生もと造りについて
現在、日本酒の作り方は色々ありますが日本酒の伝統製法、生もと造りについて書いてみたいと思います。
まだ微生物の存在が知られていない江戸時代に量に良酒をつくるため、丹波杜氏によって完成したのが『生もと造り』です。
微生物学も知らない先人がなぜこのような方法を考えついたのか、これから生もと造りの説明を読んだ皆さんも驚かれる事と思います。
ここで言う『もと』とは酒母とも言いますが、お酒を本格的に仕込む前のスターターの事を言います。
本格的な発酵を行う前にまず、充分な数の酵母菌を増やしておくのです。
さて『生もと造り』は前述した方法よって作った『麹』と蒸した米を水に溶かす事から始まります。
『荒櫂』(あらがい)と言われる棒の先に小さな板がついた器具で、半切り桶(タライのようなもの)に入れた米と麹を潰していく作業から始まります。
このすりつぶす作業を『もと摺り』といいますが、今のように時計が無かった時代、どれくらいの時間『もと摺り』をするかという時間を測るために、『もと摺り唄』と言われる唄を作業中に歌いました。この唄が作業時間を測る目安になったと言います。
ある程度すりつぶした『もと』(酒母)のは低温で放置されますが、この時に 『もと』(酒母)の中では空気中や仕込水の中にいる様々な微生物が活動をはじめています。
最初に繁殖するのは『硝酸還元菌』と呼ばれるグループです。
『硝酸還元菌』は仕込み水に含まれる『硝酸塩』を『亜硝酸』に変えます。『亜硝酸』はほとんどの微生物に対して毒素となりますすので、彼らは他の微生物を滅ぼして、自分たちだけが生き残るためにそうするわけです。ところが、亜硝酸攻撃の効かない微生物もいます。それが乳酸菌と酵母菌です。彼らの防御力はハンパなく、亜硝酸還元菌の攻撃も虚しく、乳酸菌が出す『乳酸』によって反撃されて死滅してしまいます。
ほとんどの微生物は乳酸などの酸に弱いのです。お酢が冷蔵しなくても腐らないのは酸が強いからです。ここで、『乳酸菌』が隆盛を誇るのですが、この乳酸攻撃の効かない微生物が存在します。それが一部の酵母菌(清酒酵母)です。
日本酒を醸す清酒用の酵母はワインなどの酵母に比べて強くアルコール度数も高くなりますが、これは亜硝酸や乳酸の中で生き残った強者のの酵母だからこそ、こうした強い発酵力を持っているのです。
以下は参考までに『生もと造り』の手順を書いておきます。
1-酉元立て--仕込みです、蒸米と麹と水を等量に6つの桶に分けて仕込みます。
2-手酉元----仕込みから5~6時間してから、米を軟化するためにかき混ぜます。
3-山卸し---仕込みから15~20時間してから櫂を入れて酉元をすり潰します。
4-折り込み-最後の山卸しから3日ぐらいして、桶二つを一つにします。
5-酉元寄せ-さらに桶を混ぜていき、最後に一つの桶にします。
6-打瀬-----「酉元寄せ」から温度を上げるまでしばらく低温で櫂入れなどを
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