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2024 Season -Kashima Antlers-
こんにちは。
濵田祐太郎です。
今回は鹿島の分析を書きます。
ここ2-3年で何度も監督が交代している激動のチームです。
サガン鳥栖では降格争いの苦しみを味わいましたが、鹿島では優勝しなければならないという責任との戦いがあり、別の苦しみがあるのだと思います。
その鹿島が2024シーズンどのようなサッカーをしていたのかを見ていきたいと思います。
●基本情報
J1順位 5位
勝数18 分数11 敗数9 勝点65
60得点 41失点 得失点+19
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●Attack
◯Counter
鹿島の選手は個の能力がとても高い。当然、スペースが広大なカウンター時に相手に脅威を与える。構造としては以下の通りだ。
奪った瞬間、両WGがタッチラインを踏むほど目一杯開く。これにより中央にスペースを作る。相手がWGを無視して中央を管理し続けると両WGがドフリーでボールを受けられる構造となっている。
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◯ボス鈴木優磨
配置は4-4-2。
自陣深くでのビルドアップはSBが低い位置を取る。
FWは横並びから1枚がライン間に顔をだす。特に鈴木選手がフリーマンとして左Pocketで受ける意識が強い。そして鹿島の選手は必ず鈴木選手を見る。鈴木選手が自由にプレーするために他が動くほどだ。
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Middle ThirdでのビルドアップはSBが高い位置を取り、WGが内側に入ることが多い。ただ、鈴木選手のスペースを潰さないように背後へのアクションを常に行う。
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◯サイドで2v1
鹿島の鉄板の形は逆SBに2v1を作ることだ。
WGへ対角の配球をし、SBが駆け上がることで2v1の状況を作る。
そのため、SBにはスピードがあり、攻撃センスに長けた選手を起用する。
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まずは左サイドについて。
GK早川選手からLWGへ配球することが多い。
LWGの特徴は以下の通りである。
チャブリッチ選手はスピードとパワーがあり個で突破できる。背後へのアクションのタイミングもうまく、フリーで抜け出すことができる。
藤井選手もスピードがある選手だ。J1で最速の35.4 km/hを叩き出している。背後へのアクションも速いが、ドリブルスピードも速く、厄介な選手である。
仲間選手は周りと関係を構築することに長けている。背後へのアクションを見せながらライン間で受けることが多い。
樋口選手も周りと関係を作りながらゴールに迫る。鳥栖にもいた選手で、戦術理解がはやい選手である。監督の意図を汲み取ったり、守備構造の穴を察知する能力に長けている選手だ。
LSBは安西選手が最も出場機会を得ていた。
安西選手はWGがドリブル体制に入るとオーバーラップとインナーラップを繰り出しWGに選択肢を与える。ボールを受ければ得意のカットインで守備組織の内側に入っていく。カットインできなくても顔を上げて必ず鈴木選手を探す。鈴木選手にしかパスを出さないくらいホットラインができている。
次は右サイド。
LCB関川選手から対角の配球が多い。
RWGには師岡選手が出場機会を得ていた。師岡選手はドリブルが得意な選手である。右利きではあるが左足で仕掛けることができる。緩急だけでなく足技で自分のリズムに持ち込むことができる。また、当たり負けをしない。多少不利な体制でぶつかられても前進し続ける力を持っている。
RSBは濃野選手である。大卒ルーキーでありながらベストイレブンに入る偉業を成し遂げた選手だ。高校まで前線の選手で大津高校では10番をつける選手だった。それほど攻撃センスに溢れた選手である。駆け上がるタイミング、スピード、強烈なミドルシュート、高い打点のヘディングと相手PA付近で決定的な仕事ができる特別な選手である。
彼とは2023年の総理大臣杯でも対戦している。当時タレント集団だった関西学院大学をSBのポジションから叫び続けて統率していたことを覚えている。SBの域を超えた攻撃センスだけではなく、強烈なリーダーシップも兼ね備えた選手である。
◯柴崎スタイル
対角の配球を対応されると、ボール周辺に時間ができる。そうなれば柴崎選手の出番である。
CBをサポートする位置まで降りて3+1を形成する。柴崎選手が受ければベストなタイミングでベストな質のパスが供給される。
特に多い形は大外にいるWGがCB背後へのアクションへの配球である。
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まずそのパスを見せつつ、ライン間への楔をつけたり鈴木選手に渡したりすることで鹿島の攻撃のリズムを作っている。
◯Finish
Finishの局面でも鹿島のスタイルは変わらない。
まずはサイド2v1を作る。
WGがシュートまで行けず時間をかけていると、SBが必ず追い越す。あえて低めの位置から追い越すことでマークをつきにくくしている。
そしてクロスは全て鈴木選手をターゲットにする。
鈴木選手はファーへの回り込みとマイナスでの合わせる準備の2つのパターンが多い。
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クロッサーは鈴木選手がどちらに動くのかを必ず確認する。
中の選手は鈴木選手がフリーになるために1人は必ず潰れる。鈴木選手がファーに回れば折り返しの準備をし、マイナスに留まればファーで流れるボールの準備をする。
鈴木選手がサイドに流れて中にいないと、チャブリッチ選手や濃野選手がターゲットになる。他の選手は身長が高いわけではないので低弾道クロスを上げることが多い。
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●Defense
◯Pressing
鹿島は4-4-2からPressingをかける。
FWは縦関係となり、WGが相手CBへジャンプすることが多い。
SBは相手WGにロックされる傾向がある。
外Pocketの対応はVOがスライドをして行う。
CBは関川選手も植田選手も対人や空中戦に強い。それを生かしてライン間へ積極的に出ていく。
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攻撃に特徴がある選手が多いが、全員献身的にPressingをかける。
鈴木選手は守備でも駆け引きをすることができる。試合の中で下手な方のCBに持たせるように位置取る。そこから背中で内ルートを隠しながらアプローチをかける。
また、僕が驚いたのは柴崎選手だ。対戦するまで守備は得意ではないと思っていた。しかし、守備範囲広く走ることができるし、球際は強い。その隣には2024シーズンのデュエル王である知念選手がいる。
このように攻撃だけでなく、守備でも迫力を持って相手に襲いかかるのだ。
◯Middle
Middle Thirdでも4-4-2で守る。
FWは内ルートを使わせないように背中で隠しながらアプローチのタイミングを伺う。
WGは相手SBを管理しつつCBに対して牽制をかける。
SBは相手WGを管理する。
VOはスライドはしつつも、相手VOをマンツー気味で管理する。そしてCSブレイクにはそのままついていく。
CBはライン間への感度が非常に高い。楔が入れば必ず反応するのだ。
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これらを攻略する盤上での手順は以下の通り。
まずCBが鹿島WGを倒しにいく。SBへ切るパスとVOへの楔の2択を持つ。
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VOを利用した場合、SBへのミラーとターンからPocketの2択がある。
Pocketを利用できれば、鹿島CBが食いついてくることを頭に入れておけば、1stタッチでなんでもできる。
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また、鹿島両VOがVOにマンツー気味で対応することでホールが見える。3択目のパスコースである。ホールに付けられれば3人目が前向きで関わって逆へ持っていきたい。
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SBが受けるとCSブレイクと横つくの2択になる。
CSブレイクには必ずVOが対応してくる。スピード勝負で勝てそうなら選択する。
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ピッタリつかれていてもVOが守っていたスペースにぽっかりスペースができる。そこに寄ってあげると前進が可能となる。
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CSブレイク後に重要なことはStandByである。一度は使われなくても、すぐにオフサイドにかからない位置に戻り、横ついた選手からのパスを要求する。ついていった相手VOはボールを確認するためStandByがフリーになりやすい。
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◯Cross対応
関川選手も植田選手も守る能力が非常に高い。
「鹿島のCBは格で守る」という、大岩剛監督が言っているCBの理想像を体現しているCBだと思う。
彼らには以下の手順で攻略する。
彼らはライン間への感度が非常に高い。まずはPocketに楔を打ち、CBを引き出す。素早く大外へ展開してCBが戻る前に射抜く。まずはクロス対応の準備をされる前に仕留めたい。
次に個人の特徴についてだ。
植田選手はマークを視野に入れる。少し距離を置いて完全に前に走らせて勝負する。植田選手はゴール前での競り合いで負けているシーンがほぼない。少なくとも鳥栖と対戦するまでは見たことがない。したがって植田選手につかれた選手は潰れて、2人目が背中のスペースで合わせるしかない。
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関川選手は自分のマークを決めた後はマークの受け渡しをしない。マークに捕まった選手はマイナスで留まり、逆WGが関川選手の背中に入り込むと合わせることができる。広島の荒木選手と同じような対応である。この際のポイントは植田選手のストーンを超えることだ。
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これらの特徴を攻略したいが、クロスを上げられないこともある。そうなった時のNZへのアクションである。NZにはVOがついてくる。VOがついていくとD Zoneが見える。特に、鹿島のDFラインはカットインした時ラインが上がらない。余計にDZにスペースが見えるのだ。後期鹿島戦の3点目はまさにこの形である。
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以上が鹿島の分析となります。
鹿島は伝統あるクラブです。
カシマスタジアムで築かれた歴史も素晴らしいものばかりです。
そして滅法ホームに強い。
2024シーズンはホーム無敗で終了しました。
後半に鹿島があの赤い壁に向かって攻めるのは脅威でしかありません。
鳥栖が対戦した時はコイントスで陣地を取ろうと話すほどでした(実際は選択権を取れず)。
前期に鳥栖のホームで対戦した時とはまるで別チームのような勢いでした。
今年は鬼木監督となります。
どのようなサッカーをするのか非常に楽しみです。