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第0話 タカシのカップラーメン

「タカシ!あそぼ!!」
 タカシは私の幼馴染み。今、小学4年生だけど、生まれたときから知ってるのよ。学校の男子はキライ。でも、タカシは面白いからスキ!

「お!アカリ、いいよ!」
 アカリは僕の幼馴染み、ず~っと一緒にいるから兄妹きょうだいみたいだ。同い年だから双子かな?

「あれ?今日は土曜日でしょ?しんちゃんは?」
 しんちゃん、しんご君はアカリの弟で、まだ5歳だけど、いつもアカリに付いてくるから、一緒に遊んであげることも多いんだ。
「うん、あのね、昨日の夜、熱が出ちゃって、朝からパパとママが病院に連れてってるの」
「そっか~、それでアカリはお留守番か~」
「うん、で、タカシくんのお家に行っときなさいって、ママが」
「はぁ~、うちの父さんも母さんも仕事なんだよな~、父さんは夜勤明けで昼頃には帰ってくるんだけど」
「あ、もう10時だからもうすぐだね」
「うん、まいっか!じゃ、ゲームしようぜゲーム!マリオカート!!」
「マリオカートね。いいよ!負けないから!!」


「はぁ、負けた」
 ちぇ!アカリのヤツなんでこんなに強いんだ?僕に黙って特訓とかしてるんじゃないのか?
「ははは、悔しいかねタカシくん、”男子三日会わざればカツモンだって思え”、ってことわざ、こないだ先生が話してたでしょ?」
「なに言ってんの、アカリは女子じゃん!それに、なんか間違ってる感じしかしないぞ?」
「え?そう?なにか間違ってる?」
「そうそう!あれは~、男子三日会わざれば、カチモク、カツモノ、カチモン?・・・」
「それはいいけどさ!ワタシお腹すいた!タカシのお父さん、遅いね~」
「ああ、もうすぐ12時か~、普段だともう帰ってきてるんだけどな~、忙しいのかなぁ」
「う~ん、朝はママたち、バタバタして出て行ったから、トーストと牛乳くらいしか食べてないの。お腹すいたなぁ」
「分かった!ちょっと待ってろ、アカリ!」


 ワタシがお腹すいたって言ってたら、タカシは待ってろって台所に行っちゃった。タカシってお昼ごはん作れるのかな、なに作るのかな。

 あ、帰ってきた。

「お~っとっと、ゆっくりゆっくり」
 タカシはお盆の上に大きなカップラーメンを乗せて、スープをこぼさないようにゆっくり持ってきた。
「アカリ、これ、食べよ!!」
 カップラーメンをワタシの目の前に置くと、タカシはすぐに台所に戻って、もうひとつ、大きなカップラーメンを持ってくる。
「な?お腹すいただろ?」
 うん、お腹はすいてる。ホントにすいてるんだけど、このラーメン、大きすぎ!!
「タカシ、これ、大きすぎるよ~、大人が食べる大きさでしょ?しかも、でかまるって書いてあるよ?大盛りって」
「え?大丈夫だよ、父さんが食べるラーメンだけど、僕もお腹すいてるし!それに、お腹すいたお腹すいたって、言ってたじゃん。アカリも食べれるよ!」
「そ、それはそうなんだけどぉ、無理なんじゃないかなぁ」
「ほら!もう3分経ったよ?食べよ?」
「う、うん」


「はぁ~くったぁ~!お腹いっぱい!!」
 タカシはスープを飛ばしながら麺をすすって、あっという間に食べちゃった。でも、これホントに大きい。ワタシにはやっぱり、無理かなぁ。美味しいんだけどなぁ。
「タカシ、ワタシやっぱり無理だよ。男子は食べるのかもしれないけど、麺がすっごく多いし、食べてるうちにお腹いっぱい!」
「え~?しょうがないなぁ、育ち盛りの小学生はもっとたくさん食べないとダメだよ?って、お父さんいっつも言ってるよ?それに、残しちゃダメよ!ラーメンの麺には7人くらいの神様がいるんだから、って母さんも言ってるんだから」

 タカシってば、ワタシは無理かもって最初に言ったのに勝手なこと言って!、でも、ラーメンの麺には7人くらい神様がいるんだ。じゃ、がんばって食べるしか・・・

「よし、アカリ、オレがそれ、食ってやる!!」
 え?え?タカシが食べるの?これ。まだ半分くらいあるよ?
「ほら貸して、食べるから!」
「うん、じゃ、お願いします」


 アカリが残したでかまる。僕が勝手に作ってきたんだから、残すわけにはいかない!
 どうだ!スープもぜんぶ飲んでやったぜ!見てるかアカリ!!
 でも、かわいいんだなぁ、女の子って。こんだけしか食べられないんだ。

 アカリだけかな?

 ものすごい勢いでワタシが残したでかまるを食べるタカシ。そんなに無理しないで!いくらラーメンがもったいないからって!
 でも、すごいなぁ、男の子って。あんなにたくさん食べるんだなぁ。

 タカシだけ、かな?


 ふぅ~ん、すごいじゃん。
 ふぅ~ん、カワイイじゃん。


 幼い恋心の、芽生えの瞬間。

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