見出し画像

映像タイムカプセル

 NHKのBSプレミアムチャンネルは実に良質な番組が揃っている。ハードディスクレコーダーで24時間録画しておいて、前日のラインナップを毎朝ざっくりチェックする。

 お気に入りのひとつが「よみがえる新日本紀行」だ。昭和に取材・放映された「新日本紀行」は、何十年も前の街並み、人々の顔つき、その土地ならではの風習などがとても興味深い。

 それだけではない。

 番組の後半ではその回に取り上げた場所を再訪して現在のようすを取材する。産業や街が激変していたり、あるいはあまり変化がなかったり。

 そこでは、昔の放送に映っていた人物がふたたび登場することもあり、紅いほっぺをしていた少年がすっかりおっさんになっていたりする。その変貌ぶりと、その人のそれまでの歩みのあれこれを想像するのが面白い。

 30年ほど前に仕事で扱ったトピックスネタにこんなものがあった。

 ある国で(イギリスだったかな)、旧石器時代の洞窟に住んでいた人類のDNAを採取した。古くからその近くに住んでいる一族のDNAと照合したところ、祖先であることが判明したというのだ。「人類って、ちっとも動かないんだなあ」とビックリした。

 しかし、冷静になってみるとそれほど奇異なことでもない。

 自分の親は2人だが、その上の世代は4人で、さらにその上は8人。これを単純に積み上げると20代遡れば209万人になる。1世代を30年と計算すれば600年、室町幕府全盛期の200万人が先祖筋になるわけだ。これが旧石器時代ならほとんどはご先祖サマになってしまうのではないか。

 NHKに戻る。

 不定期で放映される番組に「あの日、偶然そこにいて」がある。古いNHKの映像に映っている人物を探しあてて現在のようすを紹介するもので、「よみがえる新日本紀行」と同じ感慨がある。

 先日は、山一證券破綻の当日に取材を受けていた山一の新入社員、竹の子族のリーダー、ジュリアナ東京で“ジュリ扇”をヒラつかせていた女性たちのその後が放送された。「短いようで長い人生、いろいろあるなあ」と思わせてくれるのだ。

 写真や映像は、過去からのタイムカプセルだ。明治以降の日本人なら幼少期の写真が残っているだろう。映像についても、自分の場合は成人してからのものしかないが、息子たちは生まれた直後の映像が残っているはずだ。

 映像で自分の来し方を振り返ることは、息子たちにとって、その先にある歩みへの応援歌になるのかもしれない。古いVTRもちゃんと整理しておなくちゃ、である。
(22/8/13)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?