産を売却して海外逃避(レパトリ?)したという形跡は見られない。
FXの投資額にしても、対内対外証券投資の項目には含まれるはずだし、海外勢が巨額円売りポジションを構築しているなら、それが反映されているはずだろう。もしも不明なら、国際収支が計算できないでしょ?
また、為替取引市場の資金規模を考えたことがあるが、ざっくりの当て推量でしかないけれど、無意味とまでは思わない。
7年前の規模ですが。
過去最大規模の為替介入だった、とか推測記事が流れていたが、本当にそうなのか?
過去の介入はほぼ「円売り介入」だったので、ドル売りとしては過去最大だったのかもしれないが、介入資金規模では最大でもない気が。
最も気になるのが、高々数兆円の投入で「ドル円を5円以上も動かした」という事実だよ。上述したように、安住財務相が10兆円規模で円売りしても2円以下しか為替は動かせなかったのだぞ?
だが、昨今では半分の資金量で5円以上も動く、と。どういうこと?
普通、市場規模が大きくなると、売買高(総取引額)が増加するし、売買高が大きいと上昇・下降とも大きく動かすには、相当の大量資金が必要になるでしょう?
2013年当時の為替介入よりも、現在の方が少額資金で「大きくドル円為替水準を変動させることができる」という現象の方が、不思議だわ。
介入の存在も疑惑のままだが、日本円資産の数百兆円の売り越し&海外逃避があらゆる統計から観察されてないことは、為替市場がイカサマの結果であり胴元による八百長だろうと思わせるに十分な根拠だと考える。
いかに日本が世界経済の中で陰が薄いとしても、日本円は為替市場での4番目の地位(それなりに売買高・市場規模がある)であるだろうし、貿易額は増加したので為替実需も2013年よりは増加してるはずだし、FX等先物市場のポジション総額も増加したはずだし、対外投資額も相対的に増加してるはずだろう?
なのに、現在の投入資金量が小さい「為替介入」の方が、10年前より数倍も変動幅が大きいという現象自体、不思議でならない。
追加だが、2022年10月21日に為替介入が実施されていた。
約151円を突破してきた為、ドル売り介入が実施され約147円台まで下落。介入資金は約5兆6200億円らしい(介入前日が約148円だったので、ある種の「演出」っぽい介入だった気もw)。
現代の方が10年前よりも反応が過敏になった、ということなのか?
介入が来ると、一斉に逃避する投資家勢が増えたから?
あまり当てにはできない気もしてきた(笑)。
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