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「かなり酷似している」

 関東でお年寄り世帯を狙った押し込み強盗が頻発している。闇バイトで“リクルート”された人物が実行役という共通点があり、警察庁は8月以降の東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県での少なくとも7件について関与を疑っているらしい。

 きのうは船橋市でも高齢夫婦宅に強盗が押し入って900万円を奪う事件が発生した。誰もが「もしかしてこれも一連の事件と同じもの?」と考えるのは当然だ。けさのあるテレビ番組に出てきた元警察官の「専門家」は「(きのうの船橋市の事件も)かなり酷似しているなというのが実感です」と話していた。

 ん?「かなり酷似」というこの日本語にはちょっと違和感があるぞ。

 「酷似」という単語は「似ている」を「酷く」が修飾しているもの。そこにさらに「かなり」という副詞を重ねると「かなり酷く」になってしまい、どうにもクドいのではないか。シンプルに「かなり似ている」でいいではないか。

 思うに。

 これが書く文章であればじっくり考えながら言葉を紡ぎだし、さらにあとから推敲もできる。これに対してテレビのインタビューでは口先だけで対応することになるし、しかも「専門家の立場からもっともらしいことを言わないと」と意識している。するとつい固い漢語が出てくるのではないか。

 無意識に重々しくしようと考えてかえってヘンな日本語になってしまう。ちょっと避けたい事態なのである。
(24/10/10)

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