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2024 Season -Albirex Niigata-
こんにちは。
濵田祐太郎です。
今回は新潟について書きます。
クラブ規模は決して大きくないにもかかわらず、ルヴァンカップで準優勝を成し遂げたチームです。さらに、チームのスタイルも確立しています。
このような競技面の魅力もあり、2024シーズンの平均観客数は2万人を超えるという、地方クラブでは考えられないような数字を出しています。
その新潟がどのようなサッカーをしているのか見ていきます。
●基本情報
J1順位 16位
10勝 12分 16敗 勝点42
44得点 59失点 得失点-15
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●Attack
◯小島の技術と度胸
新潟の自陣深くでの配置は4-4-2である。
SBはCBのサポートをするため高さは取らない。WGは相手SBをロックする。そしてFWはライン間で受けるために2人とも顔を出すことがある。
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新潟の狙いは内ルートである。GKとCBからVOが楔を受け、全体で前進していく。
ルヴァンカップ決勝ではGKからの楔のパスを相手FWにカットされて失点したにもかかわらず、その後もショートパス主体で前進を試みていたことが強く印象に残っている。それほどまでに、ショートパスによって前進していく意志があるのだ。
自陣深くでの組み立てのキーマンはGK小島選手である。
まずアプローチにくる選手を把握する。そして生まれるスペースまたはフリーマンを認知する。FWがアプローチに来ると、プレスの矢印を折る方向へパスを出す。
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WGがアプローチに来ると、その頭越しのパスを選択肢にもつ。
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小島選手から直接フリーマンを利用できないと、VO経由でフリーのCBへ渡す。これをミラーという。
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ミラーにはポイントが3つある。1つ目は小島選手が相手をギリギリまで引きつけることだ。この引きつけが甘いと、VOからCBへのパスに相手が反応できてしまう。
2つ目はVOが顔を出すタイミングである。GKが引きつけ切ったタイミングで顔を出す。最初からギャップにいると捕まってしまうからだ。もちろん、相手がVOを捕まえに来ないなら最初から顔を出し、ボールを受けるとターンをする。
3つ目はつける足だ。小島選手はVOの相手から遠い方の足につけなければならない。
このような手順で1stプレスを攻略する。分析するのは簡単だが、少しでも触られたら失点するゴール前で行うことを考えると自分の技術に対する自信、それを超えた度胸が必要になる。
◯WGの抜け出し
このように書くと、目線が1stプレスにしか行かなくなる。しかし、あくまで優先は相手ゴールに近い選択肢である。したがって、いつでも背後へ蹴ることができる持ち方をする。
VOがCBやGKのサポートをすることで相手VOが前重心になると、ライン間に2FWが降りてくる。そこにGKやCBから楔のパスが入る。もちろん、VOがターンできればVOからの楔もある。
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この楔が入ると攻撃のスイッチが入る。VOやSBが一気にスピードを上げて駆け上がることで、前進しても多くの選択肢をボールホルダーに与えることができるのだ。
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ライン間でFWが前を向いた時の選択肢は2つ。1つ目は相手CBの背中である。WGはライン間に対応せざるを得なくなった相手CBの背中へ走り出す。特に、LWG小見選手はCBの背中に生まれるスペースに敏感に反応できる。
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2つ目はWGのスピード勝負である。特に、RWGのスピード勝負を選択することが多い。なぜならRWGには松田選手や太田選手など、スピードのあるドリブルを得意とする選手が起用されることが多いからだ。
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そして、GKまたはCBが持っている段階で、ライン間のFWに相手CBが食いつくと1発で背後を取る。CBのライン間の食いつきに両WGは感度よく反応して抜け出すのだ。
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◯組み立ての起点SB
このように新潟は内ルートを常に狙う。しかし、外ルートを使わないといけない場面もある。
その際は、SBが受けることになるが、SBにはサポートが遠いことが多い。なぜなら、2VOはGKとCBのサポートをし、WGは相手CBの背後を狙うために高い位置を取っているからだ。
したがって、SBは味方のサポートの時間を作る必要がある。新潟のSBはアプローチを受けながらでも正対してトラップをする。川﨑の分析でも書いたが、正対することで守備の勢いを少し弱めることができるのだ。
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サポートが来れば選択肢が増えてパスコースを模索できる。
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しかしサポートが間に合わない時、SBは個の力で打開しなければならない。WGへのパスとインドライブの2択を持って前進を図るが、それでもダメなら自分にできるだけ引きつけてCBへリターンする。
通常ならリターンはCBの次のプレーが難しくなる。しかし新潟の場合、SBが自分に相手を引きつけることで、CBが受けた時には時間がある。さらに、SBがサポートするための時間を作ったことで、CBが受けた時には味方のポジションが整っているのだ。
このようにSBが新潟の組み立ての起点と言える。もっとも守備のスイッチの入るポジションでこのようなプレーを実行するためには、SBにも度胸が必要である。
◯宮本のアクセント
Middle ThirdではCBの間または脇にVOが降りて3+1を形成することが多い。それに連動してWGは内側に入り、SBが高い位置を取る。
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狙いはやはり内ルートである。外CBはボールを受けると積極的にドライブをする。ドライブはスピードが肝心である。スピードを上げすぎると、次のプレーが難しくなる。一方、遅すぎるとプレスバックを受けてしまう。どこにでもパスを出せるギリギリのスピードを保つ必要があるのだ。
このドライブにより、外CBと前線の距離が縮まる。それによって外CBはPocketにいる内側WGへの楔を模索することができる。
Pocketを使えなかった場合VOを利用する。受けた選手が宮本選手だと、新潟にアクセントが加わる。
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宮本選手は正確なロングフィードが特徴である。ショートパス主体の戦い方の中で、正確な展開をすることで流れを変化させることができる。WGが内側に入ることで相手SBに2v1を作りやすい配置であることで、この展開がより生きるのだ。
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内ルートを選択できなければ、外ルートの選択となる。SBは相手SBと相手WGの両方からプレスがかからないような位置で受ける。
SBが受けると、内側WGがCSブレイクをする。相手がついてこなければ選択をする。対応されても、CSブレイクに反応してラインが下がる。そこでFWがライン間に顔を出すことでSBに選択肢を作るのだ。
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◯ゴラッソ
これらの組み立てで背後を取ることができれば、抜け出した選手にはスピードがあるため、個人で仕留め切ることができる。
特に谷口選手は脅威である。力強いシュートを四隅に飛ばすことができる。そしてそれをどの位置からでも狙う。鳥栖との開幕戦のロングシュートは忘れられない。
ゴール前でもFWのライン間(DZone)が起点になる。DZの2FWに楔が入ると、内側WGが前向きでサポートをする。そして逆WGは2列目からCBの背後へ抜け出すことで決定機を作る。
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また、VOもゴール前へ飛び出す。特に宮本選手はダイナミックな動きが得意である。後期磐田戦での宮本選手の飛び出しからの得点は芸術的なものである。
◯マイナスクロス
まずDZにボールを集めるが、中央突破できなければサイドへの配球からクロスとなる。新潟には高さ勝負を得意としている選手が少ない。したがって、低弾道の速いクロスを上げることが多い。
特に、マイナスへのクロスだ。理由はDZで人数をかけて関わる分、マイナスに人数が貯まることが多いからだ。ボールサイドの内側WGはニアに入ることもあるが、残りはマイナスで合わせる準備をする。
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クロスが流れても、逆SBが飛び込んでくることで決定機を演出できる。特に早川選手はクロスからの合わせることで相手に脅威を与える。
●Defense
◯1VOの脇
新潟のPressingの配置は4-4-2である。
2CBに対して、2FWがアプローチをする。
WGは相手SBへのアプローチが基本になる。したがって相手CBへのジャンプは少ない。
さらに、SBも相手SBへジャンプする必要がないため、相手WGとの駆け引きに専念する。
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外Pocketを使われてもSBはジャンプをしない。それはCBによって対応が異なる。
LCBデン選手は積極的に左外Pocketに出ていく。一方、RCBマイケル選手は外Poketには出ず、VOがスライドして対応する。
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したがって、デン選手のサイドの外Pocketを利用して引き出し、その背後をつくことができれば効果的である。
3CBに対しては、FWが縦関係となり、WGが外CBへジャンプをする。そしてSBはWBを管理する。VOはライン間を管理しながら、CSブレイクについていく。
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いずれにしても、VOを管理するのは1人である。したがって、2VOの2人でCBからの楔を受ける準備をしたい。
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仮にVOが捕まえにくると、ライン間にスペースが生まれる。そのスペースを使う人や使い方を準備すると効果的である。
ただ、シーズン終盤はPressingの頻度が減り、Middle Thirdでの守備の時間が増えた。その際は4-4-2で構える。2FWがサイドに誘導し、圧縮して奪うというオーソドックスなやり方をしている。
◯Cross対策
クロッサーに対して、SBは距離をとって対応する。したがって、クロッサーには時間があることが多い。
そしてSBはリアクションで対応する。クロスを上げる瞬間に大きく足をあげたり、スライディングをしたりすることで足に当てようとする。したがって、股下や切り返しが有効になる。
マークのつき方は以下の通りだ。
デン選手は先にスペースに戻って前向きでマークを確認する。マークを決めると受け渡しはしない。したがって、捕まった選手は背中へ誘導し、2人目が交差で前に入ると合わせやすい。
マイケル選手は前に入らせないように距離をとってマークにつく。そしてクロスを上げる瞬間にボールに体を向けることで超えるボールが来ると反応が遅れ、背中で合わせられることが多い。
稲村選手は先にスペースに戻って前向きで対応する。したがって、マイナスにスペースが見える。さらに、クロスを上げる瞬間、ボールに意識が集中するので、超えるボールへの反応が遅れ背中で合わせられることが多い。
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以上が新潟のざっくりとした分析である。
新潟はこのスタイルの一貫性が魅力である。
ルヴァンカップの決勝というタイトルがかかった試合で、かつ5万人を超える観客の前で、ゴール前からショートパス主体で前進するスタイルを貫き通すことがすごい。
さらに、そのスタイルで結果を出している。どのような練習をしているのか学びたい。
新潟のスタイルを築いた松橋監督は退任し、樹森監督が就任した。監督交代によってどのような変化が起こるのか楽しみである。