今日の日めくり歎異抄の言葉8
煩悩だらけの
あなたを
助けたい
罪悪深重・煩悩熾盛の衆生をたすけんがための願にまします。
(『歎異抄』第一条)
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「自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、曠劫よりこのかたつねに没しつねに流転して、出離の縁あることなしと信ず」
(教行信証 信の巻 註釈版聖典218頁)
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罪悪深重(ざいあくじんじゅう)
・・深く重い罪悪
罪悪→罪(つみ)
罪は苦しみの結果をもたらす行いのことで、道理(みちのことわり)に反する行為。
罪業(ざいごう)ともいい、悪なる行為であるから罪悪という。
→十悪・五逆
十悪(じゅうあく)
①殺生(せっしょう:生きものを殺す)
②偸盗(ちゅうとう:ぬすみ)
③邪婬(じゃいん:よこしまな性の交わり)
④妄語(もうご:うそいつわり)
⑤両舌(りょうぜつ:人を仲たがいさせる言葉)
⑥悪口(あっく:ののしりの言葉。あらあらしい言葉)
⑦綺語(きご:まことのないかざった言葉)
⑧貪欲(とんよく:むさぼり・我欲)
⑨瞋恚(しんに:いかり)
⑩愚痴(ぐち:おろかさ・真理に対する無知)
五逆→五逆罪(ごきゃくざい)
①父を殺すこと
②母を殺すこと
③阿羅漢(あらかん:尊敬されるべき人、聖者)を殺すこと
④仏の身体を傷つけ出血させること
⑤僧の集まりの和を乱し仲たがいさせること(意趣)
煩悩熾盛(ぼんのうしじょう)
煩悩・・「煩は身をわずらはす、悩はこころをなやますといふ」(『唯信鈔文意』註釈版聖典708頁)
熾盛・・火が盛んに燃えること
熾[音]シ(呉)(漢)[訓]さかん おこる おこす おき
①さかん。勢いがはげしい。「熾烈」
②おき。おきび。燃えて赤くなった炭火。「熾火」(おきび)
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一番弱いものに
法然聖人は『選択集(せんじゃくしゅう)』本願章に、阿弥陀仏が易行の念仏を選び取られたありさまをのべて、万人をへだてなく救おうとおぼしめす平等の大悲は、自力の難行から見放された愚悪な庶民大衆に焦点をあわせつつ選択せられたといわれています。智者も愚者も、強者も弱者も、富者も貧者も、すべてを平等に救うためには、智者よりも愚者に、強者よりも弱者に焦点をあわせて救いの法が選び取らなければならないというのです。
たしかに若くて健脚なものと、年老いて足の不自由なものを、わけへだてなく同時に大阪から東京へつれていこうと思えば、足の弱い老人を標準にして道を選ばねばなりません。もちろんそれはめいめいの脚力にたよる道ではあってはなりません。そこで列車に乗せてつれていくことにすれば、足の強弱にかかわりなく、平等に目的地につくことができましょう。
ちょうどそのように阿弥陀仏の大悲は、社会的にも、個人的にも、精神的にも、肉体的にも、一番弱い立場におかれて苦しみ悩んでいるものに救いの焦点を定め、だれでもが、いつでも、どこでもいただいて歩める仏道として他力念仏の一行を選び取り、万人平等の救いを実現していかれたわけです。そのことを「そのゆゑは、罪悪深重・煩悩熾盛の衆生をたすけんがための願にまします」といわれたのでした。
聖典セミナー『歎異抄』梯 實圓師
「本願のこころ」52頁より