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ショート 窓の外

声が聞こえるわ。
窓の外から。

子供、大人?
いろんな人の声。

ざわざわと。

女、男、若者、老人。
犬もいるわね。猫もいる。
鳥の鳴き声、虫の羽音。
そして風音、雨音。

窓の外からは、いろいろな声が、音が聞こえる。

その声に籠もった想い。
その音に秘められた運命。

怒り、嫉妬、欲望、慈しみ、喜び、愛情、共感、友情、太陽、風、雨。

それがみんな、私に伝わる。
それはただの音なのに、毎日、毎日それを感じる。

それは奇跡のよう。

ああ、そうだ。あなたの愛も感じるわ。
あなたに出会ったあの日から、ずっと、ずっと。

でも私はあの日から、窓の外しか見ていない。
あなたと出会ったあの日から、いつも、いつも。

今日もあなたの手が、私の両腕をくぐる。
今日もあなたの手が、私の両足を抱える。

ああ、なんて力。

今はもう、前とは違う。
今はもう、あなたにこうしてもらうしかない。
窓の外をあなたに、見せてもらうしかない。
それは分かっているのに今も。
私はあなたに抱えられた瞬間。
次に起こる奇跡に胸をときめかせる。

そして見える。
窓の外。

ありがとう、あなた。

そうよ。

私はあの窓までも飛べなくなった。
私は猫。

ただの年老いた、猫なのよ。

わたしゃ16歳、寝てることが多いのよ



ショート 窓の外 了

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