まちがいだらけのヘッドホン選び(2)~ヘッドホンで何を聴くか~
前回のあらすじ
誕生日におじさんに「いいヘッドホン」をおねだりしたひろし君は、おそろしい呪文(てくにかるたーむ)を聞かされてしまいました。
ひろし君は、「いいヘッドホン」を手にすることができるのでしょうか・・?
第2章:ヘッドホンで何を聴く
2-0 What would you like
「ひろし君は、いいヘッドホンで何を聴くのかな?
井口寛レコーディングの『Voice Of Naga』かな?
それとも小沢昭一が録った『日本の放浪芸』かな?」
「ぼくは、YOASOBIが好き」
「やっぱりフィールド・レコーディング系は開放型で聴くと、もはやVR体験だからね」
「乃木坂もいいんだ」
「ハイレゾのダイナミックレンジで消え入る草の囁きまで・・」
「実は、テイラー・スウィフトも・・」
「全部女性ボーカルじゃないか。じゃあ中高域かな。
おませさんめ!」
2-1 好きな音楽と音域│リファレンス音源
おやおや。おじさんもひろし君も、相手の話をぜんぜん聞いていませんね。そんな耳でこの先、大丈夫かしら?
前回掲載したコブクロさんの動画に、こんな証言がありました。
そういうわけで、どんなジャンルの「音」・・音楽とは限定せず・・を聴きたいかによって、選ぶヘッドホンは変わってきてしまうのだそうです。
しかし、そんなに自分の好みってわかっているでしょうか?
わたしはわからない。
とはいえ、血迷って
客「おじさん、この店でいちばんいいのをおくれよ」
店「あいよッ! 108万円」
というわけにもいかない。
自分の好む音を出してくれるヘッドホンを探さねばなりません。
となると
「リファレンス音源」を持っておけば役に立つでしょう。
それは、音の違いを察知するため、聴き比べのための参照音源です。
自分の好きな曲、聴き慣れた曲、かつ欲をいえば、
低音から高音までいろんな周波数帯が出ている音源。
これを持って試聴に行くと、「このヘッドホンは!」何か違う、と気づけるわけです。
2-2 好きな音楽がわからないなら
ジェイク「でもぼく、自分がどんな音を好きかなんて、わからないよ・・」
ジョン 「う~ん、じゃあ仕方ないな。ここはひとつMade in Indiaと
いこうか」
ジェイク「Wao, インドのヘッドホンを買うのかい?」
ジョン 「(人さし指をふって)ちがうよ。ガンジス川に行って沐浴
するんだ。
すべての音と光が、これまでなかったくらい輝きだすんだぜ」
ジェイク「Oh, my!」
あながちウソでもなく、音楽素人はブレる、わたしの耳はブレる、という事実は大切にもっておきたい。
なんでもいいなら、なんでもいいでも、いいんです。
それが正直な基準値。
では、形の好みはどうでしょう。
2-3 形態・用途で選ぶ│密閉型/半開放型/開放型/ハウジング
ヘッドホンの形には、実は3タイプある、と、今回初めて知りました。
ふつうのおなじみヘッドホンが
「密閉型」(クローズド、クローズドバック)
イヤーカップ(耳を覆うところ)に、少し穴が空いているのが
「半開放型」(セミオープン、セミオープンバック)
そして同じく、たっぷり穴が空いているのが
「開放型」(オープンエアー、オープンバック)です
メ、メ、メッシュ! こんなんじゃ音漏れしてしまうじゃないか!
電車で怒られるじゃないか!
というかノイキャンしないとうるさくてしょうがないぞ!
・・と思いませんでしたか?
つまり、そういう場所で使うためじゃないヘッドホンもこの世にはある、と、今回初めて知ったしだい。
音漏れ防止よりも優先すべきことがあるヘッドホンなんですね。
開放型だと、高音が綺麗に伸び、反対に低音は少し弱まり、でもこもらず、ややスピーカーに近い音になる、とか。それと外気が通るから、長時間の作業でも疲れにくいそう。ゆえに音楽制作では、各パートの調整をする「ミキシング」や、アルバム全体の最終調整である「マスタリング」で使われたりするそうです。(さすがにレコーディングではマイクに音漏れが)
もちろんご家庭でひとりの部屋で使うもよし。
密閉型は音漏れしづらく、低音がよく出る、
半開放型は、両方の特性をもったタイプ、という感じのようです。
形態は、あきらかに使い道が変わってきますので、まず絞り込めるところかも。
なお、この「イヤーカップの外側部分」のことを、
「ハウジング」(housing)
と呼びます。家。
よく出るワードです。お耳が暮らすハウジング、と覚えましょう。
2-4 イヤホンの形態│インナーイヤー型/カナル型/耳掛け式/骨伝導/TWS
イヤホンのほうだと、耳に入れる「インナーイヤー型」(Air Podsなど)
と
インナーイヤーよりもっと奥まで入れる「カナル型」(耳栓型、イントラコンカ型。プクッとしたイヤーピースがついてる)が主なタイプ。
耳の上にひっかける「耳掛け型」は固定しやすいタイプ。
耳掛けしたうえでのカナル型としてSHUREの製品なども有名。
骨伝導型もありますしね。
いろいろです。。。
ついでに、耳の形ではないですが「TWS」(True Wireless Stereo)。
これはワイヤレスイヤホンのうちでも左右がケーブルで繋がってないやつ。
「完全ワイヤレスイヤホン」とも呼びます。
だからエアポッズは「インナーイヤー型TWS」という分類になるわけですな。。。
イヤホンの形状はとくに、付け心地に好き嫌いが出ると思います。率直に選びましょう。
2-5 そもそもヘッドホンで満足か│ピュアオ-ディオ/Hi-Fi
またコブクロ動画ですが、この企画しょっぱなの黒田さんの発言を見てみましょう。
「音は空気の振動」というのはもちろん(みなさんも)知っていますが、
イヤホン・ヘッドホンって、音が~空気を伝わって~耳に入る、という過程をギューンと縮めている。
オーディオの本気勢からしたら妥協の産物と、いえないことも、ないのかも。なるほどなあ。
このへんは、開放型ヘッドホンという空気を取り込む形を初めて知ったのとあいまって、目からウロコなのでした。
なお上記引用のような
オーディオシステムを組み、スピーカーからの音を追求していく方面は「ピュアオーディオ」と呼び、また原音に忠実であるという意味の「Hi-Fi」(ハイファイ)という、長きにわたって理想として使われているワードもあります。
ハイファイは、果てなき道と、見つけたり。
ピュアオーディオの対義語は、音楽と利便性の合いの子であるポータブルオーディオ界隈「ポタオデ」なのかもしれません。
ハイファイやポタオデについてはまた今度触れますが、
ピュアオーディオじゃなくても、「いい」ヘッドホンを、見つけたいんだよ。
まさかの、開放(オープンエアー)型ヘッドホンという選択肢もあらわれた今回。
さらに、そもそもなヘッドホン否定までとびだしてしまいました。
「いやふつう「ヘッドホン欲しい」って外で聴きたいんだろ!
音漏れしない密閉型でいいんだよ!」
というまともな声は、おじさんに届くのでしょうか・・・。
次回
「ヘッドホンの中で爆音でインピーがダンスしてるから聴こえねえよ」
につづく。
本日のとりこぼし
・「フィールド・レコーディング」
・「ハイレゾ」
・「ダイナミックレンジ」
・「ノイキャン」
・「Hi-Fi」(ハイファイ)
・「ポタオデ」