紅麹問題の続報~原因菌を培養したのは誰?(追記あり)
NHKが昨日報じたので、こちらもメモがてら記事を書いておきたい。
例の「青カビ」の写真が公表されてた。公表済だった真菌は
" Penicillium adametzioides "
という名の、かなり珍しい属だったそうです。
で、問題のNHK記事がこちら。
写真提供が『大阪健康安全基盤研究所』さんだそうです。
おや?
以前の公表では厚労省・国立食品医薬品衛生研究所、という話だったのでは?
検体の採取が「大阪市保健所」だったので、大阪市が培養したんですか?
他の微生物との分離は、誰がどうやったんですか?
単独真菌だけを分離して、大阪工場内の「空気中に含まれる真菌」は検体から正確に除外できたんでしょうか?
通常、空気を採取して培養すると、数種類のコロニーが形成されるでしょ?真菌類が混ざってるのは当たり前の話なので。
それを、無知な素人勢がノコノコ出向いて、きちんとした検体採取とかできたんでしょうか?
まあいい。
とりあえず、シャーレと写真を覚えておいてください。
では、本格派の論文と比べてみましょう。韓国で初めて当該「青カビ」が分離され検出されたのは、2012年です。それ以前には、発見されてこなかった(何故でしょう?)。それほど珍しい、という意味です。
この論文中に、日本の土壌中から検出された、という注記があるのだが、その記述があったとされる元論文はこちら。
これが読めないので分からないですが、タイトルからすると日本に存在するというPenicillium adametzioides の話は、あまり繋がってこない気が。系統分析なので、参考の話として比較対象の名前が挙がってたのかもしれませんが。で、問題は「日本の土壌から発見された」という元論文が発見できないわけです。
ただ論文中の紹介として、日本、トルコ(空気中)やスペイン(桃の木)、そして韓国のブドウの木から検出、ということになっているのです。
トルコの論文も読めませんでした。ブドウや桃の木からの採取と、日本の「工場」や「土壌」では話が遠いですので。
せめて日本の最初の報告論文が読めればよいのですが、ネット検索上では発見できませんでした。古すぎるから?
滅多に出て来ない真菌なら、普段から身近には存在しないわけで、韓国の初出例のように、つい最近まで検出されてこなかったということは言えるかと思います。
で、問題は培養の仕方、です。大阪の研究所の写真は培地も分からず経過日数も分からないですが、適当な寒天培地にコロニーが写っていれば「素人は騙せる」方式で報道したんでしょうかね?
プロのお仕事って、大抵は「業界内のお作法」に基づいてやる、という習慣が身に付いている、という話をツイートなどで書いたわけですが、まさにそれなんですよ。
参考論文中だと全部、コロニーが三つ揃ってる写真しか出してないでしょう?
シャーレの培地に培養する時、プロならいつもと「同じ手法」でしかやらないのでは?
参考までに、他の論文を見てみますか?
” A taxonomic and phylogenetic revision of the Penicillium sclerotiorum complex ”
この論文中に掲載されてるシャーレも同じく、コロニーが3つ揃った写真ばかりでしょう?
通常なら、そういう培養手技をしているのでは?
「プべルル酸の抽出論文」に登場した真菌とは別だが、日本でブドウから発見された真菌、'P. viticola' の属する「P. sclerotiorum」という話を書いたでしょう?
その論文が上記の写真比較に挙げた論文ですよ。
恐らく大阪の写真は、「ド素人が適当にやっつけ仕事」をやってみた」という話ではないか、ということですよ。プロのやった培養の結果とは考え難い。
NHK記事によれば
『問題が発覚して間もない、ことし3月末に調査に入った際、カビのような黒っぽい汚れが工場内に点々と広がっていることがわかり、4月に改めて工場に入って採取したところ、「培養室」など5つの部屋の壁や天井などからカビが検出された』
「カビのような汚れ」を今見つけて、それが「製造時点」で存在していたものかどうかの立証ができるのかね?
工場閉鎖後に侵入したカビではない、と断言できる理由を説明してみろ。
微生物なんて「ナマ物」なのに、3月の立入調査時点で「検体採取」してない理由を言え。
当方が書いた3月時点で書いた記事を読んだ後から、事後的に「捏造の証拠」を都合よく用意した、という邪推を否定できるかね?
まず、原因物質名を「プべルル酸だ」と公表したろ?
それは「カビの混入のせいだ」という方向にするストーリーを最初から決めていたから、だろ?
だが、プべルル酸だとなると、産生する真菌の種類がかなり限定的となる。今回公表された「P. adametzioides」がプべルル酸を産生する、という論文は未だ世界で誰一人報告してないだろう?
今回の話は、世界初の大発見ということのはずだが?
無栄養の工場内で、何か月間も当該真菌は生存できるんですか?
酵母共存で1か月以上すると、紅麹は全滅してしまい、製品化できるような状態になっているんですか?
青カビなんて、どこにでもある、いつでも混入する可能性はある、というのはその通りだが、その舐めた根性でイカサマのシナリオを描いたアホがおり、現実はそう甘くない、と思い知ったのでは?
素人の嘘、それがいかにも「臭い」わけですよ。
本件容疑者の「P. adametzioides」から、原因物質と挙げられたプべルル酸の抽出方法と抽出量を論文で提示しろよ?
それができもせんのに、原因物質だと断定なんざ不可能だからな。
やれるもんなら、やってみな!!(大和田風)
10月19日 追記:
新たな実験があったそうで、そのツイートを追加しておきます。
シスプラチンと同程度の細胞毒性があるとして、紅麹サプリの重量、及びプべルル酸の含有量がいくらだったか、その具体的データを厚労省が秘匿し続けている限り、何も判明しないぞ?
結局は初期の疑問点に帰着するだけで、中毒量の具体的濃度を重量かモル濃度かで示してもらわないと、臨床的な判断は何一つできないが?
だいたい、厚労省がやったとされるマウス実験の数値ですら、一つも開示せず何一つ説明をしてないこと自体が異常であり、偽装工作の疑念を生じさせるだろう。
厚労省が公表した、実験結果の論文を早く出せ、っての。
4月19日 >
https://www.mhlw.go.jp/content/001257891.pdf
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?