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ネーミングのインフレ

 ボーッとテレビを見ていると、見慣れたCMに違和感を感じることがある。

 ビタミン剤「キューピーコーワゴールドαプレミアム」という名前が変だ。

 ゴールドで、アルファで、プレミアムなのか。増築に増築を繰り返して結果的にラビリンス化してしまった温泉宿でもあるまいし。次はどうする?

 商品のサイトを見ると、現行シリーズのいちばん下は「キューピーコーワゴールドA」だが、この「ゴールド」「A」もあとから追記されたのではないだろうか。知らんけど。

 
 作曲家・團伊玖磨のエッセイシリーズ「パイプのけむり」は、単行本のタイトルで似たようなことが起きていた。「続パイプのけむり」「続々パイプのけむり」あたりまでは普通に進んでいたようだが、シリーズ後半は「重ね重ねパイプのけむり」「なおかつパイプのけむり」「またしてパイプのけむり」「さてパイプのけむり」「さてさてパイプのけむり」など。こうした言葉あそびも、かつては「お洒落なエスプリ」と持て囃されたのかもしれないが、いま見ると単にアホらしいだけだ。

 こうした“インフレ状態”について、どこかのネット記事が「『リングにかけろ』ネーミング地獄」と呼んでいたように記憶する。「週刊少年ジャンプ」連載の車田正美「リングにかけろ」である。荒唐無稽な必殺技を次々にくり出すことだけで盛り上がりを作っていたバカバカしさをよく表現していたと思う。
(22/10/3)

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