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2024 Season -Sanfrecce Hiroshima-

こんにちは。

濵田祐太郎です。

今回は広島について書きます。

新スタジアムのピッチは最高でした。

なんといってもスタジアムの音響が良かったです。

音楽や実況が臨場感を高め、さらに応援の声も響くように感じました。

あのスタジアムにスタッフとして入ることができたのは誇りに思います。



●基本情報

J1:2位
19勝 11分 8敗 勝点68
72得点 43失点 得失点+29


最終節のスタメン


7/24 鳥栖vs広島でのスタメン


●Attack

◯配置

 広島は3-4-3で組み立てる。目立った可変はない。強いてあげるなら2VOの片方がライン間に入り、3+1で組み立てることだ。前期柏戦で3+1で組み立てていたがあまりうまくいっているようには見えなかった。その後は3+2に落ちつき、流れの中で3+1を選択している試合が多かった。

 広島の3-4-3はWBの高さが特徴である。J Leagueではミシャ監督の影響で両WBを最終ラインと駆け引きさせるチームが多い。しかし、広島のWBは低めに設定し、外CBからのパスを受けやすくしていることが多い。

WBは低い位置

◯狙い

 基本的な狙いは外ルートだ。
 まず外CBから配球について。外CBからWBの背後への配球がある。これはWBが低い位置から駆け上がっていくためマークをつくことが難しい。

外CBからの配球



 次はWBからの配球について。WBからShadowへCSブレイクとCFへのナイフパスがある。CSブレイクとは相手のCBとSBの間を通過するアクションのことを指す。CBが対応するのか、VOが対応するのか迷わせることができるアクションである。

WBからCSブレイク


CSブレイクを対応された時、相手守備の内側にパスコースが見える。守備ブロックに切れ込みを入れるようなパスなのでナイフパスと呼んでいる。


WBからナイフパス

このようにWBは少なくとも2つの選択肢を持っている。3-4-3の王道と言える攻撃パターンでゴールに迫るのだ。

 これらが警戒されると、内ルートが見えてくる。

 外CBの佐々木選手や塩谷選手は最後まで内側を選べる持ち方をする。そして2VO、2Shadowには個で剥がせる力を持つ選手が何人もいる。

川辺選手、松本選手、満田選手、中島選手、加藤選手、アルスラン選手、マルコス選手。さらに、川村選手や大橋選手も途中までいた。

彼らは全員違いを作れる選手で、1人で状況を打破することができる。外ルートをケアし彼らのマークが緩めば広島の思い通りのサッカーになってしまうのだ。

 特に、VOからの対角を狙う。幅をとっているWBを有効活用する形だ。もちろん3CBからの対角への配球もあるが、VOからの配球が特に多い。

 対角のボールに最初に反応するのがCFとShadow。この2人で競って抜けだすことができればシンプルに決定機を作れる。

 2人で完結できなくてもWBへそらす。相手の逆SBまたは逆WBと競ることで必ず大外のWBはフリーになる構造だ。


◯ゴールへの猛襲

 広島はシュート数、クロス数ともにJ1で1番多い。得点数もJ1で最多であることから、広島のスタイルが結果に結びついていることがわかる。


まずはシュート。


全員が強烈なミドルシュートを打つことができる。

 開幕戦の大橋選手の1得点目はまさに広島と言える得点である。満田選手が対角へ配球。2ndボールを拾った川村選手のロングとも言えるミドルシュート。そのこぼれを大橋選手がすぐさま詰める。

 前期のサガン鳥栖戦では外CBで出場していた塩谷選手がPA付近からミドルシュートを放ち得点を奪った。

 このように誰もが強烈ミドルシュートを打てる。しかもどこからでもいいコースに飛んでいく。1番難しいゴール前の崩しをせずとも得点する可能性を持っているのだ。


次はクロスについて。


 特徴はゴール前に入る人数がとにかく多いことだ。CF+2 Shadow+逆WBの4枚は必ず入る。加えて、VOはこぼれ球の準備としてPA周辺に位置取る。これによりゴール付近に6枚はいることがわかる。

 クロスは新井選手、東選手が多く上げている。


まずWBがクロスを上げるスペースがあればバンバン上げていく。
1本目には交差で入ることが多い。
CFが中央またはファーで合わせるために膨らみ、逆Shadowがニアに突っ込む。


開幕戦で大橋選手が決めた2点目はまさにこの形である。

 この1本目のクロスで合えば良いが、仮に合わなくてもゴール付近には6枚以上の人数がいる。こぼれ球にいち早く反応して押し込む。クロスが流れると中は必ず動き直して速いクロスに対応する準備をする。2本目以降のクロスは低弾道の速いクロスを多用する。


 このように二次攻撃三次攻撃とゴールを猛襲し得点の可能性を限りなく高めるのだ。


●Defense

◯Man to Man

 J1ではいくつかMantoでのPressingを採用しているチームがある。そのうちの1つが広島である。

 広島のMantoの特徴は3-4-3から人を捕まえることだ。したがって攻撃側の配置によっては捕まえることが難しい試合がある。

 その場合、広島は試合中のコミュニケーションを中心に改善する。もちろん、スタッフからの指示もあるだろうが、それだけに頼るのではなく選手たちの判断で攻撃の配置に適応していくのだ。

 この姿勢は近年の過剰なまでに情報提示が行われるサッカーから離れている。にもかかわらず、チームをまとめ上げるスキッぺ監督のマネジメントは卓越していることがわかる。


 3CB相手にはCFと2ShadowがアプローチをかけるミラーゲームとなりMantoMan Pressingを成立させやすい。

 対応が必要なのは2CBの相手に対してである。基本的にはCFが相手VOを管理して、2Shadowが相手CBへジャンプすることで対応する。WBはShadowに連動して相手SBを捕まえることでMantoManが成立する。

◯5バック攻略

 5バックには黄金のSolutionがある。

 それは4-4-2からWGまたはSBを内側に入れた4-2-2-2での攻撃である。

 柏がこの形で攻撃をするが、特に前期の柏vs広島は柏が終始主導権を握っていた(それでも勝てる広島がすごい、、)。

ポイント1
2FWで相手3CBのうち中央CBを挟む。


ポイント2
内側のWGまたはSBはライン間で顔をだす。




ポイント3
相手外CBがライン間に食いつけば2FWが背後へのアクション。


食いつかなければライン間への楔を差し込む。

基本的には以上の手順だ。

より細かく言えば、SBが内側に入った時、広島のようなMantoでの守備だとWBがそのままついてくる可能性がある。そうすれば張っているWGがフリーになる。

さらに、WGもSBも大外で張るSolutionもある。
利点としてはWBを迷わせることができる。


WBが出てこなければSBがフリー。

WBがSBを捕まえればWGがフリーになる。

外CBがWGを捕まえればFWがフリーになる。



ただ条件が2つある。VOがマークを受けながらも捌ける選手である必要がある。または、配球役となるCBがプレスを受けながらでも頭越しのパスをピンポイントで出せる選手である必要がある。

◯クロス対応

 Pressingと同じく、クロス対応もMantoManで対応する。3枚ゴール前にいる上に全員能力が高い。非常に厄介である。

 まずはMantoManの特徴を整理する。
Mantoの利点は責任がはっきりすることで相手の自由を奪うことである。

 弱点としては、責任がはっきりしているからこそ相手にコントロールされやすいことだ。

 したがって単純に考えると交差で入ることでマークが外れる。クロス対応だけMantoのチームには交差することで2人目がフリーで飛び込めるからだ。

 しかし広島は全員にマークがついている。交差をしてもマークが付かれ続けているのだ。

 そこで大切なのはBigActionである。

 複数人で大きく動く。逆WGがニアに入り、ボールサイドWGがファーに回るほどの大きなアクションでクロスに合わせにいくのだ。



 後期神戸戦の大迫選手の得点はまさにBigActionからの得点である。


 ここからは個別の対応についてみる。

 佐々木選手は非常にいいクロス対応をする。背中を取らせないような立ち位置でマークを捕まえる。そこからクリアしにいくが、仮にさわれなくてもターゲットに体を当ててバランスを崩させる。

 塩谷選手は経験値による洗練された守り方をする。先にクロスが上がりそうなスペースを埋める。利き足やボール状況から判断して立ち位置を決めるのだ。そこから首を振って誰が入ってくるか常に確認する。最後ボールに出ていく。

 荒木選手は競合いが非常に強い。ただ、自分のマークに固執し、時間があっても受け渡しをしない。荒木選手に捕まったターゲットはマイナス気味に留まり、逆WGが荒木選手の背中を通過してニアに入っていくとBigActionによる決定機を作ることができる。

◯D Zone攻略

 このようにまずはクロスでチャンスを作りたい。

実際、広島はクロスを上げられる数に対するクロスをヒットされる割合はJ1で1番多い。上げることができればチャンスを作りやすいのだ。

 しかしクロスを上げるタイミングを失うこともある。そうなった時、Near Zoneを攻略したい。

 だが広島は3CBであるためNear Zoneを取ることは難しい。なぜなら外CBが簡単に対応できるからだ。したがって、NZ攻略ではアクションを起こしてゴール前の人数を減らすことはできるが、NZが直接決定機創出とはならない。

 ここで重要なのがD Zoneの攻略である。

 D Zoneとは以下のスペースだ。


 広島は押し込まれた時、VOが最終ラインに吸収されることが多い。したがってDZが見えやすい。

 まずはクロスでチャンスを作る。警戒したVOが戻ってきてDZが見える。という順番になる。

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 以上がざっくりとした広島の分析です。

 広島は2024J1最優秀監督に選出されたスキッぺ監督の元、1人1人が思い切ってプレーしています。この環境を作り出せることがスキッぺ監督が最優秀監督になった理由の一つです。

 また、夏以降に獲得した選手も大当たりしています。フロントを含めたマネジメントが外から見る限り現在の広島を支えているものだと考えています。

 2025年はどのような戦い方になり、どのような選手が活躍していくのかが楽しみなチームです。

 次回はJ1を席巻した町田ゼルビアです。

 2025年も旋風を巻き起こす注目のチームなのでぜひ読んでください。


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