中国の臨床試験の品質は良くなったのか
中国語のWebでは、中国の臨床試験の品質は既に欧米に劣らない、もしくは劣ったとしても一過性のものまたは数は少ないと書かれているものが多い。しかしFDAのデータによると、中国の医薬品製造施設に対する検査が2019年度には131件行われ、そのうち15.3%(約20件)が「Official Action Indicated(OAI)」、すなわち行政措置が必要とされたとある。 これは、中国の製造施設に対する検査結果が他国と比べても、いまだ厳しい状況に置かれていることを示しています。
注:パンデミック期間中の2020年から2022年にかけては検査数が大幅に減少し、2020年度には18件、2022年度には8件の検査しか行われていません。そのためOAIの受領数も激減しています。
FDAの検査は、品質管理やGMP(Good Manufacturing Practices)の遵守を確認するために行われる。ほとんどの施設はこれらの基準を満たしていますが、違反が見つかった場合には行政措置が講じられます。全体的には、FDAの検査の大多数は「No Action Indicated(NAI)」または「Voluntary Action Indicated(VAI)」として分類され、重大な違反は少数であることが報告されています。このデータを踏まえると、中国の医薬品製造における標準化と品質管理の向上は確かに進んでいますが、FDAの厳格な基準を満たすためには、継続的な努力が求められています。
一方で新薬の承認数からみると中国で行われた臨床試験の結果が国際的に認められ、FDAやEMAによる承認を得ることが増えています。例えば、BeiGeneの「Brukinsa®(zanubrutinib)」やBio-Thera Solutionsの「Avzivi®(bevacizumab-tnjn)」などが中国のデータを用いて米国で承認されています。
中国政府が国際共同試験(MRCT)への参加を奨励しているため、中国にはデータ提供者としての役割が近年増えています。つまり、中国の臨床試験データが国際的な薬事承認において利用されることが事実として増えています。そういう意味では、20年前に比べると中国の臨床試験の品質は大幅に向上し、国際的な製薬市場での競争力を高めていると言えるでしょう。