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記憶の味を彷彿。「スタンドましか」のトリュフのタヤリン

トリュフのパスタが好きだ。

いろんなお店で食べたけれど、忘れられないのがはるか昔、会社員だったころ、近くにあった小さいお店で出会った一皿。

もう何十年前の話になるが、イタリア出身、元トラサルディの専属モデルだったというオーナーがマンマの味を提供していたお店だ。

そのお店のトリュフのパスタは、トリュフが細かく刻んで入れてあるクリームソースを絡めたもの。

とにかくトリュフの風味が全体にいきわたっていたので、食べ終わるまでトリュフの香りに包まれているようで、一度ですっかりとりこになってしまった。

以来そのお店に行くと必ず頼んでいたし、週1回は必ず通っていたほど気に入っていた。

けれどもお店はなくなり、自分で作ろうにもなかなか難しく。ほかのお店でトリュフのパスタを頼んでも満足いくものはなかった。

その後イタリアのローマのスパゲッテリアで同じような感動を味わったトリュフのパスタに出会ったのだが、2回目に行ってみるとその味は変わっていた。

以来トリュフパスタロスになっていたのだが、とうとう巡り合えたのだ。私の舌を震わすトリュフのパスタに。

それはGWの関西へのドライブ旅のとある日。

予約のとりにくい中華料理店の餃子専門店を目指して大阪梅田の「阪神バル横丁」にいったときのこと。

餃子専門店にはあまり待たずに入れたものの、次から次へと人が来るので、ゆっくり腰を落ち着くことができず、飲み直しのために選んだお店が隣にあった「スタンドましか」だった。

何気なく入り、お店のことを調べてみると、何でもそこのトリュフのタヤリンが有名らしい。

せっかくならオーダーしてみようと、ナチュラルワインを傾けながら待っていると、出てきたのはただただ真っ黒に見えた一皿だった。

「トリュフのタヤリンあさりバタークリームソース」が正式名称のこれ。削られたトリュフが一面にかかっているのはわかるが、どんなもんかとまったく期待せずに口に運んでみる。

「!!!!」

瞬間、ぶわーっと懐かしい味の記憶が頭に、舌に、流れ込む。

トリュフパスタとして求めていたものがここにあった。

濃厚なクリームに鮮烈なあさりの出汁、そして薫り高いトリュフ。さらには細麺タヤリンのバランスの良さ。

懐かしいだけではない、この数十年で変わってきているであろう今の自分の舌にも満足と感動を与えてくれたのだ。

ましかのホームページには「一度味わってしまうと忘れられなくなるパスタです」との記述が。

その文言の通り、記憶の味に上書きされ、自分にとっても忘れられなくなるパスタになった。

大阪=トリュフパスタの公式が頭の中にインプットされた今回の旅。自分にとって大収穫の旅となったのだった。




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