米国GDP統計の胡散臭さ~23年7-9月期のデータの検討から
米国のGDP統計は謎が多い。が、それを情報源として、株式市場や債券市場では、理由づけに利用して相場を動かしてることが多い気がする。
同じ四半期統計の公表は、一時速報値、改定値、確定値と3回あるわけだが、その度にもっともらしい理由をつけてるが、その信頼性はどうなのか?
23年7-9月期の例で見てみよう。
一次速報値の時は、強い個人消費年率4.0%増とコアPCE3.9%(前年同期比)を背景に今後も「利上げ」予想という話だった。強い米国経済を強調していた。
次の改定値の時には、どうだったか?
年率換算では上方修正だったが、個人消費とコアPCEは下方修正で、特にコアPCEが2.3%と1.6%ポイント=約41%もの大幅な改定値となったわけだ。成長力を強調しておいての、インフレは減速風を醸し出して利下げを催促という感じ?
続いて、先日発表の確報値の時はどうだったか?
年率4.9%に下方修正、6割以上を占める個人消費は3.1%、コアPCE2.0%へと下がったわけである。
速報値 改定値 確報値
年率 4.9 5.2 4.9
個人消費 4.0 3.6 3.1
コアPCE 3.9 2.6 2.0 (%)
実質GDP成長率は速報値に戻っただけであり、下方修正とはいえ米国経済が堅調で当初報道が言う通りなら「経済大国の地位は揺るがず」のはずでは?
また、成長を牽引してると言ってた個人消費が4.0%→3.1%と約75%に低下したので、他のセクターでそれを補う増加があって絶好調分野があるはずだが、その数字が何なのかは報道では分からない。
もっと異常なのが、コアPCEの激変である。物価指標のズレが速報値と半減する程に乖離しているという点は、どういう理由なのか?
この予測値は民間エコノミストたちの事前予測があったはずで、それも同じくここまでの大きなズレがあったのなら、何か変だとは思わないのですか?
端的に言えば、速報値の時は「米国経済絶好調、利上げもあるか?」という論調だったものが、僅かな時間が経過すると「個人消費が不調だ、利下げか?」と真逆の意見に変わったのだ。
こうまで極端に変化するものなんですか?w
まるで利下げ催促のようにしか見えず、それも11月以降BTFPの借入残高が急増したのと歩調を合わせるかのようにしか見えないわけですよ。そんな都合よく『コアPCE』が速報値からの連続改定で大幅に減少するもんなのですかね?w
そうなる要因とは何ですか?
年率5%程度の高成長なのだから、利下げする理由なんて皆目見当もつかないのが普通では?
どんな屁理屈で「利下げ」なんて出てくるのか。それはカネ不足で困窮してる金融機関などからの「救助要請」であって、経済運営の原則からは外れた話なのではないか?
更におかしいことがある。
実質GDPの寄与度分析では、純輸出がマイナス寄与がほぼ見られない、という点だ。
病的とも言える米国の慢性的な貿易赤字体質が、こんな短期間で改善するとは思えないのに、今年の1Qから3Qまでマイナス寄与度がまるで見られてないのだよ。
貿易赤字額は、政府統計で見ても10月末時点で8938億ドル、3Q9月末時点でも約8千億ドルの貿易赤字額が発生しているはずなのだ。
米国のGDP統計だと貿易収支以外の別項目が算入されていて、財・サービス貿易以外の収益項目で8千億ドル級の黒字を生んでるなら、そういう統計処理なのかもしれないが、定義式が分からないので保留。
ただ言えることは、10月末時点での貿易赤字額は公式統計によれば約9000億ドル弱であり、それでもなお、米国実質GDP統計上は純輸出のマイナス寄与がほぼゼロである、という事実である。
これは、本当に適正な統計処理の数字なのか?
正しいGDP統計の結果なのか、というのが問題意識である。
もしも理由が説明できる経済学者やエコノミスト、統計学者や貿易収支・国際収支統計の専門家がおられたら、是非ともご高説を拝聴したいと思う。
速報値から確報値までの報道においても、経済大国の威信を自慢してた速報値から、先行き不安で利下げまで言い出す確報値までの僅か2か月弱で、経済環境・ファンダメンタルズが激変するような話があるのですか?
こうした点について、経済がご専門の方々は疑問に思ったりしないのでしょうか?
少なくとも当方から見れば、都合のよい数字を並べてきた統計値なのではないか、という疑問は拭えませんね。
やはり以前からやり続けてきた統計偽装の伝統なのでしょうかw