竹の子掘り
〜春のばあちゃん〜
〈今日のエレベータートーク〉
本日エレベーターでご一緒したのは、ゴミ袋を乗せた台車を押すマダム。「今日はムシムシ暑いですねー」と言うと、やはりなぜか尋ねてもいない竹の子の話になる。「竹の子茹でたのよお、皮ばっかり」なるほど大きめのゴミ袋の1つはほぼ竹の子の皮で占められている。「中身はこんだけえ」と両手で小さな輪っかを作って見せてくれた。
【春のばあちゃん】
①竹の子
春には、いつも竹の子掘りに行っていた。普段もの静かなばあちゃんが、竹の子掘りの時にはなんとなく活き活きハツラツとしているようだった。
ばあちゃんは、籠を持ちクワを担いで山道をどんどん登って行くので、遅れないように急いでついて行く。途中イノシシが食い荒らした跡をみつけると、「またイノシシがっ」と珍しくやや強い口調になっていた。
目的地に着いて竹の子を探す。ほんのちょっと薄ら土が盛り上がった場所を見つけるのだ。もう「竹の子ですよ」と言って土から出てしまっていると固くて駄目なのである。
良い感じの盛り上がりを探し当てると、そっと周りを掘っていく。ゆっくり少しずつ深く掘っていって、根っこが見えたらばあちゃんがクワでぐわしっとやる。
山奥の空気はスンとしてしっとりしていて不思議空間だった。
②つくし
ばあちゃんは、春が好きだったのかは分からない。あまり話をしなかった。でも、つくしを大量に採ってきて新聞紙の上に座り込んでは、ひたすら袴を取っていた。そしてそれを卵とじにする。ばあちゃんの料理で覚えているのは、つくしの卵とじとほうれん草の卵とじ。つくしはほんのり苦味があって、美味しいのかどうかはよく分からなかった。
家の中にじっとしているよりも、ばあちゃんは畑仕事をしたり庭の草取りをするほうが好きだったのかもしれない。そういえば、新聞紙を広げた上でえんどう豆の筋を取るなど、いつもそういったことをしていた風景が思い浮かぶ。
③おわりに
子どもの時に食べた竹の子は、ゴリゴリで固い印象が強くて今でもちょっと苦手。でも、たまに食べるときにはいつも山に行ったことを思い出す。あんまり好きじゃないんだよなあと思いながら竹の子を食べている。
何かしらの形で誰かに小さなhappyをお届けできたら嬉しいな〜そしてそれが広がっていけばさらにhappyですねえ