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【声色ききみみずきん】#12 ジャパネットたかたの社長の声は、「情熱」と「愛」のセットでとってもお得!

2015年に引退された、ジャパネットたかたの社長・髙田明さん。現在(2019年)70歳! お若い!

TVショッピングの番組は、ほとんど観たことがないけれど、髙田社長の声は、私でも知っている。一度聴いたら忘れられない、超個性的な声。

以前の高田社長の動画を、じっくりと観てみた。思わず電子辞書を買いたくなってしまったのだが、まずは、声。

商品を販売している時の社長は、金属的な高い声。そして、速い。奥歯のあたりから息漏れもしていて、滑舌も甘い。サ行やラ行は、舌の動きが悪くて、発音が出来ない時もある。ノドや肩周辺に力を入れて発声もしているので、頭周辺に緊張感がビーンと張り付めて、首の後ろがコリそうな感じもする。血圧が高そうだけれど…

お国訛りもキツイので、聴き心地という点ではかなりハンデを背負っていると思う。けれど、高田さんが宣伝をすると、商品は飛ぶように売れる。なんでだろう…

動画の社長、目が笑ってない。真っ直ぐにこちらを見て、語りかけている。もちろんスタジオで、カメラを見て話しているのだけれど、それを飛び越えて、カメラの向こうにいる視聴者ひとりひとりと対峙し、見つめ合っているようにも感じる。

伝えたい。受け取って欲しい。届け、届いてくれ~!
その真剣さ、熱量が、半端なく強く感じられる。

台本もカンニングペーパーもなしで、何時間も販売トークができるのは、社長の「情熱」によるところが大きい。

ジャパネットたかたのオフィスに、でかでかと掲げられた文字。
それは、「覚悟」。なるほど、髙田社長は「情熱」と「覚悟」の人なのだ。

◆◆◆

私たちが、あの声を真似してプレゼンをすると確実に失敗する。「うるさい!」と叱られるのがオチ。でも、髙田社長は受け入れられている。きっと社長は、商品が大好きなのだと思う。仕事が、好きで好きでたまらない。仕事に対する、深い愛がある。

俳優さんの声と違うなと感じる点は、「素」の部分が声に出てしまうこと。商品の紹介に失敗すると、声に落胆や動揺が痛ましいほどに出てしまう。機転を利かせて見事に切り抜けるのだけれど、やはり、いつものノリが感じられなくなる。とても、素直で誠実な声だと思う。

そしてあの口調は、熱意が高まれば高まるほど音程も高くなり、速度も速くなってくる。普段のおしゃべりの声は、高音だけれど、穏やかに、むしろ淡々としゃべる人なので、ある意味、テレビでのトークは長い間、通販番組をけん引することで培われた名人芸なのだと思う。

社長は、商品の説明をしているわけではなく、その商品を買った後の、楽しさを伝えようとしているとのこと。これも購入者の暮らしのことまで考えた「愛」なんだ。それが欠けると、人の暮らしは荒廃するのだから。

そして、もうひとつ。

あの声の張りは、アジアの民謡を思い出させる。モンゴルの平原で唄われる民謡とか、江差追分とか。広いところで唄われ、遠くの人に、的確に声を届けるために発達した発声法。空気を切り裂くような、伸びのある高音とこぶしの細かい揺れ。

高田さんの声は、そんな声だと思う。つまり、人を振り返らせ動かす声。

私も、高田さんから学べることはたくさんある。どう思われるだろうと心配するより、たどたどしくても舌足らずでも、なまっていても、素っ頓狂でも、一生懸命に、「覚悟」と「情熱」と「愛」を持って伝える。受け取る人の暮らしを変えるってほど大袈裟に力む必要はないけれど、日々の暮らしが、より楽しいものになるように、ちょっとしたお手伝いをするために、心を込めて一生懸命になる。

そうすれば、思いは必ず伝わり、必ず、受け取ってもらえる。
そう信じて、進んで行こうと思う。

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浜田真実*ボイストレーナー
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