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【採択者紹介】秋元菜々美 〜生まれ育ちあの日を経験した富岡町をアートプロジェクトを通じて語り継ぎ耕す〜

全国・世界・地元から、福島県12市町村に、芸術家が集まり、滞在制作をするハマカルアートプロジェクト(経済産業省令和5年度地域経済政策推進事業(芸術家の中期滞在創作支援事業))。
採択者とその活動を紹介しています。
どのような人々が、どのようなアートを福島県東部の12市町村でつくろうとしているのでしょうか?
今回は、富岡町を拠点として、アーティスト・イン・レジデンスのプログラムを展開する秋元菜々美さんの紹介です。

生き方として、演劇をしようと思って富岡に帰ってきた。

東日本大震災以降、福島第一原子力発電所の事故で一時立ち入りが制限された富岡町・夜の森地区に秋元菜々美さんの活動拠点「RE:COLO-RAB」があります。

秋元さんが取り組むアートレジデンス事業の様子

秋元さんは富岡町夜の森地区の出身、役場職員を経て現在はフリーランスとして活動をしています。そんな秋元さんが高校時代から取り組んで来たものが「演劇」です。高校時代から演劇を勉強し、大学から本格的に演劇の道を進もうかと悩んでいたところ、頭をよぎったのが「地元・富岡」のことでした。

「富岡町に戻りたいという気持ちもあったので、生き方として演劇をやろうと思いました。」

秋元さんは、地元・富岡への思いを大切にし、故郷へ帰る決断をしました。

自身の主催する「家びらきvol.2」(2023年12月開催)で挨拶をする秋元さん

1人でもできる演劇の形態として、ツアーを選んだ

「町の中(富岡)を舞台と見立てて、私のナラティブで語られるものを(お客さんに)聞いてもらうことは、(演劇のようなもので)ただ町の中を巡ることとは全く違う体験だと思う。」

そう語る秋元さんは、2018年から依頼のあった来訪者に、ただ町の案内をするのではなく、自身の語りを中心に町のストーリーを展開し、お客さんもまるでその時その場にいたような想起的感覚に思いを巡らせてもらえるような「演劇的」なツアーで、町を案内する活動を続けています。
秋元さんのこうした表現活動の中で、来訪するさまざまな芸術家や創作活動をする人々とのつながりが起こり、2020年ごろから自然と、当地での表現活動や滞在を支援するようになりました。

環境を整えることが1番作品を作る時には大事なのかなとは思います

「純粋に距離が遠いので。本番前になればなるほど、結構過密に連携を取って作っていく必要がある。現地でものを考えられる環境を作ってあげないといけない。」

2020年から自身でアーティスト・イン・レジデンス活動の前身となる取り組みをしていた秋元さんは、場の重要性を誰よりも理解していました。打ち合わせにしても、稽古にしても、制作にしても、町のカフェやコワーキングスペースだけで作業をするには限界あります。
都内から距離があることに加え、ホテルなどの宿泊施設の宿泊料も決して安くない。

そのため、活動支援している作家に対して、環境を整え、現地で制作しながら滞在できるように富岡町の自宅を半分シェアする形で、滞在中の支援を行う取り組みもしてきました。

活動の拠点の様子(「家びらきvol.2」の様子)

ここを拠点にリサーチに出かけたり

秋元さんが整備する拠点を起点に、演劇関係者や現代作家などが町へリサーチにでかけています。

秋元菜々美さんは、本「ハマカルアートプロジェクト」では、様々なアートを通じたプログラムに取り組みます。

先ずは、彼女の地元であり、東日本大震災以後、家屋の解体と除染が進み避難指示の解除によって、次のフェーズへと移行している富岡町夜の森地区で、「土地の時間にまつわる滞在制作」を行います。
これらの取り組みでは、建築家らにより「空き地を活用したモニュメントとしての仮設建築」を行い、また、滞在芸術家と地域住民や移住者との交流を積極的に行い、参加者それぞれが応答的に思考する機会を設け、さらに、中長期滞在を行うための拠点整備も行っていく予定です。

この記事は、秋元さんの取り組みを追いかけ、具体的な取り組み内容や告知、実際の開催の模様へと続きます。

秋元さんの「ハマカルアートプロジェクト」取組レポート:
【プロジェクト紹介】『家びらきvol.2 記憶と未来が交錯する』公開レポート