トランプ元大統領の機密文書事件の論点・法律専門家の妄言を嗤う


米国法の専門家で最高権威の司法省(DOJ)や法学専門家、エネルギー省関連や国防(インテリジェンス界隈)情報の専門家などと自称する人々が大勢いるが、口を揃えて「大統領にはAEA法(the Atomic Energy Act)の機密(RD、FRD)を解除する権限がない」と主張することに疑問を感じないのだろうか?


彼らに共通しているのは、「トランプ元大統領をいかに有罪にしたいか」という点であり、法学的な論点について詳細に検討した結果とは思われない。

当方の素人見解で申し訳ないが、司法省をはじめとする専門家の主張がいかにおかしいのか、ということを説明したいと思う。


1)一般に「行政機関の長」の権能は下級公務員の権能全てを管掌する

当方のようなド素人が初歩的な説明をするのは憚られるが、法の専門家たる司法省の役人が「大統領には機密解除権限がない」という主張をすることがいかに異常で理解不能なのかについて、説明したいと思う。


まず、代表的な司法長官について説明したい。
根拠法は以下である。

" 28 U.S. Code § 509 "


All functions of other officers of the Department of Justice and all functions of agencies and employees of the Department of Justice are vested in the Attorney General except the functions—
(1)
vested by subchapter II of chapter 5 of title 5 in administrative law judges employed by the Department of Justice;
(2)
of the Federal Prison Industries, Inc.; and
(3)
of the Board of Directors and officers of the Federal Prison Industries, Inc.

Cornell Law School


端的に言えば、司法長官は司法省の全ての権能を司る、ということである。DOJ の全てのofficer、代理人(委託先)、下級公務員などの全ての権能を有する、と規定される。

例外的に

・行政法判事
・連邦刑務所運営会社
・同会社の取締役会及び役員

の権能は、保有しない、とされる。

ここでもし、司法省DOJ の機密指定解除の権限を有する「公務員A」が存在するとして、司法長官には「その権限を有しない」という主張をDOJ やその他法学専門家らがしている、ということである。

はあ?w

司法省の機密指定の解除できる権限を持つ「公務員A」が仮にDOJ に「たった一人」しか存在しない場合であろうと、条文§509の規定で明らかな如く「司法長官は全ての権能を持つ」のだから、「公務員A」と同じ権能を有しているのは疑いの余地がないでしょう?


例えば、司法長官が有しない権能を持つ行政法判事は、日本で言う行政不服審査(審査請求後の審査)や行政手続法上の聴聞といった、行政庁との法的粉争の時に「審判」役として審査する権限を有する「判事」である。



行政不服審査の審判を行政機関以外の中立的立場の人間(=administrative law judge)に依頼しているのは、日本よりもマシである(日本では各省庁、すなわち大臣権限として裁決が出される)。


話が逸れたが、DOJの代表者たる司法長官は「司法省の全ての職員権限・行政機関の機能を有する」ということだ。


前回記事でも述べたが、権限の委任関係で考えれば、至極当然の話であるとしか思えない。


だが、トランプ元大統領を有罪にしたい連中は、上位階級者である「行政機関の長」には下級公務員が保有している「機密解除権限」は保有できない、という暴論を唱えているわけである。

当方のような素人が説教して申し訳ないが、法学を少しでも齧ったことがあるなら、「大統領には機密解除権限がない」という主張が理屈として成立しないことが即座に考えられるのに、司法省やその他専門家が断固として認めないと言っているのである。これは異常としか言いようがない。


2)「大統領令 E.O. 10899」に見る核機密情報の取扱い

司法省 DOJ やマスコミ登場の法学専門家らが、大統領にはAEA法上の「機密解除権限がない」「核情報(RDやFRDの情報提供)は大統領に権限がない」というような暴論が見受けられる。

また、1954年議会制定のAEA法の規定は、事後的な大統領令のE.O.13526 (の処理)とは違うんだ、という屁理屈がよく出されるようなのだが、本当に法学の専門家のご意見なのかは疑わしい。


その理由について述べようとする時、端的な例が「E.O.10899」の記述なのである。


By virtue of the authority vested in me by the Atomic Energy Act of 1954, as amended (hereinafter referred to as the Act; 42 U.S.C. 2011 et seq.), and as President of the United States, it is ordered as follows:
The Central Intelligence Agency is hereby authorized to communicate for intelligence purposes, in accordance with the terms and conditions of any agreement for cooperation arranged pursuant to subsections 144 a, b, or c of the Act (42 U.S.C. 2162 (a), (b), or (c)), such Restricted Data and data removed from the Restricted Data category under subsection 142d of the Act (42 U.S.C. 2162 (d)) as is determined

(i) by the President, pursuant to the provisions of the Act, or

(ii) by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense, jointly pursuant to the provisions of Executive Order No. 10841

to be transmissible under the agreement for cooperation involved. Such communications shall be effected through mechanisms established by the Central Intelligence Agency in accordance with the terms and conditions of the agreement for cooperation involved: Provided, that no such communication shall be made by the Central Intelligence Agency until the proposed communication has been authorized either in accordance with procedures adopted by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense and applicable to conduct of programs for cooperation by those agencies, or in accordance with procedures approved by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense and applicable to conduct of programs for cooperation by the Central Intelligence Agency.

Executive Order 10899--Authorization for the communication of restricted data by the Central Intelligence Agency


この大統領令は、1960年12月に出されたものであり、AEA法に基づく大統領権限を考慮したものであった。


この規定にある通り、CIAが核関連(国防)情報を他国政府(或はNATOのような地域防衛組織)に「核情報やデータ」を送信(提供)できる場合(=機密指定解除、その後の情報提供)というのが、

(ⅰ)大統領による場合(AEA法の下)
(ⅱ)the Atomic Energy Commission とDoD(国防総省)の合意(大統領令10841の下)

ということで、現代で法規範無視のバカが言う「DOE長官とDOD長官」の合意か否かの手続に拠る、大統領には権限がないという主張がいかに無知無能の暴論かが分かるだろう。


1960年当時、「AEA法上の大統領による権限」と「原子力委員会と国防総省の合意」は、「並列の条件」として対等だったのである。
即ち、「DOE長官とDOD長官」の合意云々の要件とは別個の大統領権限が確認されていたのである。行政法の仕組みとしては至極まっとうである。


これを、現代になってから、「DOEの木っ端役人X(唯一の機密指定解除権限を有する役人、他の誰も権能を行使できない)と、DODの木っ端役人Y(機密指定解除権限行使可能な人)」にしか機密指定解除は不可能、とかいうインチキ理論が構築されたのである。そんな法学論理はデタラメだ。基本的な理屈として成り立たない。


1960年当時のAEA法の解釈という点において、大統領権限と(現代の)DOE長官&国防長官の合意という要件が、対等な「並列関係」であったことは明白であり、トランプ大統領には「解除権限がない」という主張こそが、法学的な論理において滅茶苦茶な嘘であると思われる。


何が異常かって、司法省DOJ /FBI が「大統領には機密解除権限がない」と断言する点なのである。元から国防総省DoD、国務省、DOEなどの「機密指定」の合意など、大統領権限に優越するという法的根拠など存在し得なかったのに、インチキ官僚どもがデタラメの説明を強引に進めた挙句、大手マスコミがそのデタラメに加勢して似の法学的屁理屈を社会に拡散したのである。



バカな大手マスコミには関係ないが、DOEの変遷に伴い、法的にはいくつか変更点がある。

最大の変更点が、the Atomic Commission の権能がDOE長官に移管された、ということで、U.S.C §7151、議会による行政機関内への設置法(§7101)、DHS長官への移管(§7131)などが関連法規として重要であろう。

the Atomic Commissionに関する全ての記述を変更l
権限をDOE長官に移管したというのも、年数が経過してからである。



大統領令の変更で、原子力委員会に関する記述がエネルギー省長官に権限が移管される等、大統領令の包括的変更があったことは確かである。



(a)

Except as otherwise provided in this chapter, there are transferred to, and vested in, the Secretary all of the functions vested by law in the Administrator of the Federal Energy Administration or the Federal Energy Administration, the Administrator of the Energy Research and Development Administration or the Energy Research and Development Administration; and the functions vested by law in the officers and components of either such Administration.

(b)

Except as provided in subchapter IV, there are transferred to, and vested in, the Secretary the function of the Federal Power Commission, or of the members, officers, or components thereof. The Secretary may exercise any power described in section 7172(a)(2) of this title to the extent the Secretary determines such power to be necessary to the exercise of any function within his jurisdiction pursuant to the preceding sentence.


大統領が「機密指定情報の解除」を不可能とする法学的論理の背景は想定することができない。もし、下級公務員による「解除権限」が大統領権限を優越できる。という法学的論理があるなら、是非ともそれを示して欲しい。


3) 参考

1)の項で述べたが、一般には「行政機関の長」が有する行政権限は、下位の公務員の権限を代表していると見做せるが、AEA法においてはその原則が部分的に通用しない「議会による権限の附与」、つまりは根拠法による公務員の権限が規定されている部分があると思われるのである。


それが、『42 U.S. Code § 7135 - Energy Information Administration』である。




(c)Functions of Director of Office of Energy Information and Analysis

In addition to, and not in limitation of the functions delegated to the Administrator pursuant to other subsections of this section, there shall be vested in the Administrator, and he shall perform, the functions assigned to the Director of the Office of Energy Information and Analysis under part B of the Federal Energy Administration Act of 1974 [15 U.S.C. 790 et seq.], and the provisions of sections 53(d) and 59 thereof [15 U.S.C. 790b(d), 790h] shall be applicable to the Administrator in the performance of any function under this chapter.


別途根拠法を与えられたDOE情報分析局長は、DOE長官の指揮命令とは独立して行政権の行使が部分的に認められていると思われる。



"Department an Energy Information Administration to be headed by an Administrator"
というエネルギー省情報局局長はDOE長官の権限委任を必須としない権限が存在する。


行政機関の長からの下部公務員への「権限の委任」が法律上で必要なものと、不要なものというのは稀に存在するが、それは議会制定法上で規定されているであろう。
エネルギー省長官の有する権能とは異なる権限は、条文によって規定されているということでもある。

司法省とエネルギー省では、部分的に取扱いが異なる、ということは分かるだろう。


トランプ元大統領の機密情報の持ち出し・漏洩事件で見れば、非難してる側(DOJ/FBI やバイデン民主党支持層、大手マスコミなど)が全くの妄言を主張しているようにしか見えないのである。



更に追記:


制限データに関する上記E.O.10899と類似の大統領令「E.O.11057」においても、大統領権限による制限解除が認められていた。



https://www.archives.gov/federal-register/codification/executive-order/11057.html


Executive Order 11057--Authorization for the communication of restricted data by the Department of State

Source: The provisions of Executive Order 11057 of Oct. 18, 1962, appear at 27 FR 10289, 3 CFR, 1959-1963 Comp., p. 648, unless otherwise noted.

By virtue of the authority vested in me by the Atomic Energy Act of 1954, as amended (hereinafter referred to as the Act; 42 U.S.C. 2011 et seq.), and as President of the United States, it is ordered as follows:
The Department of State is hereby authorized to communicate, in accordance with the terms and conditions of any agreement for cooperation arranged pursuant to subsection 144b of the Act (42 U.S.C. 2164(b)), such Restricted Data and data removed from the Restricted Data category under subsection 142d of the Act (42 U.S.C. 2162(d)) as is determined

(i) by the President, pursuant to the provisions of the Act, or
(ii) by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense, jointly pursuant to the provisions of Executive Order No. 10841, as amended,

to be transmissible under the agreement for cooperation involved. Such communications shall be effected through mechanisms established by the Department of State in accordance with the terms and conditions of the agreement for cooperation involved: Provided, that no such communication shall be made by the Department of State until the proposed communication has been authorized either in accordance with procedures adopted by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense and applicable to conduct of programs for cooperation by those agencies, or in accordance with procedures approved by the Atomic Energy Commission and the Department of Defense and applicable to conduct of programs for cooperation by the Department of State.

E.O.11057


原子力委員会(当時、その後エネルギー省長官に移管)と国防総省との共同での制限解除と並列で、大統領権限による機密解除権限が規定されており、国務省はこの恩恵により外国政府やNATOのような地域防衛組織への核機密情報(データ)の提供ができることとなったのである。


この後、the Atomic Energy Commission がエネルギー省長官への権限移管があり、過去の大統領令で言及されたAECの部分は原則的に「DOE長官」(Department of Energy, Secretary of Energy)によるものとされた(一部は原子力規制委員会)。


これら大統領令が継続的に有効であったのは、大統領権限による解除が合法と見做されてきたからであり、その事実を世間に知られることが現代の司法省/FBI 、バイデン民主党支持の自称「法学専門家」や大手マスコミにとっては極めて不都合な事態となったのである。


DeepState官僚どもによる、「機密保持」の大義名分が失われてしまうからだ。


空想コントで書けば次のような話である。


トランプ大統領
「ケネディ暗殺事件に関する全ての文書を機密解除しろ、それと私がブリーフィングを受けた国防情報AとBを機密指定から解除しておけ」

政府中枢の幹部x
「分かりました、各政府機関に伝達します…」

後刻
Xは部下に対して
「さっきのトランプの発言を会議録から削除しておけ、命令があったことを文書に決して残すんじゃない」

また、xは各政府機関の高級官僚たちに
「ケネディ文書、国防情報AとBを渡すようトランプ大統領に言われたが、どうするか?」と打診

省益しか念頭にない高級官僚(DOJ、CIA、DoDら)は
「ダメだダメだ、絶対にトランプの好きにさせるな、そんなことを許せば我らの長年の闇も機密解除されかねない、絶対に解除できないと言え」

政府中枢幹部xはトランプ大統領に対し
「現在、各省庁にて機密指定解除のプロセスに従って、解除できるか検討中です、手続が非常に複雑な為、時間がかかっております」

などと嘘の回答をする。
いつまで経っても「機密指定解除」が実現されない、ということになるわけだ。これこそが、DeepState官僚どもによる意図的なサボタージュであり、大統領命令に対する叛逆行為なのである。

「大統領には機密指定解除の権限がある」という事実、法学的論理、行政法解釈など決してあってはならない、というのが大統領権限に刃向う司法省DOJらの官僚機構ということなのだ。

その為、トランプ大統領を起訴してまで、全力で潰しに来たわけである。刑事裁判でトランプを有罪にできれば、「大統領には機密指定解除の権限がない」という見せかけの体裁を構築できる=米国民を騙せる、ということに他ならないのだ。


すなわち、DeepState官僚どもによる国家反逆罪であり、機密情報を自在にコントロールするのは我ら官僚機構だという体制を堅持したい・その絶対不可侵領域を死守したい、という理由で、「大統領には機密指定の解除権限がない」というニセの法学的屁理屈を構築してきたのである。




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