最悪の増資:MSワラント【用語】
【行使価格修正条項付新株予約権】
通称、最悪の増資"MSワラント"について
備忘録としてまとめておきます。
増資って?
そもそも増資とは何なのでしょうか。
これは、一言でいうと企業が資本金を増やすことです。
用途の一例として、
・新しいプロジェクトの始動
・取り組んでいる事業の拡充
・借入金の返済
・株主還元
などが挙げられます。
方法には「有償増資」と「無償増資」がありますが、今回は株価に直結する「有償増資」をメインに説明していきましょう。
増資のメリット
・返済不要の資金を調達できる
・株主が増えることで株主の偏りが少なくなる
・財政基盤を強化できる
・事業拡大や事業の多角化が可能になる
増資は借金ではないので、返済期限や資金用途の制限がありません。
事実上、会社の資金が単純に増加することになるのです。
会社も成長するためには投資が必要ですが、その資金の調達として用いられることが多いですね。
増資のデメリット
・税負担が増加する可能性がある
・諸手続きの費用がかかる
・余剰金の配当が分配しにくくなる
・株価の下落圧力になる
見てのとおり増資によるデメリットもあります。
企業の成長痛、と捉えることもできますが、短期的には投資家にとってマイナス材料なことが多いですね。
特に最後の株価の下落圧力が投資家にとっては一番の懸念材料でしょう。
今回のMSワラントが最悪の増資と謳われている背景には、この株価下落圧力が関係しています。
最悪の増資:MSワラントの正体・・・
少し内容が難しいので、イラストで見ていきましょう。
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A社の株価は今2000円です。急遽資金が必要になったため、増資を決定!
通常の新株発行の流れとMSワラントの違いを見ていきましょう。
通常の新株予約権
MSワラント
MSワラントは証券会社にとっても有利に株式を購入する機会となり、
A社もより確実に資金調達ができる、WIN:WINな増資に見えませんか?
では悪魔の増資って・・・?
MSワラント成立後は証券会社がすぐに株式を売却に出します。
すでにディスカウント価格で購入できている株式なので、すぐに手放しても差額分がそのまま利益になるからです。
これに嫌気を指した投資家はさらに株式を売却・・・
と売りが売りを呼び、大暴落につながりかねません。
まさに個人投資家からしたら『悪魔の増資』なわけですね。
MSワラントによる成功例
事例としては少ないですが、MSワラント発行後に株価が回復した成功事例として以下の二つの企業が挙げられます。
・SHIFT(3697)
2019/2/28にMSワラントを発行しました。
約2年間の行使期間を経て、株価は4,435円→13,330円に上昇。
その後も上昇を続けて2021/9には29,000円に達しました。
成功の要因は既存株主への配慮として交付株式数を固定化し、行使コントロール権限を持たせたことが挙げられます。
これにより株式の希薄化を抑制しながら資金調達を実現できたと思われます。
・三井E&S(7003)
2022/3/31にMSワラントを発行しました。
株価は約1年低迷したのち、2023/3頃に回復を見せます。
MSワラント自体には嫌気がさされたものの、そのごの好調な業績と予想の上方修正。アメリカの大統領令も後押しし、MSワラントが許された事例として挙がっています。
このように企業努力や情勢により、一部MSワラントが許されるケースもあるようですが、一般的には株価下落に通ずる傾向が強く、成功例は少数です。
特に赤字続きの企業が行うMSワラントは苦し紛れの最終手段の場合が多いので、投資先として検討するのは危険でしょう。
いかがだったでしょうか。
意外と説明するとなると難しいMSワラントについて、少しでもご理解が深まったようでしたら幸いです。
私もなんとなく自分の中に落とし込みができました。
MSワラントを発表した企業のその後の動向に注目です。