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Photo by
kazushinakamura
「担当者」の死去を発表するという英断
「着ぐるみ」あるいは「ゆるキャラ」ではその“世界観”をぶち壊すことはご法度。「中の人などいない」というのがタテマエになっている。そういえば数年前に美智子皇后さま(当時)がくまモンにあいさつされた際に「何人の方が入っていらっしゃるの?」と尋ねられて一同が困惑した、という話を聞いたように記憶している。
ヤクルト球団が球団マスコット・つば九郎の「担当者」が死去したことを発表した。公式では「つば九郎を支えてきた社員スタッフ」となっている。近くは中山美穂など「えっ!」と絶句させられる訃報もあったが、これはかなりの衝撃だった。
「中の人などいない」というお約束をギリギリ守りながらこのように発表をしたのは、球団の英断だと思う。
ベイスターズファンの私でも神宮に行けばいつもつば九郎の姿を探している。なんといっても挙動がコミカル。そして、2000試合出場を達成した際にその秘訣を聞かれて咄嗟に「かんぞうと あしこしのつよさ」と書くなど、フリップ芸の切れ味も忘れられない。
あの味わいはまさに「余人をもって代えがたし」。球団は「(つば九郎の)今後の活動については、しばらくの間休止となることをお知らせいたします。」と発表したが、さて、後を継ぐことができる人は存在するのだろうか。
つながりが深いサンケイスポーツは第一報を1面で伝えたばかりでなく今日の紙面でも見開きで関連記事を展開していた。「『つば九郎思い出写真館』あすから掲載」という予告も出している。それも結構だが、追悼特集本も出していただけないだろうか。プロ野球興行の歴史に大きな足跡を残したキャラクターにはその価値があると思うのだ。
(25/2/21)