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2024 Season -Kyoto Sanga FC-

こんにちは。

濵田祐太郎です。

今回は京都について書きます。

シーズン中盤まで降格争いをしていましたが、エリアス選手を獲得して以降調子が上がり、早々に降格争いから脱出しました。

その京都はどのような戦い方をしていたのか見ていきます。


●基本情報

J1順位 14位
12勝 11分 15敗 勝点47
43得点 55失点 得失点-12

最終節スタメン


10/19 京都vs鳥栖

●Attack

◯エリアスかそれ以外か

 京都の攻撃で脅威なのはカウンターである。パターンは2つある。1つ目はカウンターのカウンターである。

 奪われた瞬間、前線3枚の戻りが遅い。したがって京都は7枚で守ることになるが、その7枚はとても守備の意識が高い。そこで奪い返してのカウンターは前残り3枚が起点になる。

 特にトゥーリオ選手のスピードが怖い。奪った瞬間にトゥーリオ選手は背後へのアクションをする。そして背後で1本目の配球を受ける。相手もカウンターで前重心になっているため背後がとても効いてくる。

 その際、エリアス選手は戻りが遅く、オフサイドポジションにいることが多い。したがって奪った瞬間にゴール前に駆け上がり、トゥーリオ選手の次のパスまたはクロスに入る動きをする。

 2つ目のパターンは自陣深くからのカウンターである。自陣深くでは、4-5-1で守る。WGは大外の対応をするため戻っていることが多い。前にはエリアス選手だけ残っている。

 奪うと、できるだけ早くエリアス選手につける。適当にライン間に放り込み、エリアス選手に回収させることもあるほどだ。

 エリアス選手が収めている間に低い位置からWGが駆け上がる。

 この抜け出しが上手いのが原選手である。オフサイドにかからないようにDFラインを舐めて背後へ抜け出す。それをスピードを緩めずに行うことができる。後期セレッソ戦での得点はまさにこの形である。

◯ソンユンのロングフィード

 GKソンユン選手の攻撃での特徴は飛びすぎるロングフィードである。ゴールキックで敵陣の半分くらいまで飛ばすことができる。このようなソンユン選手のロングフィードを活かした京都の組み立ては以下の通りである。

 まずはゴールキック。一般的なチームのゴールキックはサイドに蹴ることが多いが、京都はゴールキックで中央に蹴ることが多い。理由は2つ。

 1つ目はソンユン選手のキックが飛ぶことで、弾かれても決定機を作られる可能性が低いことだ。

 2つ目は原選手の競り合いが強いことだ。原選手の身長は191cmと非常に高い。かつ、サイドから動きながら落下点に入ってくるため、DFも競りにくい。仮に落下点に他の選手が入っていてもその選手は飛ばない。相手をブロックして原選手が飛び込んでくるのを待つのだ。

 原選手の狙いはそらしである。そこにエリアス選手とトゥーリオ選手が背後へ抜け出す。

 原選手がそらせなくても、3MFは2ndへの反応が早い。ボールが頭を超えた瞬間に原選手の下に前向きで準備する。これを拾ったら1タッチで背後のエリアス選手とトゥーリオ選手に配球する。

 サイドに蹴った場合は以下の通りである。

 まず原選手がいるサイドへ蹴る。原選手はSBと競ることになるが、その場合ほぼ競り勝つ。

 狙いは中央への折り返し。折り返しのボールをエリアス選手がワンタッチでトゥーリオ選手の抜け出しに配球する。または、3MFがワンタッチでエリアス選手かトゥーリオ選手に配球する。

 これがゴールキックの狙いである。低い位置でのFKも同じような狙いを持ってポジションを取る。

◯やっぱり背後

 次にインプレーについてだ。4-3-3の配置から3FWが内側に入り、両SBが高い位置をとる。結果、2-3-5の配置に見える。そして狙いはソンユン選手とCBからのロングフィードである。

 ターゲットは中央に密集した3FWである。先ほどと同じように、誰かがそらして残り2枚が背後へ抜ける。そらせないと、3MFが2ndを回収してできるだけ早く背後へ配球する。

 サイドに流れるとWGまたはSBが競る。WGがそらしてSBが抜け出したり、どちらかが中央へ折り返して背後へ抜け出したりする。

 このようなロングが蹴られた瞬間、抜け出しが効果的ではないと考えた場合、両SBはCBの横に戻りながら2ndの準備をする。

◯それでも背後

 これらのようにまずは3FWを起点に背後を取りに行く。攻めきれずに、Middle Thirdまで前進するとCBが配球役となる。この高さでも背後からの選択となる。

 この場合、背後のスペースは広くはない。だから相手DFラインに隙を作るためにとにかく動き出す。まずは中央集結した3FW。

 ボールが出ないと、オフサイドにかからない位置に戻る。次は、その動きと入れ替わりで3MFが背後へのアクションをする。この繰り返しが行われる。

 CBから平戸選手が受けると、顔を上げた瞬間にトゥーリオ選手が走り出す。さらに、トゥーリオ選手のアクションに反応して福田選手も背後へ抜け出す。

 このように、平戸選手から右サイドの背後という形は決定機を作る形である。

 そして、2ndボールである。もちろん、全ての配球が背後に通るわけがない。それを理解している京都は、蹴られた瞬間の2ndの準備が非常に速い。2ndを拾うと、背後のスペースがなくても、DFが思いもよらぬタイミングで浮き玉のパスを配球してくる。

 抜け出すと必ずゴールを見る。エリアス選手、トゥーリオ選手、豊川選手と強力なミドルシュートを打てるFWが揃っている。シュートまでのタイミングも非常に早く、GKは一瞬の隙も見せてはいけない。

◯Cross

 クロスの形は左右で若干異なる。

 まずは右サイド。トゥーリオ選手が内側で福田選手が追い越すことが多い。中は、トゥーリオ選手がニアに入り、エリアス選手がCBの背中で合わせる。そこに福田選手のちょいんでストーンを超えてエリアス選手へ配球するのだ。

 次に左サイドである。WGが大外を張っていることが多い。エリアス選手はCBの背中を取り、IHのどちらかがニアに潰れる形となる。

 また、原選手はドリブルからシュートを得意としている。ドリブルからシュートまでの歩幅が同じであるためタイミングを測ることが難しい。

●Defense

◯No1の迫力

 京都はJ1で最も強度の高いPressingをする。配置は4-3-3。全員に2度追い、3度追いの意識が浸透している。えげつないプレス強度である。

相手陣地でパスを繋がれる本数


 前線3枚がDFラインとGKを管理する。WGはSBとCBの2人にプレスをかけ、CFはVOを隠しながらGKへプレスをかけることが多い。

 中盤3枚はまずは相手MFにマンツーでつく。相手が2VOならそのまま2IHをマークを当てるが、相手が1ANKの場合、どちらかのIHが捕まえる。

 そしてWGがCBへジャンプした後、SBを捕まえにスライドする。残りの2枚もスライドをしてマークをずらす。

 CSブレイクには残りの2枚で対応をする。

 SBは大外とPocketを管理しながら、相手SBヘパスが出ると思いっきりジャンプをする。特に福田選手のアプローチの速さと強さはJ1屈指である。

◯打開策

 構造的に見れば、京都のようなPressingにも攻撃の道筋は見える。しかし実際にプレーすると、Pressingの強度に圧倒される。構造的な弱点にパスをつけても、それを上回る強度でプレスをかけてくる。

 こうなるとまずは背後を狙うしかない。そのためにCBの特徴の把握が必要である。

 宮本選手はスピードがあるが、背が170cmと高くはない。さらに元々SBの選手であるため、CBの役割をこなし切ることが難しい。一方、鈴木選手はスピードがある方ではない。これらの特徴は、打開策として利用することができる。

 彼らのラインコントロールの特徴として、宮本選手は足元へのパスを狙うため前重心となることが多い。一方、鈴木選手はスピード勝負を気にして、後ろ重心になる。したがって、段差ができやすい。

 攻撃側のFWやWGはこの段差を利用して背後を狙うことで、Pressingを回避しつつ決定機を作りやすくする。実際、前期の鳥栖はマルセロ選手が彼らと競りながら背後に抜け出して決定機を作り続けた。

 また、鈴木選手はボールウォッチャーになる傾向がある。特に、左の大外にボールがある時、ボールに気を取られることで背中にスペースができることが多い。

 このように、強度の高いPressingと真っ向勝負はせず、背後のスペースを利用しながら攻略することが大切になる。

◯2VOの関わり

 その上で一応攻撃の手順も書く。まず、2CBは3FWのギャップに立つ。

 ポイントはVOである。3FWのギャップに顔を出すのだが、できるだけ寄ってパスの距離を短くする。京都のIHはついてくるが、それでも出せるくらいの距離に近づく。受けたあとはすぐ渡して、IHが食いついてできたライン間を利用するために動く。

 1VOでも可能だが、2VOだとより前進しやすい。なぜならVOが抜けると逆VOが横につくことで選択肢を増やすことができるからだ。横ついた後に再びライン間に抜けたVOを覗くこともできる。

 このようにしてVOを中心にボールを引き出すことで、京都全体を前重心にする。そして、ライン間へ楔を打つことができれば一気にスペースが広がるのだ。

◯Cross対応

 京都のクロス対応はMantoManである。CBのみがMantoで対応するため、交差で2列目が飛び込むとフリーで合わせやすい。

 宮本選手は先ほど書いたように高さがない。したがって、FW vs 宮本選手の競り合いで勝利したい。ただ、宮本選手は高さで勝てなくても最後まで体をぶつけてバランスを崩そうとする。

 鈴木選手がボールサイドの時、Stoneになる意識が強い。したがって、先に射抜かれない位置に戻ってスペースが見えにくいようにする。だが、弊害としてマイナスへのクロスに反応が遅れる。

 ボールと逆サイドの時、鈴木選手はターゲットに徹底してMantoでつく。ターゲットがゴール前を離れてもどこまでもついていく。したがって、交差で2人目がそのスペースへ飛び込めば合わせやすくなる。

 また、ANKの金子選手もCross対応でゴール前に戻ってマークにつく。金子選手はボールを見ないほど完全に相手に体を向けて徹底的にMantoで対応する。クロスが上がると、体をぶつけて自由に飛ばせない。

◯NearZone対応

 Crossを上げるのに時間がかかった場合、NearZoneの攻略が有効になる。

 NZにはIHが対応する。

 ANKがCross対応のためにゴール前に吸収されるため、DZが見える構造となる。実際、京都はDZからミドルで決定機を作られていることが多い。

 また、さらに時間をかけるとWGが大外に戻ってくる。その場合、SBがNZを対応する。ただ、WGは守備が得意ではないため、簡単に突破することができる。

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以上が京都のざっくりとした分析となります。

京都はJ1で唯一4-3-3でPressingするチームです。

先ほども書きましたが、4-3-3での守備は強烈な強度が求められます。

それを体現させているチームが京都です。勇気が湧いてくるようなスタイルを貫いています。

このラディカルなスタイルを2025シーズンも見られるのか楽しみです。

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